男女混合パフォーマンスグループ・AAAのSKY-HIがアーティスト人生を懸け、1億円以上の私財を投じて始めた、ボーイズグループオーディション『THE FIRST -BMSG Audition 2021-』。日本テレビ系情報番組『スッキリ』(毎週月~金曜8:00~)と動画配信サービス・Hulu(毎週金曜20:00~完全版を独占配信)の強力タッグでその様子が届けられている。

例えるなら、“NiziUの男性版”だが、彼が打ち立てた野望はそれ以上とも言えるものだった。「楽しみでもあり、怖くもある。けど、日本のボーイズグループにはまだまだ勝算がある」と、SKY-HIが語り始めた――。

  • ボーイズグループオーディション『THE FIRST -BMSG Audition 2021-』を主催するSKY-HI

    ボーイズグループオーディション『THE FIRST -BMSG Audition 2021-』を主催するSKY-HI

■大手事務所では決められた色に染まってしまう

『THE FIRST -BMSG Audition 2021-』は、SKY-HIが約1年前に立ち上げたばかりのマネジメント/レーベル「BMSG」主催による肝煎りのプロジェクト。「ボーイズグループの根本的な改善なしに、日本のエンタテイメントはこのままでは日の目を見ない」――人気グループ・AAAのラップ担当でもあるSKY-HIが当事者目線からもそんな危機感を覚え、番組化を探り始めたものだった。

日本から世界に通用するボーイズグループを作り出すことを具現化させるために用意した自己資金は、1億円以上。並々ならぬ覚悟を感じるが、SKY-HIは至って冷静沈着だった。

「自腹を切ったことで、話を聞いてもらえるようになったんですよ。1期目の新興零細企業ながら、門前払いを受けることなく、各所が耳を傾け始めてくれました。10~20代のアマチュアの方々が行き場のなさや、やりがいのなさを抱えていることそのものに問題があると思っていましたから、腹をくくるというほどのことではありませんでした」と、経営者としての顔も見せながら言い退けた。

むしろ、熱い思いで語り始めたのは、日本の芸能界に蔓延る問題点だった。

「強い個性を持つアーティスト性が高い人は、日本の芸能界にハマりづらい現実があります。『○○系』って言葉があるように、大きい芸能事務所であればあるほど、ルックス、発言、歌い方そのものまで決められた色に染まってしまいます。日本にはそれを良しとする風潮すらある。音楽が好きで音楽に好かれているという人よりも、音楽を使って自分をアピールすることが上手い人の方が注目を集める傾向もあります」と指摘する。

さらに、韓国との違いにも言及。「日本は音楽に愛されているボーイズグループをあまり生み出せていないと思うんです。ゼロとは言い切れませんが、これが海外や韓国との大きな差であって、太刀打ちできない理由にあります。じゃあそう言った才能のある子は韓国に行けば、可能性を見出せるのかというと、韓国語や英語を一から学び、ビザを取ることは決して簡単なことではありません。そんな現実に直面し、傷づき、コンプレックスを抱え、どこに行ってもうまくいかなかったけれど、音楽が好きでスキルも高いという子たちが今回、集まってきてくれたんですよ」

そんな枠にハマらないボーイズこそ、SKY-HIが求めていた可能性だった。

  • 『THE FIRST -BMSG Audition 2021-』より

■オーディション参加者との半端ない“近さ”

このプロジェクトで求める人材は「3つのFIRST」である。歌やダンスの基礎能力「クオリティファースト」、楽曲制作や振り付けを自発的に考える力「クリエイティブファースト」、そして表現力や個性を表す「アーティシズムファースト」。書類選考の1次審査を経て、全国6か所でオンラインを含む対面形式で行った2次審査の時点で、「思った以上に“3つのFIRST”のどれかを強く持っている方々が多かった。最終的にものすごい形に仕上がるだろうとその時点で確信が持てました」と振り返る。

選考では、我慢できずに思わずその場で合否を伝えてしまう場面も。「早く伝えないと、学校行事の予定もあるだろうし、バイトも入れてしまうでしょ。分からないままでは予定を立てることもできず、かわいそうだし。極力早めにスケジュールを押さえないとって。単純に思ってやったことです」

プロデューサーとして、参加者の面々に惚れ込んでいることがわかると同時に、SKY-HIの人柄がにじみ出ている。

  • 『THE FIRST -BMSG Audition 2021-』より

また、多くのオーディション番組で見られるスタイルとも違う。SKY-HIは審査中でもリズムに乗り、一緒に踊り出す。参加者との距離感の近さが半端ない。

「経営者として、プロデューサーとしては自分も1年目。夢や目標を掲げている上では彼らと一緒。感謝されることもあれば、こちらも感謝することもあって然るべき。だから、壇上から彼らに話したくないと思いました。それに、既存の日本の芸能界の枠にハマっていないのではないかという思いもあるのか、少し自信を失いやすい子も多いので、ちゃんと自分は見ている、聴いている、感じているということを伝えたいと思いました。頭ごなしにいきなり批判から入っても、何の改善につながりませんしね。大切なことは受け入れて、評価すること。信頼関係をまずはこちらから作っていく必要があると思ったのです」