AI市場の急拡大はNVIDIAの急成長とメモリー半導体ブランドの大躍進をもたらしたが、ここへきてCPU市場を2分するIntelとAMDに注目が集まっている。

この背景にはAI開発のトレンドが学習から推論へ、対話型の生成AIからより自律性が高いエージェントAIに推移する中、多様なデバイスやAIモデルを統合制御するCPUの役割に注目が移っている構造変化がある。

サーバー用CPUの需要急増で株価が高騰するIntel、高付加価値品へのシフトが必至

この数年、決算発表のたびに多額の赤字を計上してきたIntelだが、直近の2026年第1四半期の発表では、売上高が前年同期比7%増の136億ドルに増収し今後の展開に明るい兆しを示した。

IntelのCEO、Lip-Bu Tanが盛んと強調したのが、サーバー用CPUへの強い需要だ。依然として衰えを感じさせない旺盛なAIデータセンター投資であるが、その内容には構造的変化が起こっている。

Intelによれば、複数のGPUの管理に必要とされるCPUの役割、「GPU対CPU比」に大きな変化が出ているという。AI市場勃興初期に発生した「学習」の分野では、7-8個のGPUのワークロードを管理するCPUが1個という比率であったのが、「推論」のワークロードが増加するにつれてこれが3-4個のGPU対1個のCPU、さらにエージェントAIの開発ではGPU/CPU比がほぼ1対1となっている。x86アーキテクチャーCPU市場をAMDと2分するIntelには明らかな好機である。

ただし、競合のAMDは依然としてIntelが掌握していたx86アーキテクチャーCPU市場でのシェアを奪いつつあり、今回の増収の直接の原因は上述の通りのAI市場での変化を受けて、CPU需要が全体的に拡大している事にあるとみられる。片や、AIアクセラレーター用のHBM(広帯域メモリー)の急激な需要増加に影響を受けて、クライアントPC用のDRAMは供給が非常にタイトでコストも上昇している。この結果、今年のクライアントPC市場においては500ドル以下の低価格帯PC市場が最も深刻な打撃を受けることになり、調査会社のGartner社は今年の総出荷量が10%程度減少すると予測するほどである。

結局、クライアントPC市場では高付加価値のハイレベル価格帯が成長を牽引する状況が続き、CPUもハイエンドの争いとなる。こうなると、クライアントPC比率が60%を超えるIntelの製品ポートフォリオは最も影響を受けやすいことになる。

今回の決算発表でサーバーCPUの増収を協調するIntel幹部の心情は十分理解できる。この数年、NVIDIAやAMDが牽引するAI市場急成長の外側に置かれていたIntelが、やっと十八番であるCPUでその存在感を取り戻した形だ。しかし、経理上のIntelのパフォーマンスは未だに大きな赤字で、ファウンドリビジネスへの投資継続と構造改革に係る大きなコスト増に向き合う状態には変わりがない。

  • IntelのサーバCPU「Xeon 6」

    IntelのサーバCPU「Xeon 6」。左が6700シリーズ、右が6900シリーズ (編集部撮影)

CPUとGPUの両輪で盤石のAMD、高付加価値品で利益倍増

Intelの決算発表から2週間後に第1四半期の決算を発表したAMDはIntelの決算をはるかに超えるパフォーマンスで株価が急上昇した。

目を見張るのが、前年同期比で約2倍にあたる13億8300万ドルという驚異的な純利益の上昇である。両社の決算で明らかな違いは、売り上げ全体に対するデータセンター分野の貢献度だ。Intelが38%であるのに比較してAMDは57%と突出して高い。データセンター分野で売り上げを牽引するのは、Intelが主にCPUであるのに比してAMDはCPU/GPUの両輪で市場に先端品を投入する。

  • 「Instinct MI350P」

    AMDが2026年5月7日に発表したPCIeカード型推論アクセラレータ「Instinct MI350P」 (出所:AMD)

データセンター分野でのCPU/GPUの比率は決算の数字からは解からないが、METAと結んだ大規模なGPUの供給に加えて、Intel同様AI開発での構造変化によるCPU需要の急激な増加という千載一遇のビジネスチャンスをしっかり取り込んだ結果である。この盤石な製品ポートフォリオが55%という異例に高い粗利率を支えている。CEOのLisa Suは発表後のインタビューの中で、AI開発現場におけるCPU需要の上昇についてはIntel幹部と同意見で、CPU/GPUの比率は1対1以上にCPUに傾く可能性を示唆している。サーバー用CPUの市場規模が今後年率35%超で成長し、2030年までに1200億ドルを超えるという強気の見込みを示した。今後のAMDのビジネスの成長に大きな信任を得る形となり、第2四半期の売り上げ見通しも市場予測を上回り株価の上昇につながった。

事業規模比較でIntelの背中が視野に入る現在のAMD

今回の2社の決算発表の比較で愕然とさせられたのが、2社の総売り上げの差である。私がAMDに勤務した1990-2000年頃では、Intelの事業規模はAMDの約5倍くらいの大きな差があり、Intelの存在は圧倒的なものであった。これが、今回の第1四半期の発表を見るとIntelの136億ドルに対して、AMDの100億ドルと、Intelの後ろ姿がもう完全に視野に入る状態となっている。四半期の事業規模比較では、2026年中にAMDがIntelを追い越すという異例の事態になる可能性はまったくないとは言い切れない。しかし、Intel/AMDの競合は他にもある。CPU単体でもAIアクセラレーターを集積したASICでも、x86アーキテクチャーに対抗するArmアーキテクチャーの躍進も迫っており、市場では今後もし烈なシェア争いが繰り広げられる印象だ。

  • IntelとAMDの2016年以降の四半期売上高推移

    IntelとAMDの2016年以降の四半期売上高推移 (Intel、AMDの決算発表を元に編集部作成)

Intelはx86アーキテクチャーの盟主としての強みを生かし、NVIDIA、SpaceX、Googleとの協業も打ち出しており、今後の展開でファウンドリ会社としての実力を発揮するようになれば事態は大きく変化する可能性がある。現在のIntel Foundryは自社製品が主な顧客である。ファウンドリビジネスの立ち上がりは早くても2027年以降であるが、AIがけん引する半導体需要には陰りはなく、Intelの命運は製造技術のできいかんにかかっている。