2026年5月13日~15日にかけて開催されている自治体・公共向けの展示会「自治体・公共 Week 2026」において、京セラが電子投票システムの推進に向けたデモを行っている。

  • 自治体・公共 Week 2026の京セラブースの様子

    自治体・公共 Week 2026の京セラブースの様子

実際に選挙で使われた電子投票システムを関東で初公開

電子投票は現在、地方公共団体の議会の議員および長の選挙について、条例によって公職選挙法の特例(電磁記録投票法)として実施可能となっている。これまでに京セラの電子投開票システム「デジ選」は、総務省の定める適合確認の審査を経て、2024年の大阪府四條畷市市長選挙で実際に用いられたほか、2026年3月に実施された宮崎県新富町町議会議員補欠選挙にも用いられた実績があり、今回、関東地方で初めてのデモ公開となるとする。

  • デジ選
  • デジ選
  • ブース内に選挙の投票所を模した形でデモを行っているデジ選。タブレット上にある候補者の名前を選択し、実際に投票するかを選択すれば完了となる

今回の展示会で持ち込まれた機材は、この2026年3月の補欠選挙で用いられたソフトウェアをベースとしたもの。電子投票というと、ネットワークに投票端末を接続するといったイメージが強いが、デジ選はその真逆で、ネットワークに一切つながらないスタンドアロン端末を投票所に持ち込み、候補者の投票用紙の代わりに端末に表示される候補者の名前をタッチする形で投票を行うという仕組みが基本となる(投票作業ごとにロックがかかり、再投票などの不正ができないような仕組みとなっている)。スタンドアロンであるため、端末には記録用のUSBメモリとSDカードを内蔵。これがいわゆる投票箱となる。USBメモリとSDカードの両方に同時に投票データを記入。仮に、どちらかに書き込みエラーが発生した場合、システムが停止する形で投票不備のアナウンスが出され、正常な書き込み状態への復帰作業が行われることとなる。投票が正しく行われていること、データが不正に書き換えられていないことを担保するための仕組みだという。

投票が締め切られると、端末の施錠が解除され、内部から、USBメモリが外されるが、開票所までは運搬用のジェラルミンケースに封印されて運ばれ、開票所にて選挙立会人の目の前で選挙管理委員が専用PCにUSBメモリを指して、投票データを読み取っていく。デジ選としては、投票端末だけではなく、持ち去りを防ぐための鍵や運搬容器、投票アプリ、開票用PC、集計用アプリなど、選挙に必要な一式をシステムとして提供することで(スタンドアロン運用時のバッテリー切れなどを防ぐことを目的としたポータブルバッテリーも提供するという)、選挙管理委員の負担などを減らす工夫としている。

  • デモでもポータブルバッテリーが設置されていた

    デモでもポータブルバッテリーが設置されていた

デジ選のメリットとしては、投票時の書き間違いや文字を書きにくい人でも手軽に投票ができるという投票側のメリット以上に、選挙管理側の負担を軽減できるメリットが大きい。普通の用紙に記入された候補者の選別の場合、開票所で冗長性を持たせた形で氏名の確認や枚数の確認作業を一票の漏らしも許されない緊張状態で行う必要があり、場合によっては再点検としてすべての票の点検しなおしを行う場合もある。近年でも2025年11月に茨城県で実施された市長選では、2陣の候補者の得票数が同じで、再点検でも変わらず、くじ引きで当選者を決めた事例もある。

同社によるとデジ選を使った場合、USBメモリのPC(USBハブ)への接続から読み取り、抜き取りまで1万票を2~4分程度で終えることができ、不在者投票(測定した選挙では郵送での投票)の票数を計算する作業や、集計作業完了の報告などまで含めた一連の工程完了を40分で終わらすことができたという。

ネットワークに接続されていないため、ハッキングや不正アクセスによる票の操作などのリスクを極力減らせるほか、現行法の規定に則った運用も可能であり、すでに2026年度の活用に向けて複数の自治体が条例改正に向けた動きを見せているとのことで、会場でも多くの自治体関係者が興味を示して、担当者に質問を投げかける様子が見て取れた。

Wi-Fi HaLow対応スマホが年内にも発売へ

また、防災といった観点からは、同社のAndroidスマートフォン(スマホ)「DuraForce EX2」の2026年9月以降に発売予定の新モデルでのWi-Fi HaLow対応がアナウンスされている。

