電話対応や名刺交換、メールの送り方など、社会人として働くうえで求められる「ビジネスマナー」。慣れなかったり細かかったり、これって必要なの? と思うことはあるかもしれません。

しかし、ビジネスマナーを知っておくと、相手の信頼を得たり、ビジネスが円滑に進むのも事実です。新入社員が知っておきたい「ビジネスマナーのコツと必要性」を、書籍『ひと目で要点理解 最新版ビジネスマナー解体新書』(ナツメ社)を監修した日本サービスマナー協会 マナー講師の岩崎智子先生に伺いました。

お話を聞いた方
岩崎 智子先生
1992年に全日本空輸株式会社入社後、客室乗務員として乗務。1996年退社後、渡米。2002年 帰国後、司会・MCとして結婚式、式典をはじめ各種イベントを担当。多くのお客様と接する中でマナーの大切さを感じ、講師を志す。2009年より、日本サービスマナー協会認定プロフェッショナルマナー講師として、各種研修を担当する。

ビジネスマナーを知るメリットとは?

――「ビジネスマナー」とひと口に言っても、様々なものがあります。自分が受け手に立った時、「そこまで細かく気にするの!?」と思うこともありそうですが、ビジネスマナーを覚えるメリットとは何でしょうか?

「ビジネスマナー」と聞いて、"難しそう、堅苦しそう"というイメージを持ったり、決まりごとが多いなー! と感じることもあるでしょう。でもビジネスマナーの根底にあるのは「相手のことを不快にさせない」ことです。相手を思ったときに、自分がどう行動すればよいかの指針と言えます。

ビジネスマナーは絶対やらなければいけない! というわけではなく、「これが基準だ」と知っておくことで、相手の状況に合わせて対応することができるんです。今回はこのやり方が合いそうだなとか、ちょっと変えてみようかなとか、対応を知っておくと自信にもにつながります。

――まずは「一般的な基本を知っておく」ということですね。

そうですね。同じ会社の方や、取引先などさまざまな人間関係がありますが、知らないうちに不快な思いにさせて、相手が受け取る印象が悪くなるのはもったいないこと。ビジネスマナーに沿わなかったからといって罰則を受けることはないですが、"会社の代表"としてお客様に失礼なことをすると、会社がダメージを受ける可能性があります。

社会人に限らずフリーランスの方にも言えることですが、人とのつながりは大事ですし、信頼を得ることで仕事の幅も広がっていくはずですよ。

  • 『ひと目で要点理解 最新版ビジネスマナー解体新書』(ナツメ社)より引用

ここはチェック! 新社会人が押さえておきたいビジネスマナー

――多くの新社会人に向けてマナー研修をされている岩崎先生ですが、新社会人が「悩みがち」「失敗しがち」なビジネスマナーはありますか?

まずはわからないことや報告しづらいことが多い環境なので「報告・連絡・相談」、それから慣れない「メールのつくり方」、また「メモを取ること」あとは「うっかりに注意」ですね。

仕事をスムーズにする「報告・連絡・相談」

――いわゆる「ホウ・レン・ソウ」ですね

仕事相手とコミュニケーションを取ってスムーズに進めるためにも、報告・連絡・相談は徹底しましょう。新人の頃は、勝手に何か判断して「相談してよ」と言われることもあるかもしれませんが、トラブル回避や損害を押さえることにもつながります。

▼報告
仕事の指示を受けた上司、先輩に、仕事の状況をこまめに報告します。相手も進捗状況が分かり、安心します。また、ほかの仕事の調整や準備もできます。

▼連絡
仕事の状況や情報を共有するために、社内外の関係者への連絡をします。メール、電話など、内容や緊急性に応じて適した伝達ツールを使います。

▼相談
わからないことがあるときや、問題が起きたりしたときは、上司に相談します。仕事に関する悩みや、職場の人間関係に関しても、一人で悩まず相談を。
『ひと目で要点理解 最新版ビジネスマナー解体新書』(ナツメ社)より引用

