会社員や公務員であれば、毎月の給与明細で「厚生年金」の欄に天引きされた金額が記載されていますよね。 給与に対しての天引き額が多く、不満に思っている人もいるのではないでしょうか? 今回は、厚生年金の保険料率や計算方法、国民年金との違いについて解説します。

  • 厚生年金保険料は高い? 厚生年金保険料率の推移

    厚生年金保険料率について解説します

厚生年金保険料は高い? 厚生年金保険料率の推移

会社からの給料明細をじっくり見たことはありますか?  会社員や公務員の場合には「厚生年金」に加入しているため、月々の給与から天引きされていることがほとんどです。

そもそも年金とは、国が運営する年金制度で、国民が老後に安定して生活できるような資金を提供することを指します。国民年金は20歳以上60歳未満の国民全員が加入する義務のある年金制度ですが、厚生年金は会社員や公務員が加入する年金制度で、国民年金に上乗せしており、所得に応じて異なります。

厚生年金保険料の計算方法や、保険料率の推移についてご紹介していきます。

一般的には定時決定という方法で決まる

国民年金保険は全国民が定額を支払っておりますが、厚生年金保険料は定額ではなく、「定時決定」という方法で決まるのが一般的です。

定時決定とは具体的にどのような方法かご紹介します。 その年の4月・5月・6月の給与額の平均額を指し、それを「標準報酬月額」と呼びます。厚生年金保険料は、「標準報酬月額」× 「保険料率」÷ 2 で求められます。 また、通常の給与以外の賞与が出た際には、賞与からも厚生年金保険料が引かれます。賞与の場合は、賞与の額から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与」といい、「標準賞与」×「保険料率」で求められます。

この厚生年金の支払いは会社と折半しているため、実際に負担するのは半分の額になります。

日本の厚生年金保険料率は「18.3%」 

厚生年金保険料の計算方法について前述しましたが、厚生年金保険料率は何% なのか気になりますよね。

2021年6月時点での厚生年金保険料率は「18.3% 」です。 2004年まで13.93% であったのに対し、それ以降1年ごとに上昇しています。 しかし、2017年に18.3%で固定されました。

以前は船員・坑内員など、一部の特殊な業種は一般の保険料より数% 上がっていましたが、18.3% に固定になってからは一般と同じ保険料率で計算されています。

  • 厚生年金保険料は高い? 厚生年金保険料率の推移

    厚生年金は国民年金に上乗せしており、所得に応じて異なります

厚生年金と国民年金の計算方法の違い

厚生年金と国民年金。同じ「年金」という言葉がありますが、どのように計算されているか知っていますか?  両方とも、基本的には支払った月の金額と期間で決まりますが、細かい計算方法は少し複雑です。

計算方法を簡単にでも知っているかどうかで、人生設計が大きく変わる場合もあります。しっかりと理解しておくようにしましょう。

会社員や公務員は、国民年金の上乗せとして厚生年金保険に加入

日本の公的な年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と「厚生年金」の2階建てとなっています。

国民年金の対象は日本に住んでいる人で、厚生年金の対象は会社員や公務員となります。

厚生年金の計算方法

厚生年金は加入期間に加えて、加入期間中の給料の平均によって受給額が変わります。具体的な計算方法は下記のとおりです。

平均標準報酬月額× 0.0075× 被保険者期間の月数(2003年3月までの期間)+ 平均標準報酬額× 0.005769× 被保険者期間の月数(2003年4月以降分)

上記のような計算方法になっているのは、2003年を境に計算方法が変わったためです。また、「平均標準報酬月額」とは、月給と賞与の平均を表しています。

国民年金の計算方法

国民年金から支給される老齢基礎年金の場合は、20歳から60歳までの40年間全て収めている人は満額の78万900円が支給されます。 保険料が免除された期間があれば、免除された額によって額が異なるため注意が必要です。

計算式は下記のとおりです。

78万1,700円× (保険料を納付した月数+全額免除された月数× 1/ 2+ 4分の1納付月数× 7/ 8+ 半額納付した月数× 3/ 4+ 4分の3納付した月数× 5/ 8)/ 480ヵ月

計算方式では、保険料を納付した月と、免除した月が入っていますが、未納期間は年金額の対象期間には入らないため、計算する際は気をつけましょう。

  • 厚生年金と国民年金の計算方法の違い

    厚生年金と国民年金の計算方法を理解しましょう

厚生年金保険料額表の例

厚生年金保険料額は標準報酬月額によって変動しますが、標準報酬月額の金額によって等級が分けられます。標準報酬月額の金額が等級の境目であると、数円の差で厚生年金の支払額も変わるため、場合によっては負担に感じることもあるでしょう。

給与は細かく管理できるわけではありませんが、特に標準報酬月額の平均となる4月〜 6月は無駄な残業をしないようにするなどすることで、多少変わるのではないでしょうか。

  • 厚生年金保険料額表の例

    厚生年金保険料額表の例

日本年金機構ホームページより引用

厚生年金の加入状況は給与明細で確認しよう

今回は、厚生年金の保険料率について解説しました。 日本の公的年金は、20歳以上60歳未満の日本在住のすべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金保険」の2階建てになっています。

厚生年金は加入期間に加えて、加入期間中の平均給料によって受給額が決まるため、自分の加入期間や平均給料がわかれば計算しやすくなります。

標準報酬月額、標準賞与額がどうやって決まるかによって厚生年金保険料のことをより理解できるようなることから、自分の年金の支払い状況については給与明細を確認してみることをおすすめします。


参考文献
日本年金機構「保険料額表(平成29年9月分~)厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険