日本は「自動販売機大国」として海外からもよく知られており、飲料・食品の自販機だけでも全国に230万台以上が設置されている(2020年12月時点。日本自動販売システム機械工業会調べ)。
自販機といえば飲料を販売しているイメージが強いが、フライドポテトなどのホットスナック、アイスクリームなど、食品の自販機も根強い人気。特に最近では、人気の飲食店の味を自宅でそのまま味わえるもの、新鮮な野菜が食べられるサラダなど、「こんなものが買えるのか!?」と驚くような自販機が続々と登場している。
もともと日本人の生活にはなじみのある存在だが、ことコロナ禍において改めてその便利さに注目が集まっている。店員とやり取りをせず、いつでも好きなときに商品を選んで購入できるため、「三密を避けて買い物をしたい」「行きたい店があるが遠出は控えたい」「仕事終わりは飲食店が時短営業で開いていない」といったニーズにマッチしているのだ。東京都内を中心に設置されているグルメな自販機を紹介しよう。
製麺メーカーが手掛けるラーメン自販機「ヌードルツアーズ」
一都三県を中心に約3,000箇所のラーメン店などの飲食店の麺を製造している丸山製麺は、2021年3月から大田区の自社工場前に冷凍自販機「ヌードルツアーズ」の設置を開始。以前より同社の「業務用生麺を自宅でも食べたい」という消費者からのニーズがあり、またコロナ禍における外食産業の営業時間短縮に伴う売上低迷の解決策の一つとして、同社オリジナルの冷凍自販機を開発したという。
「ヌードルツアーズ」に参画しているラーメン店は、現在10店舗。一つの商品に生麺、スープ、具材などがセットになっており、自宅で調理をする。「麺については各ラーメン屋店主と何度も打ち合わせをし、お互いが納得いったものを開発し、導入しております」(同社取締役 丸山晃司さん)と、店の味をそのまま表現できるようこだわった。
現在は、二郎インスパイア系「らーめんバリ男」の「らーめん(特製唐花付き)」、北千住・柏の煮干し系ラーメン店「麺屋音」の「濃厚煮干しそば」など(各1000円)、常時5種類前後のラーメンや餃子をラインナップ。在庫状況などによって変わるが、月に1回程度1商品が追加されるという。評判は上々で、東京、大阪、神奈川などすでに14号店まで稼働中。年内までに50台の設置を予定しているという。
「お子様連れなどラーメン屋に入りづらい方などにも多くご利用いただいております。また飲食店の方々は、コロナの影響により店舗での売上が下がっているところが多いです。その中で、別の販路で売上が立てられるということで喜んでいただいています」(丸山さん)と、消費者にとっても飲食店にとってもメリットが生まれているようだ。
人気店のコーヒーが好きなときに買える「Blue Bottle Coffee Quick Stand」
ブルーボトルコーヒージャパンは、2020年8月からブルーボトルコーヒー専用の自販機「Blue Bottle Coffee Quick Stand(ブルーボトルコーヒークイックスタンド)」の設置を開始。現在は渋谷、二子玉川、吉祥寺など都内11カ所12台(うち1台はマンションの居住者専用エリア)が設置されている。ブルーボトルコーヒーや高品質なスペシャルティコーヒーを、場所や時間を問わず楽しんでもらうために、コロナ禍以前より設置に向けて動いていたという。
商品のラインナップは、国内の自社焙煎所で焙煎したフレッシュなコーヒー豆(200g/1620円)、コールドブリュー缶コーヒー3種「シングルオリジン」「ブライト」「ボールド」(各236ml/640円)、京都堀川三条で 60 年以上続くあんこ屋・都松庵とコラボした「ブルーボトル 羊羹」(4本入/1620円)など。特に100%オーガニックのコールドブリュー缶が人気で、非加熱製法で作られたクリアな味わいが好評だという。
缶コーヒー以外の商品は以前から同社のオンラインストアで販売していたが、「コーヒー豆を自販機で販売することで、カフェが近くにないけれど、ご自宅でコーヒーを楽しまれる方のニーズにもよりお応えできるようになりました」(同社PRマネージャー吉田恵さん)とのこと。今後もカフェの出店と並行して、駐車場などの空きスペース、商業施設やオフィススペースなどにも設置を検討しているそうだ。
こだわりのサラダを自販機で購入「SALAD STAND」
野菜をしっかり摂れる設置型の社食サービス「OFFICE DE YASAI (オフィスで野菜)」を展開するKOMPEITOが、2020年11月から設置を開始した自販機が「SALAD STAND(サラダスタンド)」だ。有機・無農薬野菜にこだわったサラダ専用の自販機で、現在は「バジル香るタコのマリネサラダ」「さっぱりヘルシー!魚介マリネサラダ」など全6種類の中から週替わりで2種類(すべて1026円)を販売。支払い方法は完全キャッシュレスで、クレジットカード、LINE Payに対応している。
サラダといっても、野菜のほかに肉や魚介類、ナッツ、フルーツなどを取り入れて内容量は250gとボリュームがあるため、食べごたえは十分。たんぱく質、ビタミン、食物繊維といった栄養がバランスよく摂取できる内容になっている。
野菜やフルーツを使っているとなると鮮度が気になるが、同社では社食サービスで蓄積した食品保冷配送の物流ノウハウを活かし、食材を新鮮な状態で自販機へ配送。また、「お肉などの素材を野菜と一緒にトッピングしてしまうと野菜が沈んでしまったり、劣化を早めてしまったりするため、お肉や魚介類は別添えのドレッシングとして使用する形にしています」(同社システム・デザイングループ 取締役CTO 梅津祐希さん)とのこと。食べる直前に野菜と混ぜることで、鮮度の良い状態でサラダを味わえるという。
現在は秋葉原にある会員制コワーキングスペース「DMM.make AKIBA」にのみ設置されており、会員(もしくは会員の付き添いあり)のみ利用できるが、「オフィスビルのほか、病院・駅・空港・高速道路のサービスエリア・大学・コワーキングスペースなど、人が集まるあらゆる場所に設置していきたいと考えております。まずは、今秋を目途に都内のオフィスビルへ設置予定で、準備を進めているところです」(梅津さん)と、今後は幅広いユーザーを対象に事業を拡大していきたいと意気込んでいる。
コロナ禍によりデリバリーやテイクアウトなどさまざまな飲食サービスが普及したが、その一つとして自販機の利用も今後さらに広がっていくのではないだろうか。いつでも好きな時間に、ボタン一つでこだわりのメニューがすぐに購入できるグルメ自販機。設置されているのを見かけたら、ぜひ一度試してみては。