女優の松たか子が主演するカンテレ・フジテレビ系ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(毎週火曜21:00~)の第6話が18日に放送され、第2章へと続く大きな山場を迎えた。松演じる大豆田とわ子と、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平が演じる3人の元夫たちが同時に人生の転機にぶち当たり、そのトリガーを市川実日子が好演する「かごめ」が引いたのだ。

この展開こそ、実は坂元裕二脚本による完全オリジナル企画である同作の主軸のテーマを知り得るものである。カンテレ佐野亜裕美プロデューサーが解説してくれた――。

  • かごめ(市川実日子/左)と大豆田とわ子(松たか子)=『大豆田とわ子と三人の元夫』第5話より (C)カンテレ

    かごめ(市川実日子/左)と大豆田とわ子(松たか子)=『大豆田とわ子と三人の元夫』第5話より (C)カンテレ

■丸3日をかけて撮影したシーン

「第6話は思い入れの深い回でした」と佐野Pが話し出した。とわ子がかごめの死後、かごめの部屋で残った食材から料理を作るシーンについて、「人が生きていくこと、死んでいくことはこういうことなんじゃないかなと思いました」と語る。

多くの映画やドラマで活躍するフードスタイリストの飯島奈美氏が参加し、第1話でとわ子の1人目の元夫の八作(松田龍平)が作る愛情入りの「柳川風うどん」が、見る者の記憶に残ったように、第6話ではこの料理のシーンで、かごめの急逝と向き合うとわ子の心情を印象づけた。

第6話は、とわ子不在の部屋で八作、鹿太郎(角田晃広)、慎森(岡田将生)の3人の元夫たちがギョーザを作りながら、早良(石橋静河)、美怜(瀧内公美)、翼(石橋菜津美)それぞれから次々と振られていくシーンも、畳み掛ける会話劇で坂元脚本ならでは醍醐味があった。実は、丸3日をかけて撮影が行われたという。

■コロナ禍の今だからこそ「かごめ」が作り出された

こうしたロマンチックコメディ作品としての展開がある一方で、急展開とも言える“かごめの死”が描かれたのは理由があった。それが、佐野Pが「深い思い入れがある」と話したことにつながる。

「2016年に知人が突然亡くなってしまう経験をしたこと、そしてコロナ禍で誰にも会えず1人で亡くなっていく方のニュースを見て、残された人間の背中を押せるようなドラマを作りたいという思いがありました。だから、かごめは『大豆田とわ子と三人の元夫』を作るきっかけを背負っているとも言えます。市川さんにはオファーの段階から、6話でかごめが死を迎えることを説明していました。コロナ禍の今はある意味、誰もが死に直面し得る毎日です。いつ自らに、周囲に起こるか分からない。身近な人を大切にするという当たり前のことに気づかされる日々だからこそ、かごめという登場人物が作り出されました」

第4話でかごめがとわ子にさりげなく話した「あなたみたいな人がいるってだけでね。あっ、私も社長になれるって、小さい女の子がイメージできるんだよ」というセリフは、第7話(25日放送)から始まる第2章で試練を与えられるとわ子に突き刺さってくるようだ。

オダギリジョーが演じる新たなキャラクターとの縁が気になるところで、3人の元夫たちとの関り合いもますます目が離せない。

  • オダギリジョー(左)と松たか子 (C)カンテレ

●佐野亜裕美
1982年生まれ、静岡県出身。東京大学卒業後、06年にTBSテレビ入社。『王様のブランチ』を経て09年にドラマ制作に異動し、『渡る世間は鬼ばかり』のADに。『潜入探偵トカゲ』『刑事のまなざし』『ウロボロス~この愛こそ、正義。』『おかしの家』『99.9~刑事専門弁護士~』『カルテット』『この世界の片隅に』などをプロデュースし、20年6月にカンテレへ移籍。『大豆田とわ子と三人の元夫』を担当する。