コロナ下で注目を浴びる、ご近所旅"マイクロツーリズム"。近場であってもせっかくならいつもとは違う非日常を体験したい。東京・大手町の日本発ラグジュアリーホテル「星のや東京」を訪れた。

オフィス街にそびえる「塔の日本旅館」

  • 東京・大手町のラグジュアリーホテル「星のや東京」

星野リゾートが2016年7月、「塔の日本旅館」をコンセプトに開業した星のや東京。地下2階・地上17階のまるごと一棟で84室を展開する星のや初の都市型旅館だ。

  • 地上17階の縦の空間に日本旅館の要素が組み込まれている

  • 宿泊者のみが入れる特別な空間

オフィス街のど真ん中にそびえる、江戸小紋のモチーフでデザインされた外観。木扉の先へ足を踏み入れると、そこは白檀のやさしい香りが漂う旅館空間。玄関で靴を脱ぎ、畳に上がる。館内はほぼ畳敷きでつながっている。

  • 玄関で靴を脱ぐのも日本旅館ならではの新鮮な体験

  • 館内では江戸の文化を現代に伝える「東京・夏夜の宴」を8月末まで開催中、玄関でも特製の提灯が出迎えてくれた

江戸東京の情緒を感じられる催しが続々

同館では、宿泊者向けに年間を通してさまざまな催しを用意。たとえば、高層ビルの屋上で剣術稽古を行う「天空朝稽古」、貸切船の上で神田、日本橋、人形町の老舗の味を楽しむ「お江戸のご褒美舟あそび」、「お江戸マイスター」による旅の提案サービスなど。江戸東京の情緒を感じられる体験ができる。

訪れた日は、江戸時代に発展した文化にルーツのある老舗が日替わりで東京の魅力を発信する「お江戸・文化の祭典」が開催されていた。卓越技能者「現代の名工」・福田隆氏が代表を務める日本橋の「龍工房」による、ゆび組紐(くみひも)体験に参加した。

まずは解説を聞き、組紐の奥深い世界に触れる。組紐とは複数の糸を組み合わせて作ったひもで、着物の帯締などで知られている伝統工芸品。

  • さまざまな柄や形状がある「組紐」

龍工房は、映画『君の名は。』(2016年)のキーアイテムの再現商品、「ラグビーワールドカップ 2019」のメダルリボン、「エルメス大丸心斎橋店」の店舗ディスプレイを手がけるなど、さまざまな分野で作品を発表している。

現代では組み台を使って組むのがメインだそうだが、江戸後期前まで先人たちが行ってきたというゆび組紐を体験した。一つひとつ丁寧に指導を受けながら指を動かす。ほんの少しでも指がおぼえる感覚を味わえるのは達成感があった。

  • 初心者にもわかるよう丁寧に指導してもらった

  • 龍工房オリジナルの草木染め絹糸を使って組んでいく

  • できあがり。右が体験で組んだもの

  • ありがとうございました!

恥ずかしながら体験前は組紐が何なのかさえ知らなかったのだが、東京の伝統文化を一つ知って、新たな世界が開けた貴重な機会だった。

日本文化を満喫できる客室と天然温泉

星のや東京の気になる客室も特別に見せてもらった。客室は、定員2名の「百合」(ダブル)・「桜」(ツイン)と定員3名の「菊」の3タイプ。

  • 定員2名の「百合」(ダブル)は約50m2

  • 畳の空間に合わせた低い重心の畳ソファ

  • 外からも目を引く江戸小紋のモチーフは中から見るとこうなる

  • バスアメニティにもこだわりが

  • ジャージ素材を使用した滞在着の「キモノ」は着心地が良く簡単に着られるそう

  • ほぼ畳敷きでつながる館内。移動にもエレベーターの到着に拍子木の音が響くなど"粋"な演出が各所で見られる

  • 定員3名の「菊」は、ダイニングテーブルやウォークインクローゼットも備える

  • 約80m2で各階の奥に位置する角部屋

  • 連泊利用者におすすめという

各客室階に設けられた「お茶の間ラウンジ」は団欒の場として24時間利用できる。

  • 居間のようにくつろげる「お茶の間ラウンジ」

最上階17階には地下1,500mから湧き出る天然温泉「大手町温泉」の湯を引いた露天風呂と内風呂、同じフロアにスパもある。食事もダイニングでの夕食のコース料理「Nippon キュイジーヌ」(1名2万1,780円/サービス料込み)のほか、部屋食も豊富に用意されている。

すべてが宿泊者限定。1泊10万2,000円〜(1室あたり、サービス料込み、食事別)とお値段もハイクラスだが、東京にいながら遠くまで旅に出かけたような時間が過ごせそうだ。まだ知らない東京に出会える旅。とっておきの行き先の候補に入れてみてはいかがだろうか。