「小職」はビジネスシーンでも使われるかしこまった言い方で、初めてみると読み方や意味などわからない人も多いのではないでしょうか。本記事では正しい「小職」の意味や使い方、使える立場の人や言葉の適切な登場シーンなどくわしく紹介していきます。
「小職」の意味とは
「小職」とは、官僚が自分のことを謙遜する場合に使う一人称です。ここでは、「小職」の意味を詳しく解説します。
官職の方が謙遜して使う一人称
官僚と聞くと政治家などを思い浮かべる方もいますが、官職とは国の予算策定や法案策定などに直接関わるのが仕事の国家公務員のことで政治家ではありません。国の予算案や法律案の策定にかかわる官僚はかしこまった言葉を使う機会が多く、「小職」もその中のひとつです。
しかし、近年は国家公務員だけでなく、IT企業や大手商社、民間企業でも役職や管理職の高い位がある方が使っています。そのため、必ずしも国家公務員限定の言葉ではないということを覚えておきましょう。
女性の官職の方も使える
似た意味合いの「小生」(しょうせい)は男性のみが使用できる言葉ですが、「小職」は女性でも使える言葉になっています。昔は国家公務員に女性が少なかったこともあり、国家公務員が使う言葉と聞くと男性しか使えないイメージがありますが、現在は女性の国家公務員の方も増え女性の「小職」呼びも馴染んできました。
しかし、世間では「小生」や「小職」の一人称が気持ち悪いと感じている人もいます。これは「小生」や「小職」を使う人は社会的に高い立場ということを自覚している人が多く、無意識のうちに上から目線になっているのではないかと思うようです。謙遜しているつもりがマウントを取っているように受け取られてしまうこともあるので注意しましょう。
読み方は「しょうしょく」
「小職」の読み方は「しょうしょく」です。「こしょく」ではありませんので、読み間違いに注意してください。
「小職」の使い方・例文
実際に会社で「小職」を使うシーンを例文で紹介します。基本的には第一人称として使用するので「私」と同じ使い方で大丈夫です。
「小職までご連絡をお願いします。」
こちらは自分宛てに連絡が欲しい場合に使用する言葉です。部下や目下の方に対してメールや電話で連絡が欲しいシーンがあったら、「私」を「小職」に置き換えてみましょう。
「まだまだ未熟な小職ではございますが~」
少し硬めの文章や集まりなどで使うことができる文です。部下への一斉送信メールで感謝を伝える際や、部下との飲み会の挨拶としても使うことができます。
「資料の提出は、小職までお願いします。」
自分が部下に頼んだ仕事や部下が持っている書類を自分に提出してほしい場合に使います。部下に対して威圧的に思われないように自分をへりくだることで親近感が生まれ、より強い仲間意識がはぐくまれるかもしれません。
「小職」を使う際の注意点
ここでは小職を使う場合の注意点を紹介します。
平社員は「私」が無難
「小職」は、企業においては役職がある地位のある人が使うため、平社員の方は「小職」を使わず「私」(わたくし)を使いましょう。
もともと「小職」とは目下の人や部下に対して役職を持っている人が自分のことをへりくだる際に使う一人称です。そのため取引先に使用したり、目下の人がいない方が使ったりするのは間違いなので気をつけましょう。
目上の人に対して使わない
「小職」は役職や管理職についている、位が高い人が部下や目下の人に対し自分をへりくだる際に使う言葉です。そのため、自分より目上の方や位が高い上司に対して使うと相手を目下に見ていると受け取られてしまい非常に失礼な行動に繋がってしまいます。
一人称はついつい口癖のようになってしまいますが、上司や目上の人の前でポロっと出てしまわないように気をつけましょう。
「小職」の類語・言い換え表現
「小職」は部下や目下の人に対する一人称でしたが、シーンや使う相手によって別の一人称を使い分けることができます。「小職」の類語や言い換え表現も覚えておきましょう。
小生
「小生」(しょうせい)とは主に文章の中の一人称として使われる言葉で、「小職」のように位の高い立場の人が部下や目下の相手に自分をへりくだるときに使います。しかし、「小職」は男女関係なく使うことができるのに対し、「小生」は男性しか使えない一人称です。
「小生」も「小職」同様、「自分自身のことを上に見ていて相手のことを下に見ている人」や「いちいち立場にこだわる面倒な人」などとマイナスに思われる可能性があります。使うシーンや相手を選びましょう。
信頼関係がない方に対しては「私」(わたくし)の一人称で接するほうが無難です。「私」の一人称は誰でも使えて丁寧な印象を与えてくれます。
当方
「当方」(とうほう)は自分ひとりを示す一人称ではなく、所属している会社や部署全体のことを指す際に使う言葉です。会社や部署に所属している場合は「当方」を使うことができますが、フリーランスなど1人で活動している方は「私」が適切になります。
「当方」を使うときの注意点としては、自分ひとりの意見では無くなるため発言の責任が重大になるという点です。もしも一人称が「当方」の際に取引先とトラブルが起きてしまった場合、相手には会社全体の意見として伝わってしまい大事になってしまう場合があります。細心の注意を払って一人称を選択するようにしましょう。
当職
「当職」(とうしょく)とは弁護士や行政書士など「士業」を仕事とした方の一人称を表します。普通の会社員は使うことができないため、指定の職業の以外の方が使っている場合はすぐに改めましょう。
また、「当職」には弁護士などの一人称という使い方の他に「この職業」を表す使い方があります。一人称以外にも使うことができるので気を付けましょう。
弊職
「弊職」(へいしょく)とは「弊社」と「小職」を組み合わせた自分をへりくだって使う造語という説があります。主に文章で使われる言葉で企業や組織の中だけの言葉です。ビジネスや外部の仕事では使わないようにしましょう。
本職
「本職」(ほんしょく)とは「その道を生業にしている人」という意味と、公務員の一人称という意味の2つがあります。公務員以外が自分のことを「本職」と表した場合は誤った表現となります。
下名
「下名」(かめい)とは「下に記載した名前」という意味と、「自分をへりくだっていうときの一人称」の意味があります。
下名は男女とともに使える便利な言葉ですがあまり浸透されていないため、「下に記載した名前」の意味でとらえる人が多いでしょう。
「小職」は使う相手や場面を選ぶ言葉
「小職」という一人称は官僚の方や国家公務員の方が使っていた言葉です。しかし近年は、民間企業でも役職や管理職の高い位がある方にも使用されるようになっています。
「小職」は、位が高い人が部下や目下の人に対し自分をへりくだる際に使う一人称です。そのため適切ではないシーンや相手に使うと、マイナスな印象へとつながってしまいます。正しい意味を知って使い分けるようにしましょう。