都市計画にもさまざまな考え方があります。「スマートシティ」もそのひとつですが、言葉の意味や実際どういったものなのか正しく理解できていないという方は多いでしょう。そこでこの記事では「スマートシティ」の意味やメリット、デメリットなどを解説します。
スマートシティの意味は? どうして注目されている?
スマートシティとはどういった考え方、取り組みなのかをご紹介します。
スマートシティとは
スマートシティとはICTを活用して都市のマネジメントを行い、全体最適化を図るという取り組みのことをいいます。
ICTとは「インフォメーション アンド コミュニケーション テクノロジー」の略で、日本語では「情報通信技術」です。つまり、電話やインターネットなど、そしてチャットツールやSNSといったハード、ソフトなどをまとめてICTと呼びます。
スマートシティとはネットなどを活用して都市の抱えるさまざまな問題を解決しながら、すべての人にとって理想的な生活を行える都市作りを目指す取り組みのことです。
例えば、渋滞情報などを集約してスマホやナビなどに通知することによって交通の流れをスムーズにする、センサー技術を活用した子供や高齢者の遠隔地からの見守りといった、すでに実用化されている取り組みもスマートシティの施策のひとつであると考えることができます。
スマートシティが注目される理由
これまでの都市計画は最初から理想的な具体像を描いて道路や建物を配置し、区画整理などを行いました。従来の方法でもしっかりと機能する都市を構築することができますが、一度構築された都市は簡単に変えることができません。
そのため、時代とともに急速に変化する人口の増減などに対応できなくなったり、人々が都市側に合わせて生活したりすることによって無理が生じるというケースも少なくありませんでした。
それに対してスマートシティであれば、ICTを活用することで住民と行政が連携し、より柔軟な都市計画の立案と運営が可能です。
すでに作った道路や建物を変化させることはできませんが、状況に応じて今後の計画を変更することはできます。こうして、多くの人にとって理想的な都市の構築を実現していくのです。
全体最適化とは
スマートシティの目的として「全体最適化」という言葉が使われています。
スマートシティにおける全体最適化とは、暮らしている住民がそれぞれの価値観に合った生活を送ることのできる都市機能の実現です。
今日では、価値観も多様化しているので、求められる都市像はより複雑なものとなっています。だからこそ、より柔軟な都市計画や運営が可能なスマートシティが求められるようになっているのです。
スマートシティを実現するために
スマートシティを実現するためにはどうすればいいのか、必要な技術や仕組みなどを紹介します。
必要な技術
スマートシティを実現するために必要な技術として最初に挙げられるのがCPSです。これはさまざまな場所の状況や動きをデータとして収集し、仮想空間で解析を行います。そして、現実の空間を最適化するというシステムのことです。
求められる仕組み
都市によって置かれている状況は異なっています。そのため、スマートシティの取り組みは画一的に行うことはできません。それぞれの都市単位で柔軟に対応することのできる仕組み作りが重要となります。
持続可能な都市にするために
スマートシティの仕組みは一度作ってしまえばそれで終わりというわけではありません。都市での人の生活に終わりはなく、常にベストな状態を持続する必要があります。
当然、その間も状況や人の価値観は変化し続けることになるので、常に柔軟な対応を継続しなければならないのです。
現在のスマートシティの取り組みは、今の都市が抱える問題を解消するためにベストな方法であったとしても将来もそうであるという保証はありません。場合によっては対応しきれなくなったり、新しい技術が誕生したりで、より良い方法が見つかるかもしれないということです。
スマートシティの実現性
スマートシティに必要なICT技術は基本的にすでに実用化されています。
スマートシティの実例:トヨタのウーブンシティ
すでに日本を代表する企業であるトヨタ自動車が、スマートシティの開発に動き始めています。それが「ウーブンシティ」です。
2020年末に閉鎖したトヨタ自動車の東富士工場の跡地を利用して、東京ドーム15個分の範囲で街づくりを進めることが発表されています。
このウーブンシティは、さまざまなサービスやモノが情報によって繋がっており、すべての人にとって理想的な都市とすることを目標としています。
スマートシティのデメリット
スマートシティのメリットは、それぞれの人が自分の価値観にマッチした生活を送ることができるという点が挙げられます。人や物の流れもスムーズになりますので、無駄やストレスのない生活を送ることが可能です。
では、デメリットとしてはどのようなことが考えられるでしょうか。
スマートシティのデメリットは、人の動きなども含めてあらゆる情報が収集され、分析されるため、監視されているというイメージを持たれる可能性です。人によっては、自由が制限されているような感覚に陥るかもしれません。
また、デバイスやシステムにトラブルが発生すると、すべての都市機能が停止してしまうといったリスクがあります。スマートシティのシステムは非常に複雑なものとなるため、大規模なトラブルが発生すると復旧にかなりの時間を要する可能性もあります。
スマートシティについて正しく理解しよう
スマートシティはこれからの都市計画や人の暮らしにおいて、とても重要な取り組みのひとつです。すでに実際に動き始めている取り組みですので、近い将来私達の生活を大きく変えることになるかもしれません。