暖かくなると花粉の量が増え、鼻がムズムズしたり、目がかゆくなってしまったりといった症状に悩まされる人も多いはず。花粉症の対策に、普段の食事からできることは何があるだろうか。管理栄養士の真野稔子さんに花粉症の人におすすめな食事やNGな食事について解説してもらった。

  • 花粉症対策におすすめの食事とは?

    花粉症対策におすすめの食事とは?

花粉症対策で摂りたい4つの栄養素

まずはじめに、花粉症対策として摂りたい栄養素は、「n-3系脂肪酸」「ビタミンA・C・E(エース)」「ビタミンB6」「プロバイオティクスとプレバイオティクス」とのこと。それぞれの効果を紹介しよう。

・n-3系脂肪酸

アレルギー性の炎症を引き起こす化学物質の生成や働きを抑えるといわれている。

・ビタミンA・C・E(エース)

粘膜や皮膚の細胞を形成して働きを強化し、外から侵入する細菌を防ぎ、免疫力を高める。また、体内の老化を進める活性酸素が、アレルギー反応や炎症を活性化させることも分かってるいるので、それを抑制する働きがある栄養素。

「抗酸化作用の強いビタミンA、ビタミンC、ビタミンEを多く摂ることをおすすめします。この3つのビタミンは一緒に摂ることにより相乗効果が得られます」

・ビタミンB6

免疫機能を正常に維持するのに必要な栄養素。発疹などの症状を軽減する。

・プロバイオティクスとプレバイオティクス

腸は体内の免疫細胞の7割が集まる免疫器官。善玉菌を増やして腸内の細菌バランスを整え、免疫機能を高める。

これらの栄養をより効果的に摂取するためには、以下のポイントを押さえておくと良いとのこと。

・青魚を食べる回数を増やす
・肉類は脂肪の少ないものを選ぶ
・体のバリア機能を高めるビタミンA・C・E(エース)を摂る
・免疫機能を正常化するビタミンB6を摂る
・免疫力を高めるために腸内環境を整える。そのためにはプロバイオティクスとプレバイオティクスが必要。

それでは、これらの栄養素がどのような食材に含まれているのか。具体的に教えてもらった。

花粉症の対策におすすめな食べ物や飲み物

・n-3系脂肪酸

青魚(さば、あじ、イワシ、ぶり、さんま、サワラ、カツオ、マグロ)、鮭 しそ油、アマニ油、エゴマ油、くるみ。

「特に青魚の水煮缶や味噌煮缶は手軽に食べることができます。しそ油、アマニ油、エゴマ油は生食がおすすめです。くるみは1日25g程度。1粒(1個分)での計算だと5~6粒程度、半かけだと10~11粒程度が目安になります。市販のくるみは剥き身で半かけを数gとして入っているので、10~11粒程度になります」

  • くるみの半かけの目安

    くるみの半かけの目安

くるみの半かけはこのくらいのサイズが目安。おやつとして食べてみるのも良さそうだ。

・ビタミンA・C・E(エース)

・ビタミンA

鶏レバー、豚レバー、ホタルイカ、うなぎの蒲焼、銀だら、アナゴ、緑黄色野菜(しそ、モロヘイヤ、にんじん・春菊、ほうれんそう、あしたばなど)

・ビタミンC

いちご、レモン、赤ピーマン、パセリ、ピーマン、柿、菜の花、ブロッコリー、かぶの葉、キウイフルーツ、グレープフルーツ

・ビタミンE

いくら、あゆ、はまち、うなぎ、アボカド、かぼちゃ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、ひまわり油

・ビタミンB6

ニンニク、マグロ、カツオ、イワシ、鮭、かも、さんま、さば、牛レバー、鶏ささみ、鶏レバー、ピスタチオ、バナナ、プルーン

・プロバイオティクスとプレバイオティクス

プロバイオティクスとは乳酸菌やビフィズス菌のこと。みそ、キムチ、ぬか漬け、甘酒、納豆などの発酵食品に多く含まれている。プレバイオティクスとは善玉菌の餌となる食物繊維やオリゴ糖。豆類、穀類、野菜、きのこ、海藻類に含まれている。

