楽天証券は20代前半の若者たち限定のオンラインセミナー「知らないと損! 20代から始める資産形成」を開催した。

このセミナーは、満15歳から25歳に提供しているメンバーシッププログラム「楽天学割」の中から20歳から25歳限定に向けて実施したもので、楽天証券研究所の篠田尚子さんが資産形成の始め方や知識についてレクチャーを行った。

  • 20代も知るべき資産形成の始め方とは?

資産形成のために、知っておくべき知識は?

講師を務めた篠田尚子さんは、FPの資格を持ち、投資信託のスペシャリストとしてメディアなどにも登場している楽天証券経済研究所のファンドアナリスト。今回は、20代前半だからこそ知っておきたい知識や投資の始め方について解説した。

人生を生きていく上でお金が必要になるのは公然の事実。では具体的に、どのような資金が人生では必要になるのだろうか。篠田さんは「人生の三大資金」として「教育資金」「住宅取得資金」「老後資金」の3つを挙げた。

この中で特に注目したいのが「老後資金」だ。昨今の報道などで「老後2,000万円問題」などが話題になり、気にしている人も少なくないだろう。しかし、篠田さんは「報道を聞いているとそうは思わないかも知れないが、実は日本は諸外国に比べ公的な社会保障が手厚い国」だと話す。

「国民年金/厚生年金」では、老後生活のための生涯の所得保障である老齢年金が受けられ、もっとも重要なこととして“障害の保障”である点が特徴的であるとした。そして、万が一障がいを負ってしまったときの生活保障である障害年金も受けることができる。

そして、医療費の負担のほか傷病手当、高額療養費、出産育児一時金などが保障される「健康保険」、失業給付、育児休業手当、介護休業手当などが給付される「雇用保険」、この3つを、必ず覚えておきたい「三大社会保障」だとした。

これらの保障があることを理解したうえで、いざという時への備えを三段階で準備すると良いという。

ひとつは、すぐに引き出すことができる「現預金」だ。目安となる目標は月収の6ケ月分。いきなりは難しければ、まずは月収の3ケ月分を目指すべきだとした。給与振込口座とは別に、金利の高いネット銀行などを活用し、普段から使う口座と貯めておく口座を分けておくのがポイントだという。

もうひとつは、今の自分を守るための「保険」。保険に関しては、ライフステージに合わせて見直していくことがもっとも重要で、若いうちは無理に高額な保険に入る必要はない。まずは保険料の安い都道府県民共済などから始めるのが良いとした。

最後は、自分で準備できる任意の「年金」。すぐにでも始めたいのが、「確定拠出年金(iDeCo)」だ。まずは最低額でも構わないが、掛金は上限いっぱいを目指すべきだという。そして余裕が出てきたら「つみたてNISA」に取り組んでいくのがベストだと話した。

  • 資産形成の基本は「器」の使い分け 提供:楽天証券

これからの資産形成を考えていく上で、「備える」「増やす」の2つの観点を使い分けると良いと篠田さんは解説する。「備える」に当てはまるのは「預貯金」と「保険」。この2つはいざという時の資産であり、これらを使ってお金を増やしていくのは現実的には厳しい。

一方の「増やす」に当てはまるのが「iDeCo」や「NISA」「特定口座」。特に、「iDeCo」と「NISA」は節税効果が高く、優先的に取り組みたいものだと話した。

ただ、資産を作るために一気にすべてを始める必要はない。始められるところからスタートし、徐々に増やしていくようにアドバイスした。

投資信託の基礎知識

ところで、資産形成を考える際、なぜ投資信託の基礎知識が必要になるのだろうか。篠田さんは「投資信託という金融商品は、資産形成のベースとなるといっても過言ではない。日本に限らず、世界のグローバルスタンダードとなりつつある」と述べ、その理由として「積立と相性が良いから」だと話した。

投資信託については今後、高校の家庭科の授業にも取り上げられるが決まっており、金融の知識としてベーシックなものになっていくという。

投資信託とは、運用のプロが複数の投資家から資金を集めて運用し、その運用効果を投資家に還元する仕組みの金融商品のこと。現在、日本には6,000を超える投資信託が存在しているというが、大きく3つのタイプに分けることができる。

  • 投資信託とは? 提供:楽天証券

「インデックス型」は、日経225やニューヨーク・ダウなど、特定の市場平均インデックスに連動した運用成果を目指すもので、例えるのであれば、安定してどこでも同じ味が楽しめる“チェーン店”タイプ。

「アクティブ型」は、インデックス型に比べ高いリターンであったり、低リスクを追求したりと、柔軟な運用をすることができるもの。こちらはシェフのこだわりが光る“ビストロ”のようなタイプだ。

「バランス型」は、それ1本で完結する商品で、株式、債券、リートなど、複数の資産や地域に分散投資を行うもの。これは"ワンプレーとランチ"や"シェフのおまかせコース"のようなタイプと言えるだろう。

これら3つのタイプは、優劣があるわけではなく、組み合わせてポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を形成していくもの。

短期間で高いリターンがあることに越したことは無いが、それが優良商品というわけではない。大きく下がらないということも重要な点で、真に優良な投信信託ほど、相場急変時のリスクコントロールがうまく、安定して右肩上がりになるものが優良な商品ということも、しっかりと覚えておきたいポイントだと話した。

その点、積立投資であれば、基準価格が戻り切らなくても相応のリターンが期待できるという。

すぐにでも始めたいiDeCo、余裕ができたらNISA

そして、若年層がすぐにでも始めた方がいいというのが確定拠出年金(iDeCo)だ。

iDeCoは、決まった額の掛金を毎月積み立てて、資金を自分で運用する制度で、運用したお金は60歳以降に年金か一時金の形で受け取ることができるもの。

すべて自由に自分で決めることができ、年金なので規定の年齢がくるまで受け取ることができないが、節税効果が高いものとなっている。拠出時には所得控除、運用時にも全額非課税、受取時にも退職所得控除や公的年金控除があり、三段階の節税メリットがある。

  • 確定拠出年金制度の仕組み 提供:楽天証券

また、つみたてNISAも節税メリットがある。積立で購入した投資信託の分配金、値上がり益の全額が非課税になる制度で、投資枠は年間一律40万円、非課税期間は最長20年となっている。

  • つみたてNISAの仕組み 提供:楽天証券

iDeCoは60歳までずっと運用できるのに対し、つみたてNISAは最長20年となっていることから、iDeCoは始めるのが早ければ早いほどよい。まずはiDeCoから最低価格でも始めた方がよいとした。篠田さんによれば、月々の積立額は、すべての積み立てが収入の15%~20%となるのが目標とすべき金額だという。

  • 各制度と投資信託、組み合わせ方のコツ 提供:楽天証券

篠田さんは、自分が利用できるさまざまな制度を理解し、特性にあった投資信託を組み合わせて運用して、資産形成をしていってほしいと若者たちに向けてアドバイスした。

取材協力:篠田尚子(しのだ・しょうこ)

楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
慶應義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。国内銀行で資産運用関連業務に従事後、ロイター傘下の投信評価機関リッパーで市場分析担当、ファンドアナリストとして活躍。2013年より現職。