――上司や先輩に相談したいと思っても、忙しい様子だと声をかけづらいです。

上司や先輩に相談するときは、自分の意見を持って相談してください。「どうしたらよいでしょうか」と投げるのではなく、自分で考えた意見を相手に渡して、どうでしょうか? と聞いた方が良いですね。

また、タイミングを見て声をかけることは大事ですね。相手の様子を観察して、会議や食事から帰ってきた時や、飲み物を飲んでいるときなどを見計らって声をかけましょう。その際「●●の案件で報告があります」と用件を話したうえで、相手の都合を聞くことも大切です。

――失敗の報告や謝罪は言いづらいですね……。

確かに失敗の報告はやりにくいものですが、「クッション言葉」を活用して言いづらいことも報告しましょう。

▼クッション言葉
ビジネスでは、依頼や拒否、催促、謝罪など、言いづらいことを相手に伝えなくてはいけないシーンが少なくありません。しかし、それをストレートに伝えると、相手を不快にさせるばかりか、誤解や摩擦が生じる原因にもなります。そのため、ビジネスで多用されているのが「クッション言葉」です。用件の前や前後に沿えることで、ストレートな表現をソフトにします。
『ひと目で要点理解 最新版ビジネスマナー解体新書』(ナツメ社)より引用

  • 『ひと目で要点理解 最新版ビジネスマナー解体新書』(ナツメ社)より引用

メールは出す前にチェックしよう

――社会人になって、メールのやりとりが増えた! という方も多いと思います。

簡潔で読みやすく作るのがポイントです。また、送信前に見返すことを心がけましょう。初歩的なところでは誤字脱字があったり、敬語の使い方や言い回しがおかしかったり、丁寧すぎて回りくどいことも。最初は先輩にチェックしてもらうのもよいですね。

▼メール作成のポイント
・件名から、パットわかる内容にしよう
・冒頭で名前を名乗ろう
・メールの構成は「挨拶・内容・締め」の3つに分けるとわかりやすい
・読みやすいよう程よく改行しよう
・添付資料の添付漏れは大丈夫?
・送信前に、誤字脱字などチェックしよう

メモを取ろう&うっかりにも要注意!

――ここからは、細かいけれど心掛けたいことですね。まずは「メモを取る」ことです。

上司から指導を受けるときや、電話応対をするときなど、要点を書き留めることは習慣にしたいです。重要なことを忘れないのはもちろん、頭の整理もできるので、メモを取るクセづけはおすすめです。

――「うっかりにも要注意」とのことですが、どんなうっかりが起こりがちですか?

エレベーターなど、公の場で仕事のことをしゃべらないよう注意しましょう。ついリラックスして同期と機密情報の話をしたら、先輩がいた……なんていうエピソードもありました。また、SNSへの投稿も同様です。自分自身にも会社にとってもデメリットとなるので、気をつけたいものです。

――最後に、新社会人の方にメッセージをお願いします。

未知の世界で不安なことは多いと思いますが、みんなが通ってきた道です。新人の頃は失敗しても許してもらいやすいので、前向きな姿勢で、勇気をもってチャレンジしてくださいね。

また、まずは今の生活に慣れるのがいっぱいいいっぱいだと思います。周囲の方の名前を覚えてコミュニケーションを取って、仕事もわからないことばかりの状況で……空気を読みすぎて上司や先輩に質問できないなんてこともあるでしょう。そんなとき、仕事だけでなくプライベートでも仲間を作って、会社の外でも直接的な人との関わりを作ることもおすすめしたいです。

――岩崎先生、ありがとうございました!

参考書籍:ナツメ社『ひと目で要点理解 最新版ビジネスマナー解体新書』(1,320円)
日本サービスマナー協会 岩崎 智子=監修
社会人に必要なビジネスマナーを詰め込んだ一冊。テレワークなど新しい働き方にも対応しており、新入社員からベテラン社員、フリーランスの人まで活用できる。豊富なイラストとともに、要点をしっかり解説し、ひと目でビジネスマナーの大切なポイントが理解できる。