仏大統領エマニュエル・マクロン大統領のベルギーへの訪問に際して、フランスの原子力および代替エネルギー庁(Commissariat à l'Energie Atomique et aux Energies Alternatives:CEA)所管の国立電子技術・情報研究機関であるCEA-Leti(Laboratoire d'électronique des technologies de l'information)は、ベルギーの独立系半導体・ナノテク研究機関imecと、今後の欧州産業発展のカギをにぎるバリューチェーンと位置付けた人工知能(AI)と量子コンピューティングの2分野で戦略的に連携することで合意し覚書を交わしたと発表した。

欧州の2つの代表的ナノテク研究機関であるCEA-LETIとimecの連携は、これら2分野の技術開発において世界で主導的役割を果たしたいという欧州勢の願望を示している。2つの研究機関がともに強化しようとしている研究は、人間の脳の構造を模したニューロモルフィック・コンピューティングおよび量子コンピューティングの開発、テスト、実験に焦点を当てることになっている。これにより両研究機関の業界パートナーが幅広いアプリケーション分野(個人用ヘルスケアやスマートモバイル機器から新たな製造およびエネルギー分野まで)で、技術革新するために使用できるデジタルハードウェアコンピューティングツールボックスを提供されるようにしたいという。

  • CEA-Leti CEOのEmmanuel Sabonnadière氏とimec EVPのLudo Deferm氏

    研究協業の覚書にサインするCEA-Leti CEOのEmmanuel Sabonnadière氏(左)と、imec EVPのLudo Deferm氏(右) (出所:Leti/imec)

エッジの人工知能開発が重要課題

クラウドでデータを集中処理するのではなく、エッジで分散処理することは、大型異種コンピューティングシステムに適用するAI技術にとって重要な課題である。エッジ人工知能(eAI)は、一般に、インテリジェントな動作をハードウェア装置(例えばチップ)上に局所的に表示するコンピュータシステムを指す。eAIはとりまく環境を分析し、特定の目標を達成するために必要な措置を講じることができる。このため、エッジAIは、経済発展の主要な推進けん引役になると見込まれている。さらに重要なのは、eAIが、医療分野では、従来、治癒できなかった病気の治療を可能にしたり、農業分野で環境の影響を最小限に抑えることに至るまで、多くの社会的課題の解決につながることが期待されている点である。

Leti CEOのEmmanuel Sabonnadière氏は、「欧州の2つのマイクロエレクトロニクス研究機関は、協力し合って、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)と信頼できるエッジAIの両面で競争力を高め、最終的には航空宇宙、防衛、自動車、インダストリー4.0、ヘルスケアの技術革新を通じ、欧州産業の繁栄をもたらしたい。Letiはimecとの契約に先立ち、世界最大の応用技術研究機関である独Fraunhofer-Gesellschaftの マイクロエレクトロニクス部門とも研究協業で提携をしており、これら3つの研究機関のすべては、欧州がAIやHPCやサイバーセキュリティへ適用するための新しいデジタルハードウェア分野で最前線の地位を維持することに全力で取り組む」と述べている。