『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズの大門未知子をはじめ、かっこいい女性の役がぴったりな女優・米倉涼子。ミュージカルの世界に魅了されてから自身もその世界に挑戦し、念願のブロードウェイ進出も果たすなど、挑戦し続ける生き方もかっこいい。昨年4月に設立した個人事務所「デサフィオ」の名前は、スペイン語で「挑戦する」を意味。米倉の挑戦心が表現されている。

  • 米倉涼子 撮影:蔦野裕

2012年の『アベンジャーズ』から現在公開中の『ブラック・ウィドウ』まで、9年間にわたって吹き替えを担当した美しき最強のスパイ、ブラック・ウィドウ/ナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)も、米倉のイメージにぴったりのハマリ役に。7度目のブラック・ウィドウを演じ切った米倉に、長年演じてきた思いや理想の女性像などについてインタビュー。人とのコミュニケーションが苦手だった過去とそこからの変化、さらに、女優として心がけている「エネルギー放出」への思いも語ってくれた。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で衝撃の決断を下したブラック・ウィドウの過去と秘密を描いた『ブラック・ウィドウ』。米倉は「ブラック・ウィドウの集大成ということで心を引き締めて挑みました」と本作への強い思いを明かし、「アベンジャーズでは司令官のようなイメージでしたが、今回は子供の頃から振り返っていて、自分だって人間なんだという彼女の思いが少しでも伝われば。妹のエレーナとのやりとりや、家族でしか言えない言葉など、今までの『アベンジャーズ』にはない温かみが感じられます」と魅力を伝えた。

ブラック・ウィドウのように強い信念を感じさせる女性であり、自身も強い女性への憧れを語っていた米倉。改めて理想の女性像を尋ねると、「コロナ禍で体を壊した方もたくさんいらっしゃいますが、何が起こるかわからないこの世の中で、普通に健康でいられて物事をありのままに感じられる女性でありたい。今までもそういう思いはありましたが、それがいかに大切か、この1、2年で強く感じています」と、コロナ禍で少し変わったようだ。

日々の生活においても意識が変化。「自分のやることが大きく変わるということはありませんが、本当に何があるかわからないから、やり残しちゃダメという思いは強くなりました。やれることがあったらやる。それがすごく明確に見えてきました」と語る。

ブラック・ウィドウは子供の頃から精神的に強かった。米倉はどんな子供だったか尋ねると、「人とのやりとりが苦手でした。学生時代まではずっとそうでした。それに悩んで生きてきた感じがします」と意外な告白。誰とでもフランクに話す印象があるが、モデルから女優へと転身を果たした頃から変わったそうで、「そんなこと気にしている場合じゃないって。自分からコミュニケーションをとる勇気を持たなきゃいけないと、24、5歳くらいの時に決めたんです。それからはだいぶ楽になりました」と明かした。

自分からコミュニケーションをとると決意し、初めてドラマに出演した際に「自分から挨拶に行く」と決めたという。アメリカでミュージカルに挑戦した際にもその大切さを痛感したそうで、「いくら待っていたって誰も声なんてかけてくれないから、とりあえず自分からアクションを起こす。自分の存在をもし嫌がられていたとしたら、その人とは一緒にいなければいいわけで、とにかくアクションを起こさないことには何も交わりが起きない」とその重要性を語る。

また、「うまく友達作りができず、そんな思いを持ったことがあるからこそ、同じように悩んでいる人がいることも感じたい。そして、できればみんなで1つになりたいという思いが常にあります」と、過去の経験を生かして人に優しく寄り添う米倉。長年の悩みを克服し、今では「人のことが知りたすぎる」と人に対して興味津々のようだが、「人が何を言っているのか気になって仕方がない性格なんです。周りのことは気にしないでいられたらもっと楽だと思うのですが」という一面も打ち明けた。