今作は、知られざる交番勤務にスポットを当てたという点に加え、通常の警察ドラマに”日常”を掛け合わせた部分も新しい。それは、今作の脚本を務めた根本ノンジ氏の功績も大きいだろう。
警察ドラマでありながら、犯人捜しの捜査や推理に主軸を置いておらず、交番勤務の日常と主人公の成長をメインに描く。主人公たちが暮らす女子寮ではガールズトークに花を咲かせるし、先の特捜に招集される場面でも、捜査会議に参加した後は通常の交番勤務に戻るなど、日常の描写に大きなこだわりを感じる。その丁寧な描き方こそが根本脚本の真骨頂だ。
根本氏は、シリーズ化もされた『監察医 朝顔』(フジテレビ)の脚本を担当した人物。『朝顔』は、死因から事件の真相に迫る推理部分に加え、死者や遺族たちの人間ドラマ、そして主人公家族の日常をじっくり描いた作品で、ドラマチックな展開と何気ない日常のバランスが絶妙だった。今作とテイストは全く違うのだが、主軸の中に日常をさりげなく丁寧に挿入させるという点で、根本氏の実力がいかんなく発揮されたと言える。
原作漫画では交番の日常を1話完結で短く描いているパターンが多いが、ドラマ版では、1つのメインストーリーに、原作のエピソードを巧みに織り交ぜ、日常描写とドラマチックなメインエピソードを分断させることなく、またその日常描写の段積みで平坦にならず、抑揚あるドラマになる工夫が施されている。これは、根本氏が『朝顔』を経たからこそ成せる筆致なのだろう。
■恋に落ちるエピソードがどう絡むのか
ほかにも、ベタベタし過ぎず、後輩警察官を温かく見守る戸田演じる藤の存在や、単純な対立構造にならず、互いに認め合いながらもライバルとして存在する三浦翔平、山田裕貴、西野七瀬らが演じる刑事課の面々、ふざけているようで実は包容力があり、いつものアドリブなのか分からない演技も楽しいムロツヨシの存在など、このドラマにおける魅力的な要素はまだまだ語り足りない。
2週にわたる「特別編」を挟んで、いよいよ今夜から再開される第5話では、川合の似顔絵捜査官としての成長がさらに発展し、また川合と藤が合コンへ参加し、川合が恋に落ちる……というエピソードが展開される。
この部分もまた、主人公の恋なんて……と、一見メインエピソードとうまく絡んでいくのか心配になってしまいそうだが、『ハコヅメ』に関しては全く不安がない。これまでの巧みなエピソードの数々を見てきており、2人の主人公の成長物語を、些細な日常と共にどのように昇華していくのか、その楽しみしかないからだ。