リクルートマネジメントソリューションズは、コロナ禍で入社したデジタルネイティブ世代の特徴についての分析などを解説する「2021年 新入社員意識調査」を発表した。
新入社員たちの「理想の職場や上司像」「仕事観やキャリア観」の特徴について明らかにし、その概要や育成のコツを解説する内容となっている。
本稿では、HRD統括部HRDサービス開発部トレーニング開発グループの桑原正義氏、尾崎優香氏による発表内容を紹介したい。
新人は「何を」不安に感じているか
2021年度の新入社員は、いわゆるデジタルネイティブ世代。さらに、コロナ禍によりオンライン授業やWEBでの採用面接などにも柔軟に対応してきた。そのため、テレワークなどに適応している一方で、対面の機会が少ないために仕事観や世代間ギャップなどのコミュニケーションの食い違いに気付きにくいという恐れもある。
そんな新入社員の特徴を分析し、職場でどのように受け入れるべきかを考察していくために、今回の調査は実施されている。
彼らの突出した特徴としては、まず「仕事と私生活のバランス」に不安を抱えている傾向がうかがえる。「仕事・職場生活をするうえでの不安」については、11年連続で「仕事についていけるか」がトップとなっており、今回調査では65.7%と過去最高の数値となった。
また、「私生活とのバランスがとれるか」も、36.7%と過去最高となっており、昨年からも7.5ポイント増加している。
これは、コロナ禍により、すでにオンライン環境にはなじんでいる一方で、リモートワークなどが仕事とプライベートの境界が曖昧になりがちになっていることがその理由ではないだろうか。
そして、昨年調査では緊急事態宣言下で入社式をオンライン実施にしたり、在宅勤務になったりしたことで、職場や同僚との接点が限られたことで「先輩・同僚とうまくやっていけるか」についての不安が大きく伸びていた。
しかしながら今年の調査では、平年並みに落ち着いており、ニューノーマルに対応した各社の取り組みが新入社員の不安と取り除くことができたのではないかと推察される。
「働くうえで大切にしたいこと」では、「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が51.5%と過去最高でトップ。一方で「元気にいきいきと働き続けること」は、25.4%で過去最低となった。
「身に付けたい力」については、「コミュニケーション力」が60.8%でトップ。これは調査開始以来、不動のトップとなっている。また「PCスキル」も18.1%で過去最高の数値をマークした一方で、「語学力」は10年前と比較して7.9ポイント下がった13.1%となっている。
理想の職場や上司については、昨今の多様性を尊重する傾向が調査からも読み取れた。
近年の傾向として、「個を尊重」して「助け合う」職場が求められている。「お互いに助け合う」が68.4%でトップ。これは調査開始以来トップをキープしているが、10年前と比較しても16.5ポイントと大きく増加している。
また、「お互いに個性を尊重する」も10年前と比較し、16.9ポイント増加し44.9%と過去最高の値となり、傾向が強まっていることが分かる。
「上司に期待すること」としては、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が上位となった。
また、仕事で重視することについては「貢献」「成長」「やりがい」の選択率が高くなる傾向があった。SDGsへの取り組みやコロナ禍による価値観の変化から、金銭や地位の充足よりも、自分自身がどうありたいのかという方向に意識が向いていると考えられる。
そして、「定年まで現在の会社にこだわらない」という新入社員が半数以上となっており、就職活動やキャリア教育を通して働き始める前からキャリアについて考えていたことで、将来への期待や不安がこの数値に表れている可能性がある。
Z世代の新人が得意なこと、苦手なこと
このような傾向がある中、OJTの難度も高まっていると考えられる。新入社員たちの得意なこととして「協働」(36.0%)「相手基準」(33.2%)が高い傾向にあるが、コロナ禍でリモートワークなどコミュニケーション機会が減少している昨今、その個性を生かしにくい状況にある。
ニューノーマルが求められる中で、前例のない取り組みも増えていくが、苦手意識として「自発」(39.8%)「試行」(24.0%)にポイントが集まる新入社員にとっては不安を招いてしまう恐れがある。これらを踏まえたOJTが必要になってくるのではないだろうかという。
働き方の選択肢が増えている社会の中で、新入社員たちは政界のない働き方・生き方の選択を迫られている。そんな時に、支えとなるのは自己理解。自分の行動や価値観、特徴に意識を向け、自己理解を深めて自身の支えとなるものを見つけることが重要だ。
職場の上司や先輩は、それをサポートするような取り組みが求められる。そして、新入社員を育成する際には、会社にとっての目的や意義を発信し、育成のための環境を整えていくことが必要。新入社員への期待やその価値を、職場に伝えていくことが大切だとした。
リモート環境下での効果的なOJT
これまでの人材育成は、新人とは未成熟で教えるべき存在であり、組織に順応させることを重要視していた。しかしこれからは、若手の個性を生かし、若手からも学ぶ姿勢が必要となる。このことは、調査で上昇傾向にあるポイントや減少傾向にあるポイントからもうかがえる。
そして昨今の社会状況から、Z世代のトレーニングの多くはオンライン化されてきている。さまざまな課題も見えてきているが、特に留意すべきなのは同期との関係づくり。
受講者の状況を把握しにくく、関係性も築きにくい状態では、新入社員のモチベーションが低下し、指示を待つ受け身化が進み成長しづらくなる。
仕事をしていく上で重要なのは"関係性"であり、仕事の進捗確認だけでなく信頼関係の構築が必要なこと。そのためにも、新人の特徴や価値観を知ることが大切で、オンライン環境ではよりそのような側面が重要になってくる。
オンラインミーティングでのちょっとした雑談なども、そのような部分を意識して話題を選択してみるといいようだ。
会話などからでは特徴をつかみにくい場合でも、適性検査などの専門ツールを使って「見える化」したり、オンラインミーティングの際に「雑談タイム」や「仕事の相談の時間」を設けたりするなど、「ルール化」してみると良いだろう。
そうやって見付けた新人の持ち味やトピックを、同僚などに「シェアリング」していくことや、新人の自立学習環境を整えるためのオンラインツールを活用することもリモートでのOJTには有用だ。ニューノーマルな時代に合わせて、実践性を高めるデザインを検討していく必要があるとした。
よりよい人材育成を目指すためにも、企業に合うように新人を変えていくのではなく、新人の長所を職場で生かせるようにしていかなければならない。そのためにも、まずは”新入社員を知ること”が重要なのではないだろうか。