東京2020組織委員会は東京2020大会の表彰式を彩る表彰台・楽曲・衣裳などの各アイテムについての発表会を、開幕50日まで迫った今月3日に開催した。

発表会には表彰台デザインを担当した美術家の野老朝雄氏、作曲家の佐藤直紀氏、衣裳やメダルトレイをデザインしたファッションディレクターの山口壮大市が出席。ボクシングミドル級金メダリスト・村田諒太氏ら、過去のオリンピック・パラリンピックのメダリストたちがゲストとして登壇した。

  • 東京2020大会のアイテムについての発表会が実施された(c)Tokyo 2020

■「アスリートが表彰台に気持ちよく上がれるように」

エンブレムのデザインも手がけた野老氏は、廃プラスチックのリサイクル素材を使用した表彰台のデザインコンセプトについて、「エンブレムと同じく“つながる”ということが、一番大きな考えにあります。ピースがつながり合った表彰台で。今回は3Dプリンタなど技術的にも今後どんどん次の世代につながる技術を取り入れてつくりました」と紹介した。

  • 左からエンブレムのデザインも手がけた野老氏、作曲家の佐藤氏、衣裳などを担当した山口氏(c)Tokyo 2020

作曲家の佐藤氏は「まずは音楽がこういう形で発表できて、すごく嬉しく思っています。アスリートが表彰台に上がったときに、気持ちよくメダルを授与される瞬間が訪れることを期待しています」とコメント。

「基本的にメロディが思い浮かぶということがなくて。つらい作業なんですけど、オリンピックパラリンピックが成功することを祈って曲を書きました。アスリートが表彰台に気持ちよく上がれる。そのことを第一に考えて曲をつくりました」と語った。

  • 東京2020表彰式衣装(c)Tokyo 2020

フィールドキャストの衣裳などを担当した山口氏は、和服と洋服のいい部分をうまく融合しながら、快適に着られるものを目指したとのことで、そのデザインについて次のように解説した。

「僕もつなげるというキーワードを非常に意識していて、表地は一つ一つの輪がつながっていくような構成の柄になっています。体と布の間に空間が孕んで、動くたびに揺らめくような、普通の洋服とは違う構造になっていて、そんな和服が織りなす佇まいの美しさ、情緒のようなものを感じていただけたらいいなと思います」

■「オリンピックはゴールではなくてスタート地点」

  • 登壇したオリンピアンとパラリンピアン(c)Tokyo 2020

ロンドン2012大会の金メダリストであるボクシングの村田諒太氏は、オリンピックの表彰台に立つという経験について振り返った。

「僕の中でオリンピックはゴールだと思っていたんですが、実はスタート地点だったんですよね。表彰台のてっぺんに立ったときに『自分の人生でやることは終わった』くらいの気持ちになるんですけど、勘違いも甚だしくて。自分の人生をより良いものにしていくきっかけの舞台だったなと思います」

  • ボクシングの村田諒太氏 Tokyo 2020公式ライブ配信より

コロナ禍での開催について、松岡氏から見解を問われた際は、「アスリートの立場としては、やる以上は盛り上げて、そこに意義を持たせたいというところなのかなと。意義って一様のものではなく、各々が自分たちで考えて、つくり上げていかなければいけない。この舞台に立つ選手たちから何を感じてもらえるかが、大事なのかなと思います」とも語っていた。

  • 競泳の岩崎恭子氏 Tokyo 2020公式ライブ配信より

バルセロナ1992大会200m平泳ぎで金メダルを獲得し、未だに破られていない競泳史上最年少で金メダルの記録を持つ岩崎恭子氏は、「私もオリンピックの後に大変な思いをしたんですが、もう一回頑張ろうと思えたのもオリンピックの経験のおかげでした」とコメント。 「この1年でガラッと環境が変わってしまって、さまざまな意見があるのももちろん承知していますが、選手たちが決められる問題でもないですし、準備をしっかりして備える。その思いが50日後につながってくれたらなと思います」とのことだった。

■パラリンピアンたちも期待のコメント

「私は目が見えないので音楽で受ける印象が、すごく大きくて。いま音楽を聴いて鳥肌が立つような思いで、自分が表彰台に上がったときのことを思い出すような気持ちでした」とは、バルセロナ1992大会からロンドン2012大会まで6大会連続出場し、金メダル5個を含む計21個のメダルを獲得したパラリンピック競泳の河合純一氏。この1年を振り返りながら大会への期待を明かした。

  • パラリンピック競泳の河合純一氏 2020公式ライブ配信より

「アスリートにとっても苦しい1年だったと思いますが、そんな中で自分の目標に向かって日々を過ごし、結果に結びつける選手をたくさん見てきました。パラリンピアンの多くは中途で障害を負い、自分の今までの当たり前が失われる経験を持つアスリートが多くいる。厳しい状況でも楽しみや目標を見つける強さやしなやかさをパラリンピアンは持っていると思っていましたし、皆さん自身の中に秘めている可能性に気づいてもらえるような大会になれば」

  • パラリンピック・アルペンスキーの大日方邦子氏 2020公式ライブ配信より

また、リレハンメル1994大会からバンクーバー2010大会まで5大会連続出場し、金メダル2個を含む計10個のメダルを獲得したパラリンピック・アルペンスキーの大日方邦子氏も、「この1年は世界中の人たちが経験したことない時間を過ごしてきたと思います。つらく大変な時期でも、道を切り拓いていく力をアスリートたちから感じとっていただけると嬉しいなと思っています」と期待を述べていた。