クッキーとビスケットは、スーパーやコンビニでも買える身近なお菓子として、子供から大人まで親しまれている定番の焼き菓子です。大手のコンビニなどでも独自商品として、さまざまな路線のクッキーも開発しています。
材料や作り方、見た目もとてもよく似ているふたつのお菓子ですが、厳密にはどのような違いがあるのか知っていますか。
柔らかくて甘みのあるものがクッキーで、硬くて塩気のあるものがビスケット、といった曖昧な使い分けをしている方も多いのではないでしょうか。それぞれの違いを使い分けられるよう、比較しながら紹介します。
クッキーとビスケットの違いとは
クッキーもビスケットも、厳密にいうと同じもの。本来ビスケットとは、主に小麦粉、砂糖、油脂、乳製品から作られる焼き菓子のことで、これにはクッキーのほかクラッカーや乾パン、パイなども含まれます。
ただし日本では、公正取引委員会による取り決めのなかで、ビスケットのなかで以下の条件に当てはまるものを、クッキーと呼んでもよいとされています。
【ビスケットのなかで「クッキー」と呼べるもの】
- 糖分と脂肪分が全体の40%以上を占めるもの
- 見た目が「手作り風」であること
なぜこのような区別ができたのでしょうか。じつは上記の取り決めができたのが昭和46年のことで、当時の日本ではクッキーはビスケットに比べて高価なものだとされていました。そのため、ビスケットのなかでもとりわけクッキーが区別されたのだと考えられています。
クッキーとビスケットは日本語として定着していますが、もとは外国から来た言葉です。由来や日本での歴史とともに言葉の意味を見てみましょう。
クッキーとは
クッキーは、小麦粉にバターと砂糖、卵、牛乳、香料などを加えて焼いた菓子という意味のアメリカ英語です。
日本でクッキーという名称を最初に使ったのは泉屋という菓子店だとされています。創業者夫妻がアメリカ人宣教師の妻にクッキーの作り方を教わり、そのレシピをもとにして作ったクッキーを、1927年に京都で販売したのが始まりとされています。
ビスケットとは
ビスケットとは、小麦粉にバターと牛乳、卵、砂糖、香料などをまぜて、一定の形に焼いた菓子を意味する英語です。クッキーのほか、クラッカーや乾パン、パイなども含まれます。
日本には1543年、種子島に漂着したポルトガル人から鉄砲やカステラとともにビスケットやボーロなどの南蛮菓子が伝わってきました。病気の子供が喜んで食べたことから発想を得て、風月堂が「乾蒸餅」という名前で日本初のビスケットを開発したとされています。
クッキーとビスケットの由来や食感の違い
具体的なクッキーとビスケットの違いはあるのでしょうか。くわしく見ていきます。
クッキーはアメリカ、ビスケットはイギリスから
クッキーの発祥地はアメリカです。小麦粉を使用した焼き菓子全般を総称してクッキーと呼びます。元々はオランダ語の「小さな焼き菓子」を意味する「koekje(クーキェ)」がクッキーの語源の由来です。
アメリカに渡ったオランダ人が「koekje(クーキェ)」を作り売ったところ人気を博しました。すぐにアメリカ全土へと広まり、英語の「cookie(クッキー)」という言葉が誕生しました。
一方でビスケットは、イギリスが発祥地であり、航海や遠征のための保存食として2度焼かれたパンを持っていっていたことが起源となっています。「2度焼かれたもの」を意味するラテン語の「bis coctus(ビス・コウトゥス)」がビスケットの語源です。
保存食で親しまれていたビスケットですが、現代のビスケットに近いものが作られるようになったのは16世紀に貴族が食べるようになってからです。かの有名なフランス王妃マリーアントワネットもビスケットを愛し、宮廷内でビスケットを作らせていたといわれています。
クッキーはしっとり、ビスケットはサクサク
クッキーは口どけがよくさっくりとした食感が特徴です。グルテンの少ない薄力小麦粉を使い、砂糖や脂肪を多くし水分を少なめに配合します。短時間で練って焼き上げることで、しっとりとした歯ざわりに仕上げます。
