――大怪我を経て、奇跡的な復帰を遂げた後であっても、迫力あるハードアクションに挑み続ける藤岡さんの姿勢に、感動されたファンも多いと思います。

それはやっぱり、仮面ライダーの敵であるショッカー、ゲルショッカーを演じてくださった大野剣友会のみなさんが、体を張ったアクションをしていましたからね。僕も自分がやれることであれば、絶対にやるぞ!という心がまえで臨みました。大野剣友会メンバーは、たとえ失敗をしても「相手が悪い」なんて絶対に言わなかった。常に無言で行動し、失敗はすべて自分の責任であると頭を下げる。足を捻挫して、動けない状態になっているのに、「失敗してすみません!」と詫びていた方を何人も知っています。そういう姿には、いつも心打たれました。結局、人間にとって大事なのは「自分の心」なんですね。他人に責任転嫁するのは楽ですが、自分をごまかしているにすぎない。一度でも生死をさまよう経験をした者は、決して自分をごまかすような言葉を発することができないと思います。

――東宝映画『エスパイ』(1974年)で藤岡さんが主演された際、殺し屋役で大野剣友会の中屋敷哲也さん、新堀和男さん、中村文弥さんたちが登場し、アクションシーンを演じられたのも『仮面ライダー』での信頼関係あってこそですね。

彼らとはもう以心伝心だと思っていましたから、安心して身をゆだねられましたね。ギリギリまでアクションをやれると、固く信じていました。どんな危険なことでも、彼らならできる。まさに刎頸(ふんけい)の友。無言でも思いが通じ合える、すばらしい同志でした。

――現在もなおエネルギッシュで若々しい藤岡さんですが、そこまでの強靭な肉体はどのように維持されているのでしょうか。

実を言いますと、『仮面ライダー』のときに左脚を複雑骨折し、接合手術をしたことによって、右脚よりも左のほうが2cmほど長くなっているんです。両脚の長さを揃えるため、毎日ストレッチをやって矯正しなければならない。これをもう50年近くやっているんです。

今でも左脚には、手術で30針も縫った跡がしっかり残っています。以前、トレーニングジムの風呂に入っていたとき、隣にいらっしゃった男性が私の脚をじーっと見つめて「これがあのときの傷跡ですか!」と、感激していたことがありました。あんまり見ないでくださいよって、すごく恥ずかしかったですけどね。また、アメリカ・サンタモニカの海岸で肌を焼いたり木刀を振っていたとき、現地の若い人が私のほうへ近づいて、傷跡を示しながら「アー・ユー・ヤクザ?」と誤解して尋ねたり(笑)。肌を露出すると、どうしても傷跡が目立ってしまうんですね。

私ももう75歳になりました。昔、体を張ってアクションに挑んだ後遺症がだんだん目立ってきて、それでも一生懸命克服しながら、これからもたくさんの人たちに夢を与えたいという想いで活動していこうと思っています。辛いことですが、私にとっては当たり前のことでもあります。これをやらなければ次に向かって進めない。現状維持もできないと思ったら、どんなことでも続けられるものなんです。

――藤岡さんは『仮面ライダー大戦』(2014年)や『仮面ライダー1号』(2016年)に出演された際、若きヒーローを演じた俳優さんたちに「これからは君たちの時代だから、もっと前に出てきてほしい」と、常にエールを贈り続けていました。改めて後輩の仮面ライダーに対する思いを聞かせてください。

次の時代を作っていくのは若者ですからね。彼らが頑張ってくれないと、世界に未来はありません。自分自身がこれまでの人生で学び、経験してきたことを、若い人たちに託し、残し、ゆだねていく。あらゆるものを継承してもらいたいという思いを、絶えず持っています。私は国際ボランティアとして、世界100ヶ国くらいを旅して、戦争による混乱状態、飢餓、阿鼻叫喚の修羅場をこの目で見てきました。もしも日本が戦争に巻き込まれたら、いったいどうなってしまうのだろうか。他人事ではありません。誰しもが自分で生き抜く力や、大切な人を守る強さが必要なんだ。そんなことを、多くの人たちに広く伝えていきたい、という気持ちを強く持っています。

――藤岡さんは現実世界でも、世界の子どもたちを救うヒーローなんですね。

いやあ、私自身はヒーローと呼ばれたいとか、そんな思いで活動してきたわけではないですよ。国際ボランティアを通じて、自分が磨かれ、教えられ、気づかされた。私にとっては自己を発見する旅でもあったんです。そのときの体験が今の自分の血となり肉となり骨となっていますから、今度はそれを社会に還元したいと思っているんです。私が世界の国々を巡って受け取ったメッセージを、自分だけのものにするのではなく、社会に向けて発信したい。それが『仮面ライダー』をはじめとする数々の作品で応援してくださった方に対する、私なりの恩返しだと思います。


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