シーズン2まで走り切った山田。『全裸監督』が彼にもたらしたものとは、一体どのようなものなのか。そもそも初めに村西役のオファーを受けた最大の理由は、「Netflixオリジナルということで、190カ国で配信されるということ」だったという。「『日本の作品はクオリティが低い』と言われがちですよね。僕は『果たして本当にそうなのか?』と思っていて。日本の題材で、日本語で海外にも観られるような作品を世に出したら、クオリティについての確認ができると思った」

シーズン1が放送されるや、海外にも熱狂的なファンを生み出した。配信後は、海外で「Netflix!」「シーズン2!」と呼び掛けられることが増えたそうで、山田は「海外の方々も『全裸監督』を楽しんで、期待してくれているんだなと、肌で感じることができた。『日本のスタッフ、キャストのみんな、自信を持って大丈夫だよ。世界でも通用するみたいだよ』と思えた」と当初の目的である、確認作業を見事に成し遂げた。

すると山田は、「現場だけではなく、脚本づくりから資金調達もすべて、もっともっと全力で、どんどんやっていこうぜ!」とさらなる力がみなぎってきたという。役者として20年以上のキャリアを積み上げてきた山田だが、このように見渡している視野はものすごく広い。監督やプロデュース業にも乗り出しているが、そのすべての原動力の源になっているのが、日本の役者、スタッフに感じている“誇り”だと明かす。

■ハリウッド俳優に「日本の映画に出たい」と思ってほしい

山田は「日本の俳優って、みんなすごいんですよ」と瞳を輝かせながら、「でも今の環境では、その力をすべて出しきることができない。僕は今、芝居が好きだとはっきりと言えます。でも過去には、そう言えないときもたくさんありました。今そういった状況にいる後輩は、絶対にいるはず。ボルトだって、グラウンドとスパイクがあって、しっかりと栄養と睡眠をとって、その上でいい記録が出せる。2時間睡眠で、砂利道を裸足で走っても、いい記録は出せないですよね。それと同じで、まずは現場の労働基準を守って、みんなにきちんと寝てもらって、仕事のパフォーマンスを上げて、作品の質を高める。そうすれば、日本国内でも映画館に足を運んでくれる人が、もっと増えるはず。結果、次の作品の資金も集めやすくなる。そのすべてを、同時にやっていくことが必要」と熱弁する。

続けて「役者でも、現状では『日本はダメだ、英語を覚えてハリウッドに行くぞ』となりがちですよね。でも、そんなことはない。日本人が作るものを海外の人たちにも面白いと思ってもらいたいし、なんならハリウッドの俳優に『日本の映画に出たい』と思ってほしい。むしろ、『こっちがハリウッドだよ』みたいに」とニヤリ。「それって、単純にうれしいですよね。日本の役者やスタッフたちにも、自信を持って『死ぬまで日本でいい映画、いい作品をつくっていくぞ!』と思ってほしい」と真っ直ぐに未来を見つめていた。

『全裸監督 シーズン2』は、6月24日Netflixで全世界独占配信。

■山田孝之
1983年10月20日生まれ、鹿児島県出身。1999年、俳優デビュー。2003年に『WATER BOYS』(フジテレビ)でテレビドラマ初主演、2005年 には映画『電車男』で主演を務める。『クローズZERO』(2007)や『闇金ウシジマくん』(2012)などで強烈な存在感を放つ。『デイアンドナイト』(2019)で初めてプロデューサーに専念し、『ゾッキ』(2021)で長編監督デビューした。主演映画『はるヲうるひと』が公開中。

ヘアメイク:灯(ROOSTER)/Toh(ROOSTER)
スタイリスト:五月桃(ROOSTER)/KURUMI(ROOSTER)
衣装クレジット:シャツ/Y's(ワイズ プレスルーム) その他/スタイリスト私物