ホンダの新型「シビック」がついにお披露目となった。発売は2021年秋の予定だ。現行モデルは「ガンダムっぽい」とも形容される“メカメカしい”スタイルに賛否が分かれたが、3代目「ワンダーシビック」に学んだという新型はどうなのか。デザインをじっくりと見てみよう。

  • ホンダの新型「シビック」

    メカからクルマへ? 新型「シビック」のデザインはどう変わったのか(本稿の写真は撮影:原アキラ)

ホンダDNAの継承者

新型シビック開発責任者の佐藤洋介氏によると、今回の開発過程ではエクステリアデザインの方向性を見極めるため、歴代シビックをしっかりと研究したとのこと。そこから見えてきたのは、ホンダDNAの骨格となる「開放的なグラッシーキャビン」と「薄く軽快に見えるボディ」という2つの要素だった。

それらを象徴する具体例が、3代目のワンダーシビックだ。ルイ・アームストロング(サッチモ)の「What a wonderful world」が流れるCMを今も覚えている方は、数多くいらっしゃるに違いない。筆者もそのCMをリアルタイムで見たひとりだが、曲をバックに米国の大自然や街中に佇む赤いシビックは本当に素敵だった。

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    「ワンダーシビック」は「開放的なグラッシーキャビン」と「薄く軽快に見えるボディ」を兼ね備えたクルマだった

キープコンセプトとしたことで初代ほどの人気を得ることができなかった2代目に対し、薄いボディと広いグラスエリアを持つ斬新な3代目のスタイルは、再びシビックの販売台数を押し上げることにもつながった。ホンダのキーワードとなる「M・M」(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想が、このモデルには最も色濃く反映されている。当然ながら結果もすばらしく、1984年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」と「グッドデザイン大賞」をゲットしている。

当時は安全面の規制が緩かったので、こうした形状でボディを作り上げることが可能だったのだろうが、現在の基準はハードルが高い。そんな中で、現代の技術を用いていかにシビックらしいデザインとするか。こんな課題に挑戦したのが今回の11代目ということになる。

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    新型「シビック」は「ワンダーシビック」の現代的解釈といった感じ?

薄まった“ガンダム感”

新型シビックのグレードは「EX」と「LX」の2つ。最高出力134kW(182PS)、最大トルク240Nmを発生する1.5リッター4気筒VTECターボエンジンを搭載しており、トランミッションはCVTと6MTが選べる。ボディサイズは全長4,550mm、全幅1,800mm、全高1,415mm、ホイールベース4,550mm。先代に比べて30mm長く、5mm低く、ホイールベースは35mm長くなっている。

エクステリアでは、Aピラーの位置を50mm後退させるとともに、フロントフード左右後端を25mm下げることでエンジンフードの低さを強調。そこからつながるリアのショルダーラインも35mm下がっている。これらのおかげで、コーナーの先を見渡すドライバーの水平視野角の広さは87度と国産トップレベルとなり、さらには凹凸が少ないベルトラインにより、視界の連続感が増している。この辺りの考え方は「フィット」や「ホンダe」、「ヴェゼル」といったホンダの新型モデルにも採用されていて、近年のホンダ車の特徴になっている。

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    エンジンフードの低さを強調する新型「シビック」

ルーフは後方に向かってなだらかに流れるクーペルックだ。新型ではテールゲートを軽量な樹脂製とすることで、ヒンジの取り付け位置を外側に移動させることができたという。おかげで低いルーフにもかかわらず、後席のヘッドクリアランスが十分に確保されている。

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    ルーフはなだらかなクーペルックだ

LEDの薄型ヘッドランプは先代のように“強気”なつり目ではなく、水平気味の優しいデザインになった。テールライトのC型形状も、ちょっとタレ目な感じで面白い。全体的に先代のような“ガンダム感”が薄まっているのは、嬉しいポイントかもしれない。

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  • ヘッドランプ(左)とテールライト(右)。目の印象は全体的に優しげになった

インテリアも「爽快」が基本

インテリアはノイズレスで爽やかな空間を目指した。エクステリア同様、目指すところは「爽快」だ。乗り込んでみると、こちらも最近のホンダ車らしい水平基調で、窓の写り込みや影の出方を考慮した造形になっている。

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  • 左が「EX」、右が「LX」のインテリア

目につくのはメッシュ状になっているエアコンのアウトレット。ステアリングの取り付け部をのぞけば、ダッシュボードの左右いっぱいまで広がっている。これにより、ワイドフローで爽快な風を送り出すことができるという。顔への直接風を避けることで肌や目の乾燥を防ぎ、乗員の周辺に向けて心地よい空気を攪拌しつつ送ることで快適な室内空間を作り上げるというのは、先に発表したSUV「ヴェゼル」の「そよ風アウトレット」と同じようなアイデアといえる。

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    ダッシュボードの左右いっぱいに広がるエアコンのアウトレットが目を引く

コックピットは「EX」が10.2インチのフルグラフィックメーターを採用していて、画面右側が車両/運転支援の情報、左側がインフォテインメントの状態を表示する。ステアリング左右のスイッチと位置的に連携しているので、直感的な操作が可能だ。

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    「EX」の10.2インチフルグラフィックメーター

シートは「EX」がブラックベースに赤いパーフォレーションのあるスエードのコンビ。「LX」は1枚の表皮で、織を変える形でコンビ状にした。前後左右と足元の空間には十分な余裕がある。ラゲッジルームは452リッターを確保してあるので、遠出にも最適なクルマとなりそうだ。

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