「さとり世代の部下と職場でうまくいっていない」という悩みや「さとり世代の社員への接し方に苦労している」といった悩みを抱えている方は多くいます。生まれた時代や育ってきた環境が違うだけで、考え方や行動がガラリと変わってしまうため、さとり世代の言動が全く理解できずにストレスがたまってしまうのも無理はありません。
この記事では、さとり世代について解説します。さとり世代が生まれた背景や特徴を知ってコミュニケーションエラーを無くし、ビジネスを円滑に進められるようにしましょう。
さとり世代とは
「さとり世代」とは、現実的で高望みをしない、無欲な現代の若者気質を指す言葉として、インターネット掲示板の「2ちゃんねる」で生まれ、広く拡散された言葉です。2013年の流行語大賞にノミネートされたことにより、インターネットの域を超え、世間一般に広く浸透し始めました。
そんな「さとり世代」という言葉は、若者の「現実を見て、さとりを開いているかのよう」な様子が由来となっているといわれています。
さとり世代の年齢は? いつからいつまでに生まれた人のこと?
「さとり世代」は主に、1987年~2004年頃に生まれ、2002年~2010年度に行われていた「ゆとり教育」を受けた世代のことを指すといわれています。
2024年時点の年齢が20歳~37歳に当たる層で、ひとくくりに「さとり世代」と言っても、20代~30代を含む幅広い年齢層となっています。
一般的に「さとり世代」といわれている年代は上記の年代ですが、実は「さとり世代」に当たる年代の定義は曖昧で、「ゆとり世代」の次に生まれた世代が「さとり世代」だという説も存在するようです。
いずれにしても、「現実的で高望みをしない無欲な世代」ということがポイントとなります。
さとり世代が生まれた背景
まるで現実をさとっているかのように無欲で堅実思考な「さとり世代」は、どのようにして生まれたのでしょうか。「さとり世代」が生まれた背景には、「時代」が大きく関係しているといわれています。
「さとり世代」が生まれ育った時代の特徴として、バブル崩壊やリーマンショックといった世界的大不況や、阪神淡路大震災、新潟中越地震や東日本大震災などの大規模な自然災害が頻発していたことが挙げられます。
そのため「さとり世代」は、幼い頃から厳しい現実と向き合う機会が多く、目の前で起きる悲惨な現実を自分で処理しながらうまく生きてきたのです。
このような環境で過ごした経験により、夢や希望を抱き高望みをするよりも、「今を平和に生きる」という平凡な幸せを願うようになったといわれています。
さとり世代が育ってきた環境
「さとり世代」が育ってきた環境として、世界的大不況や自然災害など負の面もあります。しかし、高度経済成長を終えた日本に生まれてきた世代とあって、モノやサービスが充実しており、欲しい時に欲しいものが簡単に手に入れられた、恵まれた世代です。
そのため、昔の人と比べると幼い頃から比較的豊かな暮らしができており、この環境が「さとり世代」の価値観やパーソナリティーに大きく影響しているともいわれています。
さとり世代とゆとり世代の違いとは
有力な説では「ゆとり世代」も「さとり世代」の中に含まれるとされていますが、説によっては「ゆとり世代」の次に生まれた世代が「さとり世代」であるともいわれています。
この説によると、「ゆとり教育」を受けたか受けていないかがこの2つの世代を区別するポイントです。省エネやコスパ重視という点においては、「ゆとり世代」も「さとり世代」も同じと言えます。
しかし「さとり世代」は、政治的な判断によって取り入れられた「ゆとり教育」の効果が得られなかった「ゆとり世代」を間近に見てきた世代です。その影響もあり、他人の言動に影響されずに「自分の判断で本当に必要なものを見極め選び取る」という特徴が強く表れているともいわれます。
さとり世代とZ世代の違いとは
Z世代とはアメリカで生まれた言葉で、「ジェネレーションZ」から来ています。さとり世代やゆとり世代のように明確な年代の定義はないようですが、1990年後半~2000年代に生まれた人のことだとされています。
生まれたときからデジタル技術に慣れ親しんでおり、さとり世代やゆとり世代よりさらにインターネットの世界を身近に感じているとされています。SNSによるコミュニケーションが生活に組み込まれているのも大きな特徴。Z世代を意識したマーケティングでは、SNSを活用したものが多く見られます。
さとり世代の特徴
「さとり世代」が生まれた背景や環境が少しわかってきたところで、次に「さとり世代」によく見られるとされる特徴について、詳しく見ていきましょう。
デジタルネイティブ
「さとり世代」によくあるとされる特徴の1つ目は、「デジタルネイティブ」という点です。幼い頃からインターネットが普及し、携帯やパソコンなどの電子機器が身近にあったことから、ネットからありとあらゆる情報を得ています。
一方で、インターネットのマイナスな面もきちんと理解しており、ネット上の情報を1から100まで全て信じるのではなく、自身のフィルターに通し、正確な情報や信ぴょう性のある情報を見極める能力にもたけているとされています。
無欲で冷めている
