製造業でよく使われる単位に「ロット」があります。普段生活していると使わない単位ではありますが、製造業や流通・物流業界には必須な単位です。本記事ではそのロットの意味などを説明します。

  • ロットとは

    ロットとは一体どのようなものなのでしょうか

ロットとは

ロットとは、製造業や金融業等で使われる単位の一つです。製造業では単価が低い商品を製造・販売していることが少なくなく、その場合は個々に販売していても得られる収益は微小なものです。

このような単価が低い製品を売って利潤を得るためには、より多くの商品を大量生産する必要があります。しかし、大量生産の裏には在庫の余剰という問題が常に付きまといます。

そこで、同じ商品を製造する際に最小単位のかたまりを表す言葉として「ロット」という言葉が生み出されました。このロット数を必要に応じて調整することにより、製造業者は利益や損害をコントロールできるのです。

ロットとは、種類を問わず製造業界であればどの分野でも使う言葉であり、商品の生産管理をするという点においても欠かせない言葉となっています。

ロットの語源

ロットの語源は、英語の「lot」に由来しています。日本人が次第に「lot」をカタカナの「ロット」と呼ぶようになり、普及していきました。

ロットの意味

「lot」は「まとまった数量、1組」という意味を持ちます。1つのかたまりを想像してもらうとわかりやすいです。先述のように、製造業では製造する際の最小単位のかたまりを表しています。 かたまりを表す言葉の中でよく耳にするのは「ダース」ですが、ダースは「12」個と1単位の数が決まっているのに対し、ロットは単独で特定の数を表すものではありません。工場やモノに合わせてそれぞれの数が定められており、同じ「1ロット」といっても、A会社では10個、B工場では35個などというような違いが出ることに注意しておきましょう。

  • ロットとは

    ロットとは、まとまった数量のことを指します

製造業におけるロット

ロットという言葉は、さまざまな業界で使用されています。中でも製造業界では、製品を数える際のひとかたまりの単位として用いられます。まず、製造業界で用いられるロットの意味を詳しく解説していきます。

製造ロット

商品の製造では、取引先の需要や実際の受注量から細かく量を調整する必要があります。そして製造する際には、実際に一定の量を決めて製造を行います。これを「製造ロット」と呼びます。

製造ロットの設定は、過剰生産から生じる余剰を防ぐだけではなく、無駄な人件費の削減においても重要となります。加えて、現場によっては製造ロットの数量に基づき、生産工程の変動や、シフトの調整が生じます。一つの作業が全体の作業に密接に連動する製造業界においては、製造ロットの調整が全体に重大な影響を及ぼすのです。

購入ロット

「購入ロット」とは製造した製品を取引先へ販売する際に指定する販売数のことを指します。製造ロットと同様に、この購入ロットもまた、製造業社が利潤を上げ、損失を出さないようにするうえで重要な事項です。例えば、余剰の在庫が発生してしまった際は価格帯を低く設定して、その分逆に多く購入ロットを定めるなど、購入ロットの設定次第で業績が左右されることもあります。

購入ロットは製造者側だけでなく、購入者側も気にしなければならない点です。購入ロットと販売価格の塩梅をうまく調整しながら、取り引きをする必要があるでしょう。

ロット管理

ロット管理とは、その名の通りロットを管理することを指します。ロットは製造や販売だけに留まらず、管理面においても重要な役割を担います。大量生産した製品を管理するには、ロットごとに割り当てられた番号を管理することが必要不可欠となってきます。

製造業界において、ロットの管理は全体の品質管理や利潤の調整にも関わるので、押さえておかなければいけないポイントの一つです。

最小ロット

「最小ロット」とは、ロットの最小単位のことを指します。最小ロットも製造ロットと同じく、製造者側が独自に決めることができます。

例えば、ある取引先に対し最低でも15個以上販売しなければ利益が得られない製品の場合であれば、製品の最小ロットは15となります。一方で、製造者側が決めた最小ロットが購入者側にとって多いと感じた場合は、販売価格を上げることで最小ロットの数を減らすなど、購入者側の意思で最小ロットが変動する場合もあります。

