「傍証」とは、何かを間接的に証明する証拠のことです。法廷などで用いられる比較的固い言葉のため、突然「傍証」と言われても意味が分からないという人が多いでしょう。

本記事では「傍証」の正しい意味や例文、類語、英語表現などをご紹介します。難しい言葉もこの機会にしっかり覚えて、ものにしましょう。

  • 傍証の意味について解説

    傍証の意味や使い方をまとめてご紹介します

傍証の意味とは

「傍証」の意味について、まず見ていきましょう。

「傍証」はある状況を示す間接的な証拠のこと

傍証の「傍」は訓読みで「かたわら、そば、わき」となり、意味もその通りです。「証(あかし)」は「ある事柄が本当に確かだというよりどころを明らかにする」という意味です。

つまり「傍証」とは間接的な証拠のことで、「ある事柄を証明するときに、事実を補強するのに役立つこと」という意味があります。

裁判などで使われる法律用語

傍証は、ある事柄を証明する際に直接の証拠とはならないが、積み上げることでその事柄を証明するのに役立つ、というものです。

例えば裁判などで証拠集めをしている際に、「事件現場に容疑者A氏の指紋があった」という状況証拠があるとします。これから「A氏は事件現場にいた」と推測でき、「A氏が犯人だとは断定できないが、犯人の可能性がある」という仮説が成り立ちます。

この場合、事件現場に残されていた指紋も傍証のひとつ。「単体ではその事実を証明できないが、いくつも積み上げることで真実だと確認できるもの」を指します。

史実を確認する際にも使う

史実として残る事柄について、それが事実であるかどうかを検証する作業も、傍証の積み重ねと言えるでしょう。真実だと言い伝えられてきたことでも、記録や痕跡をさまざまな角度から分析して情報を組み合わせていけば、新事実が浮かび上がるかもしれません。

  • 傍証の意味について解説

    傍証はある事柄を証明する助けとなる証拠のことです

傍証の使い方と例文

ここからは、「傍証」という言葉の使い方と例文を紹介します。

傍証の裁判における使い方

傍証は、前述のとおり裁判で多く用いられる言葉です。

例えば有力な証拠がない事件において、容疑者が犯人にしか知り得ない事柄を話したとします。これだけでその容疑者が犯人と断定はできませんが、少なくとも容疑者の供述は真実であると裏付けることができます。傍証は有力な手掛かりとして扱われます。

○○が有罪になったのは、傍証を固めていったからだろう
所持していた名刺が、彼と面識があることの傍証だ

傍証の論文における使い方

論文を作成する場合、自分が設定した仮説を証明するのにも、傍証による裏付け作業が欠かせません。実験を重ねてデータをとったり、フィールド調査に出かけたりするのも、いわば傍証を集めるためと言えるでしょう。

A氏とB氏の師弟関係は絵のタッチが傍証している
メカニズムは解明されていない点もあるが、傍証は多数発見されている

傍証の証拠としての使い方

法律や論文など以外で、私たちが「傍証」という言葉に触れるのはどのようなシーンでしょうか。

例えば、企業風土について社員に聞き取りを行ったとします。多くの社員が「十分に人材育成ができている」「社員が自律的に行動できている」と答えたとすれば、それらが傍証となり、その企業は社員満足度の高い企業であると推察できます。

反対に「離職率が高い」「活気がない」などの回答が目立つ場合は、社員満足度が低く、魅力の乏しい企業だといえるでしょう。

今回の受賞は自由活発な企業風土の傍証だ
○氏が痩せたことは、重そうに手首から垂れ下がる腕時計から傍証できる

  • 傍証の使い方と例文

    傍証は主張を補強するのに役立ちます

傍証の類語表現

傍証という言葉への理解を深めるために、類語表現を確認していきましょう。見ていくとわかりますが、どれも「証拠」を表す裁判用語です。「証拠」にまつわる言葉を見ていきましょう。

証拠(しょうこ)

証拠とは、ある事実が真実であることを明らかにするための根拠となるものを指します。傍証も、こうした証拠のなかの1つだと言えます。

裁判官が新たな証拠として目撃者の証言を提示してきた
論より証拠なので、まずは実際の商品をご覧ください

物証(ぶっしょう)

物的証拠のことを「物証」と略して呼びます。物証とは、事件や事故に関わるものや文書などの存在や形態、状況などをひっくるめて証拠とすることです。

疑うようですが、物証がないと納得できません
はっきりとした物証があるので、彼の有罪が証明できるだろう

人証(じんしょう)

物証に対し、人的証拠を「人証」と呼びます。人証とは証人や鑑定人などによる供述などの証拠のことです。

民事訴訟において、人証は非常に有力な証拠のひとつだ
人証があいまいな場合は、客観的な証拠から記憶を呼び起こすことが重要だ

書証(しょしょう)

「書証」とは、文書に記された事柄を証拠として提出することを言います。

書証があると人証が正確に証言するのに役立つ
裁判の際は、争点と書証の関係を十分整理しておくことが重要だ

反証(はんしょう)

反証とは、ある主張や仮説が正しくないことを示す証拠のことを言います。

反証をあげた結果、それまで真実とされてきた事柄が翻った

偽証(ぎしょう)

傍証の類語とは少し異なりますが、証拠にまつわる言葉に「偽証」というものもあります。偽証とは、いつわりの証言や証明をすることで、法廷の場で故意に偽証を行った場合には、刑法に基づき罰せられます。

記憶違いや認識違いで事実と異なることを証言した場合は、偽証罪には問われない

  • 傍証の類語表現

    傍証のほか証拠にかかわる表現にはさまざまなものがあります

傍証の英語表現

英語で証拠は「evidence」です。傍証は「side evidence」「supporting evidence」「collateral evidence」などと言います。「side/supporting /collateral」はそれぞれ「脇の/補助の/付帯的な」などの意味があるため、傍証を意味する言葉だと言えるでしょう。

This fact can be used as side evidence.(この事実は傍証として有効です)
I confirmed supporting evidence.(傍証を確認しました)
The defense has finished collecting collateral evidence.(弁護側は傍証の収集を終えた)

  • 傍証の英語表現はsupporting evidence

    傍証=サイドエビデンスと理解するとわかりやすい場合があります

傍証の意味を知り必要に応じて使いこなそう

傍証とは、ある事柄が真実であることを補足的に証明する証拠を言います。直接、真実とは言い切れない場合にも、傍証を積んで固めていくことで、真実だと裏付けることにつながります。

裁判や論文など固い領域で使われることの多い言葉ですが、この機会に覚えて使いこなしてみましょう。