「緑茶(べにふうき)、甜茶、ルイボスティー、しそ茶、ハーブティーなど花粉症対策として市販されていますが、これらにはポリフェノールが含まれており、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状を引き起こす炎症物質(ヒスタミンやロイコトリエン)を抑える働きがあるとされています。しかしながら、花粉症を必ず軽減するというものではなく、効果は不確かなもので、個人差もあります。飲む場合は、早めの時期から毎日継続して飲むと良いでしょう」

花粉症の時にNGな食べ物や飲み物

花粉症の人が口にすると症状が悪化してしまう食べ物もあるという。

「特にアルコール類、脂肪の多い肉類。それ以外にファストフード・インスタント食品・レトルト食品など食品添加物の入った加工食品やお菓子類、嗜好飲料。免疫を低下させやすくなります。また、スパイスや香辛料の多く含まれた料理などは、種類によって体への刺激が強く負担となるため、花粉の飛びやすい季節は控えたほうがいいです」

・アルコール類

お酒を飲むと、鼻の粘膜の血管が拡張して、鼻詰まりを悪化させてしまう可能性がある

・脂肪の多い肉類

肉の油に多いn-6系脂肪酸は、花粉症を引き起こすプロスタグランジンやロイコトリエンなどの化学物質を作る。脂肪の多い肉類は摂りすぎないように。また、n-6系脂肪酸はマーガリン、マヨネーズ、フライ、スナック菓子、ファストフードなどにも含まれる油のこと。

花粉症に即効性のある食べ物は?

毎日鼻や目のかゆみに耐えるのも辛いことだが、食事で簡単に直せたらどんなにいいだろう。花粉症の対策に即効性のある食事はあるか尋ねてみたところ、「残念ながら、即効性のあるものはないみたいですね」と真野さんは話す。

「食事で花粉症を治すことは難しいですが、緩和させるためにできることを毎日の食事で取り入れてみるのは方法の一つだと思います。まずは、規則正しい生活とバランスの取れた食事(炭水化物、タンパク質、野菜類)を摂ることを心がけてください。アレルギー症状は、食生活の欧米化(高脂質・高たんぱく食)が主な原因ともいれているので、日本食を中心にバランスの良い食生活が大切になります」

厚生労働省によると花粉症の対策には、規則正しい生活やバランスの取れた食事が必要とされ、医学的には特に花粉症に良いといわれる1種類の食材を多く摂取しても、大きく症状が悪くなったり、良くなったりすることはないと考えられている。

花粉症を悪化させないために

日頃の食生活に“日本食”を取り入れることは、バランスの良い食事を摂るうえで効果的だそう。伝統的な日本食は発酵食品や食物繊維、n-3系脂肪酸も簡単に摂りやすく、和食の回数を増やしてみることも食生活の改善に期待ができる。

「バランスの良い食生活とは、主食となるご飯、パン、麺類、主菜となる肉・魚・卵・大豆製品、副菜となる野菜類を揃えること。バランスを整えるには、三色食品群を参考にすると良いでしょう」

  • 三色食品群の例

    三色食品群の例

三色食品群とは、栄養素の働きから3つの食品グループに分けたもので、赤 : 体を作るもとになる、黄色 : エネルギーのもとになる、緑色 : 体の調子を整えるもとになると、食材を分類したもの。表を参考にすることで、主食や主菜などのバランスも考えやすくなるだろう。

「自律神経のバランスを保つために、朝食をしっかり食べることや、ストレスを緩和させるための栄養(タンパク質、ビタミンCなど)を摂ることもおすすめします」

花粉症の改善のためには毎日のバランスの取れた食事が基本。ある食材に偏りすぎず、健康的な食事を目指すことから始めていきたいものだ。