このように、最小ロットとは製造・販売のうえで大きな役割を果たすため重要な数となります。

  • 製造業のロット

    ロットは特定の数ではないため、取引の中で変動することもあります

各ビジネスにおけるロットの意味

ここからは、金融・物流・建築業界で用いられるロットの意味についてご紹介します。

金融のロット

金融業界(FX)でのロットは、「取り引きにおける通貨量の総称」として用いられます。製造業と同様に、金融業界でも1ロットあたりの価値を明確に示す基準はありません。しかし、あくまで慣習的にですが、1ロットあたり10万円とされることが多いようです。また、取り引きは最低1ロットからというような決まりもあります。金融業界においても単位を表す基準としてロットは重宝されています。

物流のロット

物流業界の場合、「輸送ロット」「配送ロット」「保管ロット」の3種類が存在します。

輸送ロットとは、輸送の効率性を上げるために、輸送物をある数量ごとのロットにまとめることを意味します。配送ロットとは、配送の効率を上げるために配送物をある数量ごとのロットにまとめることを意味します。

そして保管ロットとは、製品を保管する際にある数量ごとのロットにまとめておくことを意味します。このように、物流業界においてはものを運ぶ際の効率化のため、フェーズごとに分けて「ロット」が用いられています。

建築のロット

建築業界でのロットは、全体の作業を細分化した際の、それぞれ一つひとつの工程のことを指します。例えば、一軒の家を建てる際の土台が1ロット、外装が1ロット、内装が1ロットなど、それぞれの作業一つひとつをロットと呼びます。

  • 金融・物流・建築のロットとは

    業界によってロットの意味は異なります

ロットのメリット

さまざまな業界で使用され、重要な意味を持つロットですが、ロットを定めることには、さまざまなメリットとデメリットが存在します。ここからは、ロットのメリットとデメリットについて紹介していきます。

コストを削減できる

まず大きなメリットとして挙げられるのが、コストの削減です。ロットは、ロットというひとかたまりで販売をすることで、個々に売るよりも利益を上げられます。さらに製造の段階で生じる余剰生産を抑えられるので、コストの削減にもつながります。それに比例して、人的コストも抑えることができるのです。

工程を管理しやすくなる

ロットというひとかたまりにして販売をすることで、製品の工程管理に役立ちます。ロットごとに売り上げや出荷量を計算すれば、単価が低い製品一つひとつの品質管理の煩わしさも減らすことができるでしょう。

不良品を特定しやすい

ロットごとの管理をしておけば、万が一不良品が出てきたときにもすぐ特定し回収を行うことができます。製造業者はロットごとに製品を作成することが多いので、製品に対するクレームがあった場合は、そのロット番号が特定でき次第、すぐに同様の出荷時期に生産された製品を回収できます。

ロットのデメリット

注文数量を間違えやすい

ロットという数量を用いることで発生するデメリットの一つに、注文数量を間違えやすいことが挙げられます。例えば、よくあるミスにロット数と商品の個数を間違えて発注してしまうケースがあります。

1ロットの個数が50だとして、発注が10ロットなら、実際の商品の個数は10個ではなく500個です。よく生じるミスのため、十分に注意しましょう。

ロットによって個数が異なる

ロットは、特定の取り引きなどによって1ロットあたりの個数が変動します。 「前回は1ロットが50だったのに、今回は1ロットが100になってしまっていて、ミスが生じてしまった」。このようなケアレスミスのケースも多いです。取り引きの際は、1ロットの数がいくつか必ずチェックするようにしましょう。

  • ロットのメリット・デメリット

    ロットには、さまざまなメリットとデメリットが存在します

ロットの意味を正しく把握しよう

本記事ではロットの意味や使い方とメリット・デメリットなどを説明しました。普段の日常会話でロットという単位を使うことは少ないですが、製造業や金融業などでは効率化や生産管理のため頻繁に使われています。

生産や発注のもととなる言葉であるため、1ロットの個数を誤ると大きな損失につながる場合もあります。取り引きや会社によって異なる数値を持った言葉であるため、使用する際は慎重に扱うようにしましょう。