社会人になってから「モック」「モックアップ」という言葉をよく聞くようになったという人もいるでしょう。幅広く使われている言葉ですが、実は細かい使い分けが必要になります。

この記事ではモックの意味や由来、使い分けについてまとめました。ビジネスシーンでの使うときの参考にしてみてください。

  • 「モック」の基本的な意味や由来

    適切な使い方を学びましょう

モックとは

はじめに、モックとはどのような意味があるのか、由来や類語などについてもまとめました。

モックの意味

モックはそもそも、モックアップを省略した言葉です。「試作品の模型」「店頭の見本」の意味があり、商品化する前に作った模型やレプリカ、本物ではないもののことを指します。

モックは製造工程の一つであり、視覚的に表示することで商品化した際に具体的なイメージをつかみやすくするために作られます。もちろん商品化する前だけでなく、消費者が購買を決めるときの模型も同様です。

たとえば携帯ショップの店頭にプラスチック製の携帯電話・スマートフォンが置いてあることがありますが、これは「ホットモック」と呼ばれるモックで、消費者が携帯電話・スマートフォンの使用感をイメージするために用意されています。

モックの類語

モックの類語は「起こし絵」「木型」などが挙げられます。

「起こし絵」とは日本古来の「簡易模型」のことです。現代では建築分野において「展開図」といい、天井や壁などを立体的に表現したり、人物や自然を取り入れて全体像を多角的に表現したりするときに使われています。

「木型」は読んで字のごとく木で造られた模型のことで、「コストを削減できる」「丈夫である」「削りやすい」という点から木材が使いやすかったこともあり生まれました。「木型」というと鋳型を作るときの枠組みの意味もあるので、混同しないように注意が必要です。

「ジオラマ」や「縮尺模型」と言い換えることもできるでしょう。「イミテーション」「まがい物」も類語ですが、転じて「実権のない」という意味にもなります。

モックの英語表現

モックの英語表記はそのまま「mock」「mock up」です。モックはこの英語が由来となったカタカナ英語で、本来「mock」は「あざ笑う」「ばかにする」といった意味があります。

中には「まねてばかにする」「まねてあざける」といった意味も含み、形容詞的用法として「まがい物の」という意味を持っています。これが成語「mock up」では「偽りの=模型」という意味になっているようです。

モックの対義語

モックアップの略語としてのモックの対義語は「entity(実体)」、本来の英語のモックの対義語が「genuine(本物の、純粋な)」です。「リアル」「実体」も対義語で、モックが本物ではないニセモノを指す言葉であることがわかるでしょう。

  • モックの基本的な意味や由来

    実際に手で持って比較するのに便利な「ホットモック」

分野別のモックアップ

モックはさまざまな分野で使われていますが、主にモックが使われている場面についてご紹介します。

工業製品としてのモックアップ

工業製品におけるモックアップは、製品の外観や内部の構造を確認したり評価したりするために作られます。実物が金属製であっても、モックアップの段階では板紙やプラスチック、木材などで作られることもあります。

完成度は製作段階によって異なり、形状やサイズを確認・評価するだけなら塗装や装飾を省いたシンプルなもの、営業や販売促進のためなら塗装や装飾はつけても内部構造を省略する、といった点が本物との違いです。

IT分野でのモックアップ

Webサイトやソフトウェアの制作においても、モックアップという言葉が使われます。この場合、完成後のサイトイメージや実物そっくりの画像をモックアップと呼ぶことがあります。

「デジタルモックアップ」とは?

「デジタルモックアップ」は、その名のとおり3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)によるモックアップのことです。物理的なモックアップに代わって近年使われることが増えたスタイルで、製図データなどから製品の外観や構造などを画面に映し出すことができます。デジタルモックアップ作成のための専用ツールもあります。

多額のコストや長い時間を必要とする物理的なモックアップの場合は、デジタルモックアップを活用することによって金銭的・時間的コストの削減につながるでしょう。最初にデジタルモックアップでイメージを作成し、最終段階で物理的なモックアップを作成するケースもあります。

  • さまざまな分野の「モックアップ」

    外枠を作ってみることでイメージがわきます

モックと意味が似ている言葉

モックと意味がよく似ている言葉を集めました。それぞれどのような違いがあるのか比較してみましょう。

■スケッチ・ラフスケッチ

アプリ開発などでよく使われる言葉で、大まかな画面遷移や画面イメージを手書きのラフなレベルで作成するものです。製作の初期段階で使われ、大まかな作業の流れを決定づけます。

■ワイヤーフレーム

ラフスケッチの次段階にくるのが「ワイヤーフレーム」。このときデザイン要素はほとんどない状態です。モックアップはワイヤーフレームよりさらに詳細を作り込む段階になります。

■プロトタイプ

モックアップに機能を追加して、実際に動かせる状態にしたものを「プロトタイプ」と呼びます。ユーザビリティや操作性をチェックするために必要不可欠な段階と言えるでしょう。

商品開発において、ラフスケッチやワイヤーフレームは大枠しかわからないため社内で企画を通すのには不十分です。モックアップやプロトタイプは企画にリアリティを持たせるための必要なステップとなっています。

  • モックとよく似ているけれど異なる言葉

    スケッチからプロトタイプまでの途中工程がモックです

ファッション分野のモック

ビジネスシーン以外でモックという言葉を聞いたことはあるでしょうか。よくよく探してみると、ファッション分野にもモックという言葉が使われています。

モックネック

「モックネック」は「モック・タートル」が語源のファッションデザインです。この場合のモックは「偽りの」という意味で使われており、タートルネックより低いネックが特徴です。流行しだしたのは2015年と比較的最近のこと。

ネック部分を2重・3重に折る必要のない高さの服は、モックネックと覚えておくといいでしょう。

モックシューズ

カジュアルファッションの一つとして取り入れられることが増えた「モックシューズ」は、もともとアウトドア用品でしたが、着脱のしやすさから一般のファッションにも取り入れられるようになってきました。

モックシューズの由来は諸説ありますが、アメリカの先住民が履いていた1枚の皮だけで作られたシューズ「モカシン」が語源という説が有名です。英語では「moc shoes」と書くので、モックアップのモックとは別の意味になるので注意しましょう。

  • ファッション分野のモック

    口元まで隠せるのはモックネックではなくタートルネック

モックとはモノ作りにおいて必要不可欠な過程

モックと語源であるモックアップの意味や使い方について解説しました。モックはIT分野や工業製品によく使われる言葉で、モノ作りにおいて必要不可欠な過程のひとつです。

制作現場と社内の他部署との連携のカギを握る工程でもあるということを理解しておきましょう。