  • 「DuraForce EX2」の2026年9月以降に発売される予定のWi-Fi HaLow対応モデル

    「DuraForce EX2」の2026年9月以降に発売される予定のWi-Fi HaLow対応モデル

Wi-Fi HaLowは、920MHz帯を用いることで、Wi-Fiの弱点である到達距離をキロメートルレベルに拡大することを可能とするもともとはIoTとしての活用を意識して開発された通信技術。そのため通信速度は2.4GHz帯や5/6GHz帯の通信と比べてそこまで速くはないが、到達距離や接続性の良さ、1つのアクセスポイント(AP)に対する接続数の多さなどを特長としている。

京セラでは、Wi-Fi HaLowをスマホに搭載することで、災害時の自治体職員の非常用回線的な使い方ができるとして提案している。キロメートルオーダーでの通信が可能なため、各避難所の込み具合の状況や支援状況などの交換、大画面のデジタルホワイトボードとの連携によるそうした各種状況の表示などといったことも期待できるとする。

同社では、独自のアプリも併せて提供していくことで、業務用端末 兼 緊急時用端末としてのニーズの掘り起こしをしていきたいとしている。

微細加工技術を活用した未来の医療を提案

このほか、同社ブースではマルチファンクションプリンタ(MFP)を活用した公共サービスの提案や、微細加工技術を活用した将来の医療に向けたソリューション提案が行われている。

特に初出展となる開発中のオンサイト遺伝子検査プラットフォーム「Seltes Platform(セルテスプラットフォーム)」は、どこでもPCRをはじめとする詳細な検査を可能とするもので、半導体微細加工技術を活用して作られたそれぞれの疾患に対応するマイクロ流路デバイスを専用カートリッジ(現状4chでの解析を予定)に収め、それを小型の分析デバイスで解析し、その結果を同社の提供するオンラインデータベース上に蓄積。クライアント認証と暗号化によるセキュリティ管理により、かかりつけの医療機関などとのデータの共有したり、オープンデータ化する仕組みを作成することで、自治体や個人での利用も可能にするなど、ハードウェア、ネットワーク、ソフトウェアと一貫した検査データの提供を目指すプラットフォームの構築を目指している。

  • Seltes Platformのハードウェア群

    Seltes Platformのハードウェア群。疾患識別用のマイクロ流路チップを搭載したカートリッジを分析デバイスに差し込むことで分析が始まる

重要なポイントは、収集するデータフォーマットが定まっていさえすれば、解析デバイスそのものは同社のものでなくでも良いという点(解析に必要なカートリッジについては、精度や品質の問題があるため、基準ができるまでは同社が担うことになる)。そのため、ハードウェアについてもオープン化を検討していきたいとしている。

  • Seltes Platform
  • Seltes Platform
  • 分析自体は専用カートリッジを差し込むだけで行うことができる。分析時間は現在1時間ほどだが、30分をターゲットに改良をしていきたいという。ちなみにSeltes Platformの語源は、Self TestのためのPlatformを略したものとのこと

ただし、まだ同社としても持ち運びが可能なサイズの検査デバイスの実証機は開発中で、2026年度内の完成予定(精度はラボでの研究としては、一般的なサイズのPCR検査装置と同程度でできることを確認済みという)で、2027年にそれを用いた実証実験、その結果を踏まえて2028年度にサービスインまで持って行きたいとのことで、実際に実証実験に協力してくれるパートナー企業や医療機関などを幅広く募集し、有用性や実際のビジネスモデルの構築などを図っていきたいとしている。

このほか、医療分野としては京都府立医科大学リハビリテーション医学教室と共同研究を進めているスマートグラスを用いた歩行リハビリテーションシステムの紹介も行っている。

  • スマートグラス

    スマートグラスの活用方法として歩行リハビリにおける理学療法士の現場での指導の精度向上の検証が進められている

これは歩行リハビリの指導を行う理学療法士が活用するスマートグラスで、リハビリ患者の足首に取り付けた加速度/角速度センサからの歩行データと指先に付けたバイタルセンサをスマホで取得。その歩行データや心拍数などをスマートグラスに表示することで、両手を自由にしたまま患者のリハビリ支援を可能にしようというもの。あくまでデータの収集・処理はスマホ側で行い、スマートグラスはそうして得られたデータの表示デバイスという位置づけである。

現状のスマートグラスとしてはバッテリーの消費を抑えることと視認性の向上を目的に緑色の文字表示のみで、実際の駆動時間は8時間ほどだという。共同研究では、スマートグラスを用いた方が患者の状況を数値的に把握でき、適切なリハビリを指導することができるようになり、リハビリが捗る傾向が確認されているという。

今後、技術革新が進めば、複数色での表示(最適範囲であれば緑、その範囲を逸脱していたら赤といったイメージ)によるリハビリ指導のさらなる促進なども考えられるほか、軽量化によるリハビリ用途以外の活用なども考えられることから、スマートグラスの用途開拓につながることが期待される。