具体的なアドバイス

それでは具体的なアドバイスをみていきましょう。

夫婦で家計収支状況を確認する

お互いに収入が多めの共働き夫婦のなかには「稼いでいる割に貯蓄がない」というご夫婦がいらっしゃいます。今回ご相談いただいたKさんも、世帯収入は月65万円と多めなのに、毎月の支出も同額。ボーナスもほとんど消費でまったく貯金ができていないとのことですから、家計改善が必要です。

支出が多く、貯蓄がない共働き世帯には、主に次のような傾向が共通してみられます。

  • 夫婦ともに仕事が忙しくて外食が多い
  • 家計について話し合う時間があまりない
  • お互いに収入がある安心感からか、互いに遠慮なく支出する
  • 家計管理や貯蓄管理は相手がやっていると思い込んでいる

Kさんもこれまで家計のことをあまり考えていなかったようですが、家計の状況を把握して、将来のためにしっかり貯金をしていきたいとKさんが気づけたことは、家計改善に向けて一歩を踏み出せたことになります。しかし実際に家計改善していくためには、奥様を巻き込んで一緒に実行していく必要があります。

まずは、奥様と家計について話し合う機会を取ってみてください。その際、具体的な金額を把握できるよう、世帯全体の収支と各費目(食費、光熱費など)の支出額を書いて提示してあげるといいでしょう。もしかしたら奥様自身も支出が多いことはわかっていても、何にどれだけ支出しているのか把握されていないのかもしれません。

通常、支出状況を確認した後は「本当に必要な支出なのか」「贅沢な支出あるいは無駄使いなのか」を考え、支出を削る対策をします。しかし、奥様の高級志向や「働いているご褒美」と称した買い物が多いことを考えると、奥様にとってはどれも必要な支出と言って、無駄な支出と思わないかもしれません。

そこで、もうひとつご夫婦で一緒に考えていただきたいのが、将来必要となるお金をリストアップして、そのお金をどう用意していくかです。たとえば、近いうちに必要となるマンションの修繕費や、お子様の中学・高校・大学進学費用など。もちろん老後資金も必要ですが、まずは近い将来の資金から始めてみましょう。これも、たとえば「2年後に修繕費100万円」など、金額と時期の目安を具体的に書いていってください。

このままの消費を続けていては貯金できませんから、よほど収入を上げるか、支出を削って貯金するかしないといけないことがわかるはずです。たとえば、お子様の習い事は本当に必要か、外食回数を減らすことはできないかなど、支出を削る方法も一緒に考えられるようになるのではないでしょうか。

夫婦で支出と貯蓄の役割分担を決め、毎月確認し合う

共働き夫婦の家計分担方法に特定の決まりはありません。しかし、Kさんからお聞きする内容や支出状況を拝見する限りでは、夫婦の各人が世帯収入に貢献する割合と支出する割合のバランスが取れていないように思えます。

毎月の支出とボーナスを合わせた年収ベースで見ると、世帯年収1,220万円のうち、約6割がKさんで、約4割が奥様です。住居費や光熱費、子どもの教育費などは夫婦の共同支出であっても、個人の支出分で考えると奥様に関する支出のほうが多いように思えます。

仕事と育児・家事を両立するのは大変なことですし、ご褒美の程度は家事や育児の負担の大きさによっても差をつけるのもいいと思いますが、この機会に家計の収入に対するや支出や貯蓄の役割分担を決めてみてはいかがでしょうか。

たとえば、家族みんなのための費目は2人で収入に応じて出し合い、Kさんまたは奥様個人の支出は各自が出すという方法もあります。先に奥様にとってはどれも必要な支出かもしれないと述べましたが、自分のものは自分で出すようにすれば、出費をもう少し減らしたいと思うようになるかもしれません。

そこでひとつ気になるのですが、ママ友たちとのパーティー費やご褒美と称した出費は食費や被服費などに含まれていないでしょうか。もしも含まれているようであれば、家族のための支出分とは分けるようにするといいでしょう。

なお、支出の分担を決めるだけでなく、貯蓄の分担も決めましょう。将来必要になるお金を夫婦で協力しながら準備できるよう、各人が毎月貯金していく額を決めるのです。そうしないと、「自分で稼いだお金だから自分の好きなように使う」となりかねません。月1回はお互いに進捗状況を確かめ合うことも大切です。

生活にシェアやサブスクを取り入れる

実は一度身についた贅沢や高級志向は改めるのが難しいと言われます。とくに奥様が高級志向なのは職場や近所の影響もあるようですし、ママ友とのパーティで披露し合うこともあるのかもしれません。そのような場合、支出欲を抑えるのが難しく、金額を決めて毎月貯金をしても、貯金を取り崩して購入する可能性もあります。

そこで、シェアリングサービスやサブスクを利用しながら月々の支出額を抑える工夫を試してみてはいかがでしょうか。たとえば、洋服やアクセサリーなら毎月定額で、違うアイテムを数点身につけることができます。購入するよりは安い場合も多いようです。

車も週に1~2回の買い物での利用なら、カーシェアを利用する方法もあります。一般車から高級車まで、車種もいろいろ選べます。時間単価で比べると所有するより高めの場合が多いですが、あるカーシェアサービスを参考にすると、プレミアムクラスを2時間利用すると1回当たり3,500円程度です。仮に毎週1回、月に4回利用するとしたら月の車関連支出は1万4,000円。今より1万6,000円節約できる計算になります。

ただし、サブスクは家電や家具などのインテリアアイテム、お花やスイーツなど魅力的なものも多く、毎月一定額で利用できるお得感も手伝って、不要な支出が増えるリスクもあります。家計費目のなかで利用するモノ・サービスや月々の予算を決めておくことも大切です。

せっかく収入が多いのですから、夫婦間でお金の使い方や貯め方などの考え方を共有し、強い家計をつくっていけるよう願っています。


今回の相談内容と皆さんの家計簿に似ている部分があるようでしたら、ぜひともFPの方のアドバイスを参考にしてみてくださいね。