「ストループ効果」という言葉をご存知でしょうか。近年では脳トレのゲームの中で、脳年齢を計測するためにストループ効果を利用した問題が出題されました。また、Webデザインにおいても、この効果によってサイトへの印象や閲覧数が大きく変わるとされています。
本項では「ストループ効果」の正しい意味や活用法を紹介していきます。ストループ効果について理解を深め、ビジネスでのアイデアや企画に役立てましょう。
ストループ効果の概要
ストループ効果とは、「文字の色の情報と文字の意味が持つ情報、それぞれ二つの持つ情報が矛盾している場合、答えを導き出すまでに時間が掛かってしまう現象」のことを指します。
たとえば「桃」と書かれた文字に黄色が染色されていたとします。「この文字は何色ですか」と問われた際に、脳は問題の意味を理解しその答えを導き出すまでに少し時間がかかり、これがストループ効果となります。
脳内では「書かれている色の名前の情報」を元に答えを出そうとしますが、「染色された色の情報」が同時に干渉してくるため、答えを出しづらくなってしまうという現象が起こっているのです。
ストループ効果の具体例
実際にストループ効果を使った具体例を紹介します。例を読んで自分がどのように受け止めたのか、どう感じたか、これらの経験を元にマーケティングなどの実務に取り入れていきましょう。
信号機
赤、青、黄から配色される信号機には、それぞれの色に意味があります。では、色合いごとの意味が変わってしまうとどうなるでしょうか。
- 「赤色の時に進む」
- 「黄色の時に止まる」
- 「青色の時に注意する」
信号機のように「色の情報」と「意味」が社会に広く行き渡っているものであればあるほど、先入観などが邪魔をして情報処理に時間が掛かります。そのためストループ効果は、不快感やストレスを与えてしまう効果といえます。
色のついた漢字を使ったテスト
このテストは前述したように「脳トレ」でも活用されている有名なテストです。実際に想像しながら読んでください。
- 「桃色と書かれた漢字の文字に黄色」
- 「黒色と書かれた文字に青色」
- 「白色と書かれた文字に灰色」
- 「黄色と書かれた文字に赤色」
右脳では色、左脳では文字というように脳にはそれぞれの役割が振られており、この二つが認識して答えを出すにはそれぞれの時間を有するのです。答えられる時間が早ければ早いほど、脳トレでは脳年齢が若い(情報処理能力がある)とされています。
マーケティングでストループ効果を活用する方法
ストループ効果は、相手に「考える時間」を与える効果であることが分かりました。
商品開発や企画などの企業的なマーケティングの場において、誤った表記や画像を使ってしまうとストループ効果が働き、顧客へ「考える時間」というストレスを与えてしまうことになります。
下記で紹介するストループ効果の現象を元に、「どうすれば不快感を与えにくいデザインができるか」という課題に対策していきましょう。
セール商品の広告を作成する場合
セール商品の広告では、ピックアップした商品を紹介する場面で、色と情報の相違による矛盾があるとストループ効果が起こってしまいます。
たとえば広告のチラシなどで、赤いリンゴの文字を、黄色で記述してしまうと、それだけでも脳は混乱します。ひどい場合には、お店への印象も悪くなる可能性があるため、読んだ人がストレスを感じない広告作りが大切です。
脳への混乱を引き起こさせないためには、売りだしたい商品と同じ色やその商品を連想させる彩色を施し、一瞬でも広告を見た人に情報を的確に与えることを重視しましょう。
Webページを作成する場合
正確な情報を発信するWebページにおいても、ストループ効果はとても重要です。
たとえばブログを公開する場合、「我が家のペットとの楽しい日々を綴ったブログとなります」という概要に対して、背景の色が暗い印象を与える色だったとします。これでは、「楽しそうな概要」と「悲しそうな色彩」と矛盾が起きてしまい、閲覧する人は内容を上手く読み取れなくなってしまうでしょう。
Webページを訪問する人へ混乱を招かないようにするためにも、「相手へ伝えたいこと」のメッセージとそれにつり合った配色を用いて、情報の錯誤を起こさせないページを作ることが大切です。
ストループ効果を活用する際の注意点
ストループ効果は、「情報を理解するまでの時間を生む」効果を与えるため、無意識に対象を長く注視させて印象を残させることもできます。しかし同時に矛盾を解くために脳が考えてしまうので、考えている間のもやもやした感覚などの不快感を与えてしまいます。
見る人に不快感を与えないマーケティング活動をするためには、発信したいメッセージ(情報)と、与えたいイメージ(色彩など)がぴったりとかみ合っているか、整合性を重視するようにしましょう。
ストループ効果とその他の効果との相違点
ストループ効果には、名前の似ているものや、似た効果のものがあります。それぞれがどのような効果として働くのかを把握しながら、相違点を押さえ、よりストループ効果への理解を深めましょう。
逆ストループ効果との相違点
逆ストループ効果とは、その名の通りストループ効果の逆の法則から成りたちます。
「書かれた色の名前を答える際に時間を有する」のがストループ効果、「染色された色の名前を答える際に時間を有する」のが逆ストループ効果となります。対象物が色と文字である部分は共通です。
干渉効果との相違点
干渉効果とは心理学用語のひとつで、「いつも目にしているものが違う意味になってしまっていても咄嗟に理解ができない」現象を指します。
干渉効果は「すべてのものが情報の対象であること」が、ストループ効果と大きく異なります。ストループ効果はあくまでも、色や文字の意味合いに対して違和感を覚える現象です。
サイモン効果との相違点
サイモン効果は、「位置の情報と意味の情報の相違によって発生する矛盾への混乱により、エラーを起こすこと」を指し、心理学実験でこの現象が確認、実証されています。
ストループ効果との相違点は「場所、位置」が対象点となっていることであり、違和感を覚えて答えに導くまでに時間が掛かったり間違えたりしてしまう点は共通です。
ストループ効果について正しく知って実務に活かす
ストループ効果の意味や注意点、似たような効果について解説しました。ストループ効果は視覚的な面で働くことが多いため、相手に不信感を与えないためにも、文字と色との整合性、Webページなどでは背景の色などにも気を配る必要があります。
「自分が伝えたいメッセージは何か」「与えたいイメージは何か」などをしっかりと固め、相手に的確に伝わるようにしましょう。