俳優の唐沢寿明がこのほど、テレビ朝日系ドラマ『24 JAPAN』(26日23:15~最終回 ※一部地域除く)のクランクアップを迎えた。

  • 唐沢寿明=テレビ朝日提供

同作は米国ドラマ『24』初の日本版リメイクで、日本初の女性総理誕生への期待が高まる総選挙当日の24時間を克明に描写したドラマ。1年におよび、テロ対策ユニットCTU(テロ対策ユニット)第1支部A班の班長・獅堂現馬を演じてきた唐沢が現在の心境を語った。

――今の心境は。

大河ドラマでクランクアップしたときも「あと2、3年できそうだよな」って思いましたけど、実は今も終わった感じがあまりしないんですよ。長期間の撮影に慣れていて、まだ体が元気だからかな(笑)? 全編を通して追い詰められる役ではありましたけど、現馬はそういう状況に追い込まれる仕事をしている人間ですから大丈夫でした。逆に一般の人なのに、巻き込まれてしょっちゅうさらわれ、殺されかける現馬の奥さんと娘を演じた木村多江さんと桜田ひよりさんの方が、大変だったんじゃないかなと思いますね。

――撮影が始まった当初、「獅堂現馬は普通の男だ」と話していたが、新しく得た印象や発見は。

今でも、彼はやっぱり普通の男だと思いますね。『24 JAPAN』の元になったオリジナル版のシーズン1も家族の話が中心で、テロリスト側の事情にもその骨組みが存在しているんです。そういう物語だからこそ、分かりやすい迫力はない。そんなこともあって、日本語吹き替え版では迫力を足すために、勇ましい声を採用していたんじゃないかと思うんですよ。だから、その印象のまま今回の『24 JAPAN』を見てくださった方々は、ちょっと「うん?」と思われたかもしれません。でも実際、キーファー・サザーランドさんもシーズン1ではしょっちゅう叫ぶわけでもなく(笑)、普通の男を演じてらっしゃいました。

――そんな獅堂現馬を演じた感想は。

これまでで一番難しいと感じた作品でしたね。当然だけど、オリジナル版と同じようにはできないですし、そもそもやると決めた時点で賛否両論あることは覚悟していましたから……。なにせオリジナル版は世界的に大ヒットした作品で、ほかのリメイクとはちょっと次元が違いますからね。根強いファンもたくさんいますし、オリジナル版と比べて物申したい人もいるのは当然だと思うんです。そういう意味ではハードルが高すぎる! でも、それほどの作品だからこそ面白いし、挑戦し甲斐がありました。僕はそういう“0か100かの賭け”で勝負する“自分との戦い”が好きなんですよ。

――日本版を制作するにあたって提案したことは。

いや、本国との契約上大きく設定やストーリーを変えられないですし、そもそもすべて日本風に変えてしまうと、今度は『24』ではなくなってしまう。この作品は手ごわいんですよ! だからこそ逆に、こうしたらもっと面白くなるんじゃないかと、いろいろ工夫しながら日本版を作っていく過程は面白かったですけどね。

――獅堂現馬の見せ方でこだわったことは。

自分自身のことはあまり考えていなかったですね。全体的に作品を見て「今週、面白かったな」と思ったり……その繰り返しでした。そもそも僕は自分をどう見てほしいとか、どう評価してほしいとか思っていなくて、うまく自分の役が作品の世界に入っていればいいんです。実際、『24』や『24 JAPAN』の脚本もそういうスタンスで書かれていて、1シーンしか出てこない役でもすごく活きている! そういう全体としての描写の仕方は、僕たち日本人もどんどん学んで、トライしていけたら面白いと思いました。

――『24 JAPAN』での経験は、今後に活かせそうか。

脚本の読み方や、監督に意見を言うときの姿勢は、少し変わってくるんじゃないかと思います。無理難題を言っても仕方ないのだけれど、少なくとも与えられた枠の中で「こうした方が面白くなるんじゃないか」と考えながら臨むべきだな、と。だって、「まぁ、こんなもんだろう」と惰性で臨むのはイヤじゃない? 評価されるかどうかは別にして、小さなことでも何か努力しながら生きていきたいですしね。そうやって今後の作品にも取り組んでいきたい、と改めて思いました。と同時に、『24』シリーズのような大人の鑑賞に応えるサスペンス、もっと刺激が欲しい大人用のコンテンツを、日本人のエンターテインメントとして作っていけたら面白いんじゃないかな、と。今後がますます楽しみになりましたね。