「モジュール」はITの現場やビジネスシーンなど、見聞きする機会の多い単語です。「モジュール化」「モジュール学習」といった派生語も多いですが、実はその意味や由来をよく知らないという人もいるでしょう。この記事では、業界ごとの「モジュール」の意味や細かい違いを、わかりやすく解説していきます。
モジュールとは
「モジュール」は英語の「module」が由来となって生まれました。もともとIT用語でしたが、その意味の汎用性(はんようせい)の高さからさまざまな分野で使われるようになっています。早速それぞれの意味を見ていきましょう。
【簡単に言うと】基準となる単位や、規格化されて交換可能な構成要素のまとまり
業界などによって使われている意味が少しずつ異なる「モジュール」ですが、共通して、基本的な意味は「基準単位」「規格化された構成要素」などです。何かのまとまりのこと、とイメージするといいでしょう。
【IT用語としての意味】機能ごとの部品のまとまりで、機器やシステムの一部
IT用語における「モジュール」は、ひとまとまりの機能のことを指します。ソフトウェアでもハードウェアでも用いられる言葉で、独立性が高く、また規格化されているため交換可能です。
基本的には単体で機能させるというよりは、他のモジュールと組み合わせることで一つのプログラムとして機能させます。プログラミングの一パーツと解釈できるでしょう。
【建築用語としての意味】畳など、設計上の基本となる寸法
建築用語における「モジュール」は基本となる単位を表します。設計上の基本となる寸法のことで、例えば建築物の各部分を一定の倍数で統一したいときに基準となる大きさのことです。日本建築においては畳の寸法などに用いられることが多いでしょう
【単位を表す意味】時間の区切りやアイデアのまとまりなどに幅広く使える
「モジュール」は単位としても使われています。上記の建築関連ももちろんですが、歯車の歯の大きさや学習時間の単位、時には複数の言葉やアイデアをまとめて、一つの概念としての単位、あるいは考え方の単位として使われるなど、幅広い活用が可能です。
単位としてのモジュールの違い
「モジュール」は単位としても多く使われていますが、分野によって意味合いや意味する大きさが異なります。
一番小さな単位を表すモジュール
IT分野における「モジュール」は機能の名前であると同時に、一番小さな単位でもあります。モジュール単体でも何かの機能を持っていますが、通常は複数のモジュールを組み合わせてプログラムを構成します。
寸法を表すモジュール
建築分野における「モジュール」は寸法を表します。日本建築では「尺」を基準とした「尺モジュール」という単位があり、これは「910㎜=3尺」が基準です。近年では「メートル法」を基準とした「メーターモジュール」も使われるようになりました。
歯車の大きさを表すモジュール
「モジュール」は歯車の大きさを表す単位としても知られています。基本的に歯車は互いの歯の数が合っていると組み合うようにできていますが、モジュールが一緒であれば歯の数が異なっていても組み合わせることができるのです。
歯車のモジュールはJIS規格である程度の数値が推奨されているので、それに沿って利用できるようになっています。
モジュール化とは
交換可能な一つのパーツのことを指す「モジュール」ですが、そこから派生した「モジュール化」という言葉がいま注目されています。
「モジュール化」とは、互換性のあるパーツによって異なるシステムでも問題なく機能を維持することです。つまり、システムの全体構造を変えることなく、モジュールを取り換えることによってシステムの機能を維持することが指します。
例えば、現代ではパソコンの部品もモジュール化され、異なるメーカーがつくったパソコン部品でも他メーカーのパソコンに合わせて使うことができます。モジュール化されたことにより、パソコン業界は大きく飛躍したのです。
IT用語からビジネス用語へ
パソコン業界がモジュール化によって発展したことに鑑み、「モジュール化」という言葉はIT用語だけでなくさまざまな分野で使われるようになりました。自動車業界や金融、エネルギー業界などでモジュール化が使われており、いわば「経営のモジュール化」といった状態です。
モジュール化のメリット
モジュール化すると部品はいつでも交換可能なため、システムに合わせて部品を再構築するコストを削減することができます。またモジュール同士の組み合わせは一つに限らずさまざまな可能性があるため、システムの多様性につながるというメリットがあります。
さらにモジュールは互換性が高いですが、独立性も持ち合わせている機能です。そのため分業やアウトソーシングによる作成も可能となり、システム設計の時間短縮や自社経営資源の枠を超えた設計が可能になります。
モジュール化のデメリット
モジュール化にはデメリットもあります。互換性の高さを求めるために、システム全体が汎用的で独自性に欠ける設計になってしまうことです。また、システム全体が複雑で大きすぎた場合は小さな齟齬(そご)が生じることもあり、その微修正に余計なコストがかかる可能性もあります。
モジュールの多様化が進めば組み合わせも増え、より複雑化します。最適な組み合わせを見つけるのに時間を要する可能性もデメリットといえるでしょう。
モジュールから派生した言葉
「モジュール」の交換可能な特性を例えとして派生した単語がいくつかあるので紹介します。
モジュール結合度
「モジュール結合度」は従来のパソコン部品としてのモジュールそのものについていう言葉です。モジュール同士の結びつきの強さのことをいいます。
ソフトウェアの設計において「モジュール結合度」は低ければ低いほど理想的です。結びつきが強すぎると、互いの内部に影響を与えあってしまいます。
モジュール強度
「モジュール強度」もパソコン部品としてのモジュールに関連する言葉です。モジュールには複数の機能が含まれますが、その関連性の高さを示すものであり、モジュール強度が低くなるほど機能同士の関連性の幅が広がっていきます。
例えば、最もモジュール強度が高いとされるのが「機能的強度」で、モジュールに含まれる1つの機能のみが作用している状態です。これはモジュール同士の関連性が低いことを意味します。2番目に高いのが「情報的強度」で、特定のデータを扱うための機能をまとめた「情報」に関連性のある状態、3番目に高いのが順番に実行される機能に焦点をあてた「手順的強度」です。
最もモジュール強度が低いとされる「暗合的強度」は、機能間の関連性を考慮しません。単純にプログラムを分割して、複数の機能を一つにまとめた状態をいいます。
モジュール学習
「モジュール学習」とは、同じ内容を反復練習する学習法のことです。反復する内容は単純な計算や読み書きで、読み書きは音読、計算は百ます計算などを行うことが多いです。
同じ内容を何度も繰り返すことで子どもの問題処理スピードを速めます。いわゆる「脳トレ」のようなものです。同じ内容の繰り返しを互換性のあるモジュールに例えた言葉といえるでしょう。
モジュールの意味を正しく理解しよう
「モジュール」の意味や派生した言葉についてまとめました。「モジュール」はコンピューター業界の用語でしたが、いまではビジネス用語としても浸透しています。形容表現だけでなく単位としてなど、使われる業界や場面で意味合いが異なるので、それぞれの意味を知って正しく使い分けられるようになりましょう。