知っているようでいざ説明するとなると難しい「資産形成」と「資産運用」いう言葉。皆さんはきちんと理解していますか?「資産形成セミナー」や「資産運用講習会」などを耳にしたことはあると思います。ではいったいどのように使い分けているのでしょうか。

資産形成と資産運用の違い

こちらの図は、国が作成している資料です。

現役で働いている期間については「資産形成期」。その後、定年を迎えて退職するリタイヤ期については「運用期・取り崩し期」、70歳後半から80歳以降の高齢期には「資産管理期」とあります。
この資料では、現役時代に勤労収入がある期間には資産を作ります。退職して勤労収入が得られなくなる、もしくは得られたとしても現役の時よりは少なくなるリタイヤ期には、現役時代に作ってきた資産を運用しつつ老後の生活費として取り崩していきます。そして高齢になってからは自分の資産を贈与や相続することを念頭において、資産を管理する必要があることを示しています。

<資産形成期>
定年退職を迎えるまでの現役時代に、勤労収入を通して資産を作る時期
<資産運用期>
退職後や再雇用期間に、現役時代に作った資産を運用する時期

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資産形成期の事前準備

ではこの「資産形成期」にはどのように過ごすべきなのでしょうか。
今や就労環境も変わり、現役を早めに退職する方や元気ならば長く働きたいと思われている方、様々ですので、現役期間も短い方と長い方では10年~20年の差があるかもしれません。
期間が長ければ資産を積み上げていく点で有利ではありますが、退職まで時間があると思っていてもタイミングを逃してしまうと、退職間際に慌てることになるでしょう。

事前準備のポイント
・退職後の収入と支出を把握しておく
・現役期間のマネーイベントを把握する
・今からできる老後資金の準備方法を把握する

1⃣退職後の収入と支出を把握し、生活費を調整
人生100年と考慮するなら退職後は40年考えなくてはなりません。公的年金や企業年金はいくらもらえるのか、退職金はいくらなのか?退職後の収入を確認したら、続いて老後にどのくらいあれば生活できるのかを考えていきましょう。退職後は現役時代の生活費の70%ともいわれていますが、実際は急に生活費を抑えることは難しいので、ご自身で無理のない範囲で設定してみてください。

2⃣現役期間のマネーイベントを把握し、家計を調整
現役時代に大きな出費がないのであれば問題はないのですが、住宅購入、教育費、車の購入など、家計に負担がかかるようなマネーイベントが予定されている場合は、イベントに必要な資金やタイミングを把握しておくことが大事です。それによって家計をコントロールできますので、無駄な出費をなくすことができます。

3⃣今からできる老後資金の準備方法を考える
イベントに必要な資金が調整できたら、①の退職後の収入・支出から足りないお金を現役期間で積み立てることができるかを考えていきましょう。この積み立てをしていく過程が資産形成となります。資産形成期の事前準備が整ったら、続いては方法です。

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資産形成を始めるためには

資産形成には、大まかに「貯蓄」と「投資」の2種類があります。

「貯蓄」はお金を蓄えることで、銀行預金がこれに当てはまるでしょう。「貯蓄」は預けたお金よりも下回ることはありませんが(ATMでの引き出し手数料などを除けば)、大きく増えることもありません。
一方、「投資」では株式や投資信託の購入がこちらに当てはまるでしょう。「投資」は、当然投入した金額よりも増えることもあれば、逆に下回ることもあります。

「貯蓄」や「投資」を行うにあたり気に掛かるのはリスクとリターンではないでしょうか。

<リスクとリターン>

◆リターン(収益率)

投資によって得られる成果のことで、プラスの場合もあればマイナスの場合もあります。
リターンは「利回り」という言葉でも言い換えられますが、投資で増加した分や損した分を投資元本で割るとリターンが分かります。

例えば、債券を100万円分購入し、110万円で売却したとすると+10%のリターンがあったことになります。一方、債券を100万円分購入し、90万円で売却したとすると、-10%となります。

上記の計算には1年間で得たリターンを計算しましたが、1年間に分配金もある場合は以下のような計算になります。

年利率3%の債券を100万円分購入し、4年後に104万円で売却したとします。
利回り(%)=(売却損益+分配金)÷投資元本÷年数×100
・利子:3万円×4年=12万円
・譲渡益:104万円-100万円=4万円
(4万円+12万円)÷100万円÷4(年)×100=4(%)
利回り4%となります。
*ここでは税金については割愛しています。

◆リスク

一般的には「危険なこと」というような意味で使われますが、金融の場合ではリターンの不確実性の度合いを意味し、「値動きの振れ幅」のことを指します。

リスクとリターンは表裏一体の関係にあります。大きなリターンが見込めそうな投資であるほど、値動きの振れ幅も大きくなり、不確実性が高くなります。つまり、大きな利益につながる可能性もあれば、大きな損失をうむ可能性もあることになります。
貯蓄に関して銀行に預ける大きなリスクはないものの、リターンもほとんど得られません。
投資に関しては、リスクもリターンも存在します。

例えば、株式と債券を例に見てみましょう。
国内株式と国内債券を比べるなら、一般的に株式の方がハイリスク・ハイリターンで、債券の方がローリスク・ローリターンになります。その理由は以下の通りです。

株式投資は「会社に対しての投資」ですので、お金が返ってくる保証はありません。一般的に投資先企業の業績がよくなれば株価は上がりますが、逆に低迷すると株価が下がってしまいます。このように企業の業績によって株価は変動することになり値動きが大きくなります。

一方で債券投資は「国や会社に対してお金を貸す」ことです。債券には満期というものがあり、貸していた先が潰れたりしない限りは、満期が来ると投資していたお金が全額返還されることになりますので、値動きは安定しています。また、保有している間は半年に1回、または1年に1回などの頻度で利息を受け取ることができます。

投資にはある程度元本割れをしてしまうリスクがありますが、このリスクをある程度コントロールすることができます。

まとめ:資産形成のポイント

では最後に、資産形成の事前準備とリスク・リターンの関係を理解できたところで、貯蓄と投資をバランス良く行うためのポイントをご紹介しましょう。

まず、貯蓄と投資の割合ですが、毎年の収支が赤字または黒字ギリギリの方は、家計を見直して収支に余裕を持たせるようにしましょう。 収支に問題がなければ、毎年の貯蓄分の中から投資に回しても良い割合を導き出します。
その際、現在の預金額が生活費の何年分にあたるのかを確認します。
預金額が生活費1年~1年半以上+緊急費用の確保を念頭に置いて、投資額を検討していきましょう。

今の生活が苦しくなるほど節約をして投資にお金を回すのは本末転倒だと思います。無理をせず、少額から始めながらコツコツと資産形成をしていきましょう。

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