マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、2021年後半のマーケット環境展望について解説していただきます。


世界的にみてコロナの新規感染者数は今年4月末にピークをつけて、ようやく減少傾向になってきました。まだまだ油断はできませんが、先進国を中心としたワクチンの普及により早ければ21年中にも接種率が70%を超えてコロナの収束が期待できるようになるかもしれません。

足もとでは、変異株の感染拡大により、一部の国・地域でロックダウンや行動制限の強化が実施されています。ただ、英国は当初の予定より4週間遅れて7月19日に行動制限を完全解除する見込みです。その他の国・地域でも多少の遅れや逆戻りはあっても行動制限は徐々に緩和され、やがて解除されると予想されます。

21年末までの3つのシナリオ

21年末までのマーケット環境を見通して、想定しているシナリオは以下の3つです。

◎メインシナリオ: 力強い景気回復と金融正常化の進展

コロナ・ショック後の強力な金融緩和と財政出動によって主要国は景気回復の軌道に乗っています。そして、ワクチンの普及を背景に、行動制限下で蓄積されたペントアップ・ディマンド(潜在需要、先送りされた需要)が発現し、景気回復は自律的なものへとシフトします。米国ではバイデン政権が主導するインフラ投資も景気押し上げに寄与します。

21年春に上振れしたインフレ率は、サプライチェーンの障害など一時的要因が解消しても、高止まりします。企業や家計の経済行動に高めのインフレ予想が反映されるからです。主要国の中央銀行は、一部で始まっている金融政策の正常化をさらに進めます。米FRBは21年中にテーパリング(QE=量的緩和の段階的縮小・終了)の開始を予告します(22年初に実行)。ゼロ金利の解除(=利上げ開始)はかなり先でしょうが、21年後半には22年中にゼロ金利が解除されるとの観測が高まります。

世界的な金融政策の正常化の動きは、大量に供給された流動性(≒おカネ)の縮小を意味します。そのため、株や新興国通貨などのリスク資産にとってネガティブな影響が生じる可能性があります。ただし、金融政策が正常化される背景は世界経済の順調な回復であり、そのことがリスク資産の下支えになります。

〇サブシナリオ: 景気回復のペースダウンと金融緩和の長期化

ワクチン接種は進むものの、「行動制限解除⇒感染拡大⇒行動制限再導入・・」のイタチごっこがしばらく続きます。世界的にみられた景気回復は一時の勢いを失い、主要国のインフレ率も一時的な上振れ後は中央銀行の目標(主に2%程度)の前後まで鈍化します。

金融政策の正常化にブレーキがかかり、テーパリングや利上げ開始の観測が後退します。マーケットでは金融引き締まりの観測が後退することになってリフレ取引(※)が再開されます。 (※)景気が回復してインフレ率は緩やかに高まるものの、金融政策の対応(QEの終了や利上げなど)が必要なほどの状況にはならない環境で、利益を目指す取引。株や商品、新興国通貨などが上昇しやすい。

▲サプライズシナリオ: コロナの感染再拡大でロックダウンへ逆戻り

コロナの変異株が猛威を振るい、多くの国が厳しいロックダウンや行動制限に逆戻りします。その結果、世界経済には大きな下向きの力が加わります(世界的なリセッション=景気後退の再来)。

一方で、20年春から強力な景気刺激を行ってきた金融政策や財政政策の追加的な発動余地は小さく、景気低迷が長期化します。そうした状況下では投資家はリスクを嫌うため、リスク資産は大きく下落します。

以上、3つのシナリオを提示しましたが、通常以上に不確実性が大きく、(新たな変異株が出現する可能性も含めて)コロナの状況次第ではメインシナリオとサブシナリオ、あるいはサプライズシナリオが入れ替わりうることに留意する必要があります。

21年末までの主なイベント

  • 7月23日 東京オリンピック開会式(8月8日まで)
  • 8月24日 東京パラリンピック開会式(9月5日まで)
  • 8月26-28日 ワイオミング州ジャクソンホール会合(米カンザスシティ連銀主催)
  • 9月26日 ドイツ連邦議会選挙
  • 9-10月? 日本衆議院議員選挙(10月21日に任期満了)
  • 10月1日 米2022年度開始 予算交渉決着は?(年末近くまで続く可能性も)