フランスの国立電子技術研究機関であるCEA-Leti(原子力および代替エネルギー庁電子技術情報研究所)は、顔認識やその他の特定のパターンを通じてスマートフォンや小型電子機器やさまざまな車載機能をアクティブ化する自律型イメージセンサ技術を開発したと発表した。

この「μWAI(micro-WAY)」と呼ばれる、硬貨ほどのサイズの自律型イメージセンサは、最適化されたアルゴリズムパイプラインと、最適化設計された新しい読み出しおよび処理アーキテクチャを備えている。また、低電力ウェイクアップモードの搭載とコンパクトなサイズを実現することでコストを抑えたという。

CEA-Letiによると、すべての照明条件と88dBのダイナミックレンジに対する自動露出、イベントベースの動き検出機能と特徴抽出機能、ならびに信頼性の高い識別機能を備えたAIベースのオブジェクト認識などを備えたスマートイメージセンサで、数十pJ/ピクセル/フレームの信頼性の高い意思決定が可能であるため、既存システムに比べて優れたパフォーマンスを発揮するという。pJ/ピクセル/フレームは、画像のフレーム内の各単一画像の各ピクセルによって費やされるエネルギーの値で、一般的な実装では、μWAIの約1万倍のエネルギーが必要だという。

今回開発された自律型イメージセンサは、以下のような特徴がある。

  • エネルギー効率:低電力カメラとプロセッサセットよりも1/10000少ない電力消費量
  • プライバシーに準拠したAIベースの認識:ほぼ人間による検出性能(正確さは人間の95%)、
  • ダイナミックに変化する条件で正確な認識を保証するための広い動作照明感度
  • オン状態のCR1025バッテリーで、IoTに必要な3〜6μWの動作で、5年間持続動作

このイメージセンサのアプリケーションとしてCEA-Letiでは、モバイル機器、スマートホーム、スポーツ、エンターテインメントなどのほか、スマートビルディングにおける顔認識、人数カウント、アラームのトリガーといった使い方や、自動車における車内状況認識、ドライバー識別、駐車状況認識、スマートロック解除システムなどが考えられるとしている。

なお、CEA-Letiの産業パートナーシップマネージャーであるAntoine Dupret氏は、「認識エンジンは、動きが検出されたときに顔を認識するように最適化されている。我々はSTMicroelectronicsと協力して、特定用途のスマートイメージセンサ製品を開発し、テクノロジーを他のユースケースに拡張することを検討していく。さまざまなカメラにIPとして認識エンジンを組み込み、パートナーの顧客の要件に合わせてイメージセンサのパフォーマンスを最適化することを目標としている」と述べている。 

  • CEA-Leti

    自律型イメージセンサ「μWAI」の構成図(左)とモジュール(右) (出所:CEA-leti)