「さとり世代」によくあるとされる特徴の2つ目は、情熱がなく無欲で冷めているという点です。大きな夢を抱いてそれに向かって汗水流すというような、泥臭いことは好まないとされています。「さとり世代」は理想を語ったり夢を抱いたりするどころか、とても現実的で、生きていくために最低限必要なことだけをこなし、要領よく生きているといわれているのです。
「今を平和に生きる」ことをモットーとしているので、基本的に欲がなく、現状の生活に特に不自由していなければ、恋人が欲しいという感情も生まれないとも。「さとり世代」からすると、恋愛はむしろ、平凡な日常を脅かす脅威とも考えられるでしょう。
マイペース
「さとり世代」によくあるとされる3つ目の特徴として、マイペースという点が挙げられます。これは、人のことよりも「常に自分にフォーカスしている」ため、他人にあまり興味がないということです。
相手に合わせることなく、毎度自分の考えや気持ちを重視して行動するため、周りから「マイペースな人」と認識されてしまうことも珍しくないといわれています。
現実主義のミニマリスト
「さとり世代」によくあるとされる4つ目の特徴は、無駄を省くという性質です。本当に必要なものを見極める力がたけていることから、実用性があり、必要最低限のものをそろえる傾向にあります。
「ミニマリスト」という生き方が浸透しているのも、物が多すぎて管理するのが逆に面倒臭いという「さとり世代」特有の考え方によるものと考えられています。
ストレスフリーを追い求めている
「さとり世代」によくあるとされる5つ目の特徴として、ストレスフリーという性質が挙げられます。「さとり世代」が何よりも望んでいるもの、それは「ストレスフリーな生活」とされます。
育つ過程において、両親が日々ストレスを抱えながら生きている様子を嫌というほど見てきた「さとり世代」は、成功して裕福になることよりも、気持ちに余裕を持ってストレスなく生活することを重視するとされます。
さとり世代の働き方・仕事観
特有の価値観をもつ「さとり世代」にとって「働く」とはどういうことなのでしょうか。ここでは「さとり世代」によく見られる働き方の特徴や、マインドセットを紹介します。
会社への帰属意識が低い
「さとり世代」は、会社への帰属意識が低いとされます。「〇〇会社の〇〇さん」としてではなく、「〇〇さん」という個人での認識として働いている人が多いようです。
やらなければいけない仕事だけを効率よく終えたら、あとは自分の時間です。「業務外の付き合いで行く上司との飲み会は労力の無駄で、それならば明日の仕事のために家でゆっくり休むほうがいい」と考える傾向にあります。
会社のために仕事をしているというよりも、自分のスキルを伸ばすために働いているという認識のほうが強いようです。
コスパ重視で省エネ思考
「さとり世代」の働き方2つ目の特徴は、コスパ重視で省エネ思考であることです。これは、無駄なことが大嫌いとされる「さとり世代」特有の考え方で、必要最低限の仕事を、いかに効率よく終わらせるかを常に考えているといわれています。
お金よりもプライベートの時間を重視する
「さとり世代」の働き方の特徴に、お金よりもプライベートの時間を重視するという点があります。
昭和の時代は、出世することや高いお給料をもらうことが成功とされ、そのためにできる限りの努力をしていた人も多いでしょう。しかし、欲がない「さとり世代」では、仕事でストレスを抱えながらお金をもらうより、必要最低限のお金さえもらえれば、あとは自分の時間を楽しむほうが幸せでうれしいことと考える人が多いようです。
さとり世代社員の上手な指導方法
「さとり世代」の独特な価値観や考え方について理解できたところで、実際にどのように人間関係を構築していけばいいのか、職場でのトリセツを紹介します。
程よい距離感を崩さない
「さとり世代」は、自分のペースやパーソナルスペースを侵害されると嫌悪感を抱く人が多いようです。プライベートと仕事は基本的に別のものとして分けるため、仲良くなろうとしてプライベートの領域にまで踏み込むのはNGです。
精神論を持ち出さない
「さとり世代」には、精神論や根性論は通用しないと考えた方が無難でしょう。省エネやコスパを重視するとされる「さとり世代」が一番嫌うのが、感情に訴えかけてくるようなことを言う人です。アドバイスや仕事のことは、論理的かつ端的に話すことを心がけましょう。
時間をかけて少しずつ信頼関係を構築していく
そんな「さとり世代」とは、一生仲良くなれないのかというとそんなことはありません。「さとり世代」は、相手の態度や成果を慎重に観察しているといわれています。信頼した相手には心を開くはずなので、急いで距離を縮めようとせずに、時間をかけて少しずつ信頼関係を築いていくことが大切です。
さとり世代の特徴を知って上手に付き合っていきましょう
生まれた時代や育ってきた環境が違えば、パーソナリティーや価値観も大きく変わってきます。
マイペースで気が遣えないと思われがちな「さとり世代」ですが、もちろん良いところ、見習うべきところもたくさんあります。価値観の違いを拒絶したり批判したりするのではなく、受け入れてうまく共存していくことがとても大切です。