バレーボールの女子日本代表は5月1日、東京五輪のテストを兼ねた国際親善試合で中国と対戦した。世界ランキング一位の強豪を相手に、第3セットは終盤までもつれる展開に持ち込んでいる。試合後には監督、選手らが今後の課題を口にした。

  • 国際親善試合~東京チャレンジ2021にて、日本代表は中国と対戦した

東京2020に向けた試金石

バレーボール女子日本代表にとって約2年ぶりの国際大会とあり、多くのファンが開催を心待ちにしていた本試合。しかし折から東京都に発出されていた緊急事態宣言により、残念ながら無観客での開催となった。

会場となった有明アリーナでは、東京2020大会でバレーボール(オリンピック)と車いすバスケットボール(パラリンピック)が実施される予定。本番の会場でいち早くプレイできるとあり、両国の選手からは感謝の言葉も聞かれた。

  • 会場となった有明アリーナ

  • 東京2020大会が実施される施設の中で、国産木材の使用量が最も多いとされている

オリンピックと同様、ベンチ入りできるメンバーはわずか12人のみだった。選手の選考基準について、チームを率いる中田久美監督は「試したい選手、確認したい選手がおり、彼女らを入れたときにチームのバランスがどうなるか見たい」と説明していた。

試合前、キャプテンの荒木絵里香選手は「世界一の中国と本番の体育館で対戦できる、とても貴重な機会。持てる力をすべて出し切ります。サーブで攻め、強みのトータルディフェンスを機能していきたい」、副キャプテンの古賀紗理那選手は「3月からスタートした合宿で積み上げてきたものを、試合でしっかり出していければ。スパイクで点を取るだけでなく、拮抗した場面での声がけなど、チームがひとつになる行動を大切にしていきます」と意気込みを語っている。

  • 国歌斉唱で君が代を歌う火の鳥NIPPONの12人

中国の壁の高さに圧倒される

日本代表に初選出された、最年少の籾井あき選手が先発セッターをつとめた第1セット、試合は序盤から中国ペース。日本は相手の高いブロックに攻撃を阻まれ、スピードのあるサーブにゆさぶられた。

  • 先発メンバーに迎えられる籾井選手

平均身長(リベロを除く)は日本の178.7cmに対して、中国は190.8cm。シュ・テイ選手(198cm)、エン・シンゲツ選手(201cm)らの壁を攻略できないまま、最初のセットを16―25で落としてしまった。

  • サーブを放つ、中国のシュ・テイ選手

  • キャプテンの荒木選手を中心に立て直しを図る

続く第2セットも中国が主導権を握る。石川真佑選手の勢いのあるサーブや黒後愛選手の鋭いスパイクが決まり、また途中出場の長岡望悠選手、石井優希選手の奮闘もあり追い上げるが、最後は中国に突き放され、このセットを18―25で失った。

  • 共に2000年生まれの山田二千華選手(右)と籾井選手(左)

  • タイムアウトを取り、選手に指示を飛ばす中田監督

第3セットは頼れるエースに成長した古賀選手、そして共に所属チームの久光スプリングスで切磋琢磨してきた長岡選手、石井選手が躍動。この3人がトータル22点を奪う働きを見せ、中国を相手に初めてリードを奪う展開に持ち込んだ。

  • スパイク、フェイントが冴え渡った石井選手

  • この日はスパイクで7点、ブロックで3点を奪う活躍だった長岡選手

中国の猛追にも辛抱強く耐える日本代表。同点に追いつかれても集中力を保ち続け、ついに石井選手のスパイクでセットポイントを握る。しかしその後、中国に追いつかれると、ゲームは常に先行しながらもジュースに持ち込まれるジリジリとした展開に。

  • 互いに声をかけあい、集中力を高めていく日本代表

なんとか勝ちきりたい日本代表だったが、一進一退の攻防を最後に制したのは、地力の差で勝る中国だった。古賀選手のスパイクが高い壁に阻まれてこのセットを29―31で落とし、セットカウント0―3でストレート負けを喫した。

世界ランキング一位の中国との対戦を終えて

試合後、囲み取材に応じた中国チームを率いる郎平監督は、日本側のコロナ対策を評価。「安心して練習でき、試合に集中することができました。オリンピックが開催されても、有意義で素晴らしいものになると思います」と話した。なお選手団は中国に帰国後、3週間の隔離生活に入るという。

そうしたマイナス面を踏まえつつも「素晴らしい体育館で練習と試合ができ、強いディフェンス、速いオフェンスを武器にする日本代表と対戦することで学ぶことも大きいと考えた」と郎平監督。今回の来日遠征には満足した様子だった。

  • メディアの囲み取材に応じる、郎平監督(左)とシュ・テイ選手(右)

このあと、荒木選手、長岡選手が囲み取材に応じた。大怪我から復帰した長岡選手は「久しぶりにレベルの高い相手との対戦になりました。これまで積み重ねてきたことがどこまで通用するか、また自分の身体は耐えきれるのか、チャレンジできたことが収穫だったと思います」と振り返った。

荒木選手は「中国は現在、世界でもトップのチームです。2019年のW杯では力のなさを痛感しましたが、今日は競る展開まで持っていけた。良くなっている部分があるので、課題と収穫をしっかり整理して、次の大会に繋げていきます」と前向きな姿勢を示した。

  • 囲み取材に応じる荒木選手

これまで中国のブロックを想定して、男性コーチを相手に練習を重ねてきたという日本代表。実際に中国と対戦してみた感想を聞かれると、長岡選手は「空中のスピード感、手の出方など感覚と違うところがありました。しっかり頭のなかにイメージを残すことができました」、荒木選手は「ブロックが抜けてもボールが落ちない。最後に手が伸びてくる粘り強さを感じました」と話していた。

  • 長岡選手

最後に中田監督が囲み取材に対応。中国と対戦できた意義について「自分たちの練習がどこまで進んでいるのか、現在の課題は何か。世界ランク一位の中国と対戦することで、自分たちの立ち位置、通用する部分としない部分が明確になりました。明日からの合宿で、さらに課題を抽出していきます」と話していた。

  • コロナ禍が続く中、来日した中国代表に感謝の言葉を述べた中田監督