ビスケットはクッキーに比べると少々硬いのが特徴です。比較的グルテンの多い中力小麦粉を使用して、砂糖や脂肪を控えめに、水分は多めに配合して、時間をかけて練って薄く焼き上げます。それによって、食べた時サクサクとした硬めの歯ざわりになっています。生地の表面にガス抜きの小さな穴がポツポツと開いているのも特徴です。
クッキーは糖分と脂肪分が40%以上のもの
くり返しになりますが、クッキーもビスケットの一種。主に小麦粉、砂糖、油脂、乳製品から作られたものがビスケットで、そのなかでも糖分と脂肪分が40%以上のものを「クッキーと呼んでもよい」とされています。
クッキーとサブレ、スコーンとの違いとは
クッキーとビスケットは似ていますが、その他にも似た焼き菓子はたくさんあります。その代表として、今回はサブレとスコーンを例に挙げて紹介します。それぞれの違いを知って、さらに知識の幅を広げましょう。
サブレとは
サブレはフランスが発祥の焼き菓子で、バターの風味が強く、サクッと軽い食感が特徴です。
一般的には、クッキーやビスケットよりも小麦粉の量が少なく、ベーキングパウダーではなくショートニングやバターが使われています。そのため、より軽くサクサクの食感になっています。その食感が砂に似ていることから、フランス語で砂を意味する「sable(サブル)」が語源になっているという説があります。
フランスには、さらに記事が薄くほろりと崩れるような口どけのラングドシャや、バターをたっぷり使ったガレットという焼き菓子もあります。
スコーンとは
スコーンはスコットランドが発祥で、イギリスのティータイムに欠かせないパンの一種です。元々はフライパンなどで平たく成形させたパンを焼き、その後に切り分けて食べたビスケットのような食べ物が原型だといわれています。
生地は外側はサクッとして中はしっとり、ふんわり。食べた時にザックリとした食感があるのが特徴です。プレーンのものから、ドライフルーツやナッツ、チョコレートなどを生地に混ぜ込んだものなどがあり、世界中のさまざまな国で食べられています。
クッキーとビスケットの海外での呼び方
日本では、クッキーとビスケットは独自のルールで呼び分けられていますが、海外ではどのように呼んでいるか知っていますか? それぞれの発祥の地であるアメリカとイギリスでの呼び方を学んでいきましょう。
アメリカの場合
アメリカでは、焼き菓子全般をクッキーと呼びます。ビスケットという言葉もありますが、そちらはパンのような焼き菓子のことを指すため意味が異なります。
イギリスの場合
イギリスにはクッキーという言葉はなく、焼き菓子全般をビスケットと呼びます。アメリカでビスケットと呼ぶパンのような菓子は、スコーンと呼びます。なお、フランス語でビスケットはビスキュイです。
クッキーとビスケットの見分け方
菓子業界では糖分や油分が多めの手作り風のものをクッキーと呼んでもよいという決まりがあります。そのため、シンプルに見た目が手作り風かどうかで見分けられます。
ビスケットは元々携帯食として日本に伝わってきたこともあり、機械生産の安価なもので、クッキーは手作りの高級品、というイメージがありました。今では一般家庭であっても簡単に手に入るクッキーですが、日本に広まった当時のイメージがそのまま見分ける基準となりました。
クッキーとビスケット、サブレなどの違いを理解して使い分けよう
クッキーやビスケットについて、それぞれの言葉や発祥、実際の食感や成分の違いなどを学んできました。元々クッキーとビスケットは別々のルーツがありましたが、どちらも同じく焼き菓子全般を指す言葉です。アメリカではクッキー、イギリスではビスケット、フランスではビスキュイなどと呼ばれています。
日本ではビスケットというくくりの中で、糖分と脂肪分が40%以上のものをクッキーと呼んでもよいとされています。
本記事を参考に、クッキーとビスケットの違いを正しく理解し、知識の幅を広げましょう。