「対症療法」とは、目の前の症状に応じてその症状を軽減するために行う処理のことです。ただ、「対処療法」と誤って使われることがあまりに多く、正しい漢字を知らない人も多いでしょう。
もともとは症状の緩和や痛みを抑えるという意味の医学用語ですが、ビジネスシーンでも広く使われる言葉です。本記事では、対症療法の正しい表記や意味、使い方、英語表現などについて詳しく説明します。
対症療法の意味
対症療法は「目の前の状態に応じた処理や処置」のことです。もともとは医学用語で、病気の原因そのものを取り除くのではなく、痛みなど表向きの症状を軽減するものです。
対症と同じような意味の言葉に「対処」もあり、対処法という言葉も一般的です。しかし、あとに「●●療法」と続けたい場合は対症療法とするのが正解です。
対症療法の由来
前述のとおり、もともとは医学用語として生まれた対症療法。今では実生活で使うこともしばしばあります。
しかし対症療法は即効性を重視したもので、問題そのものを解決するものではない、いわゆる一時しのぎというニュアンスも含みます。あまりいい意味で使われないことを理解しておきましょう。
対症と対処の違い
対症と対処の違いも明確にしておきましょう。
たとえば、虫歯が痛むときに飲む痛み止めは対症療法です。痛み止めで虫歯そのものは治りませんが、痛みは一時的に治まるからです。発熱している場合は熱を下げる、食欲がない場合は胃腸薬を処方するなど、現れている症状を軽減する試みが「対症」になります。
一方、「対処」も「ある事柄や情勢に対し適切な処置を行う」という意味では、対症とさほど違いはありません。「緊急事態に対処する」「対処すべき問題」などという表現も多く見聞きするでしょう。
ただし、繰り返しになりますが「●●療法」と続けたいときは対症を選び、対症療法とするのが正しい表現です。
対症療法を正しく使った例文
対症療法を使った例文をご紹介します。
「痛みはとれますが、あくまでも対症療法なので病気が治ったわけではありません」
対症療法は一時的な処置であり、たとえ症状が和らいだとしても病気そのものが治っているわけではありません。
「対症療法に頼らず、食生活も改善しましょう」
対症療法に加え食生活の改善など、病気の治療にはさまざまなアプローチがあります。
対症療法の関連語
もともと医学用語のため、関連語も基本的に医学用語です。
姑息的療法
姑息的療法(こそくてきりょうほう)は、病気の原因を取り除くのではなく、現れている症状を緩和する治療法。対症療法と意味は同じです。ただし、一時しのぎという意味の「姑息」はマイナスイメージのある言葉です。誤解を避けるためにも、対症療法を使うのが無難です。
対症療法の反対語
次に反対語をご紹介します。
原因療法
原因療法は、病気の原因そのものを取り除いて根治を目指す治療法です。対症療法よりも原因療法の方が望ましく見えますが、残念ながら原因不明の症状に原因療法は使えません。
対症療法は即効性があるのに対し、この原因療法は効果が出るまでに時間がかかるのが一般的です。
根治療法
根治療法は、病気の元となる原因を取り除き、完治を目指す方法のことです。意味は「原因療法」とほとんど変わりません。
対症療法の英語表現
「対症療法」の英語表現をご紹介します。
・symptomatic treatment
「Symptomatic Treatment of the Influenza」(インフルエンザの対症療法)
「対症療法」は医学用語なのでビジネスシーンで使う機会はあまりありませんが、英語力を高めるためにも覚えておきたいところです。
対症療法を正しく使おう
対症療法は、もともとは医学用語で「目の前の症状を軽減する処置」のことです。ビジネスシーンにおいても、根本的な対策ではなく表面上の問題に対応するときに使います
しかしそこには一時しのぎという悪いニュアンスも含むため、使う際は慎重に。この機会に正しい意味と使い方を理解しておけば安心ですね。