1953年に、Applied Imaginationという書籍が「ブレーンストーミング」という革命的な概念を問題解決のための新しい方法として紹介して以来、ブレーンストーミングは会議の方法の1つとして、多くのビジネスマンが活用してきました。

米マッキンゼーの最近の調査によると、クリエイティブな企業は平均以上の財務実績を上げています。つまり、企業の成功には創造性の活用がいかに重要であるかを示しています。しかし、ブレーンストーミングがすべてではありません。過去10年間の研究では、このアプローチの短所や、組織が創造性に広く焦点を当て、うまくとらえるためのより良い方法が生まれてきました。

テレワークが広がる今、従業員や管理職が分散型のワークモデルに適応するためには、アイデアの文化を促進するリーダーシップが特に重要になります。しかし、ブレーンストーミングができないからといって、創造性がなくなるということはありません。以下、テレワークをしながら、創造的なアイデアを出すための方法を紹介しましょう。

創造性が実際にどのように働くのかを理解する

企業にとって、各従業員がどのようなプロセスを経てアイデアを育むかを理解することが、従業員の創造性を開花させ、育成する方法を見つけるための第一歩となります。

「人がどのように創造的になるかというと、記憶の中の情報や知識を取り出して問題解決に役立てているのです」と、米テキサス大学の心理学教授であり、認知科学とビジネスの実践を組み合わせた大学のプログラムの創設者のアート・マークマン氏は言っています。また、現代の組織は、効率的であること、再現性があること、そして信頼できることを原則にしています。しかし、これらがイノベーションと関係ないことが大きな問題であることも指摘しています。

頭の中には問題を解決するためのルートが複数あるものであり、根本的にクリエイティブであるということは、複数の「正解」を考えられることであるとマークマン氏は言っています。これは1つの「正しい」考えを見つけることに焦点を合わせる傾向があるブレーンストーミングが逆効果であることを意味しています。

この画期的な研究によると、ブレーンストーミングは、創造性が最初に挙げられたアイデアに制限され、他の参加者達も積極的にアイデアを出さないと参加者達がやる気をなくしてしまいます。そして結局のところ、1度に1人しか話すことができないので、生み出されるアイデアは少なくなると結論づけています。

カレンダーにクリエイティブの日を作るのをやめる

最近の米ギャラップの報告書によると、労働者の3分の2は自分がイノベーティブであることを期待されていると感じていますが、実際にイノベーティブな仕事をできる時間があるのは3分の1以下です。

  • 「毎日イノベーティブな仕事ができる」と回答した人は30%にとどまる 資料:米ギャラップ「Amrerican Workplace Survey」

本質的には、創造性はTo-Doリストに載せることはできません。ブレーンストーミングの会議は課題解決のために最適かつ創造的な答えが生まれることを期待して予定に入れておくことはできません。「創造的な問題解決の多くは、砂漠をさまようようなものなのです」ともマークマン氏は説明しています。

例えば、金の王冠の体積を測る方法が必要だったギリシャの数学者アルキメデスは、冠のような不規則な形をした物体の体積を測定する解決策がわかったのは、入浴中でした。冠を浴槽に入れてあふれた水の量を測るという解決案を思いついたのです。

現在の職場にも通じるこの昔話の教訓は、創造的な思考ができる者が冗長的な作業によって考える機会を奪われないようにすることです。「誰もが少しでも余白時間が確保できるように、数人だけでも余分に人を雇うつもりがないのであれば、イノベーションは起こらないでしょう」――マークマン氏はこのように言っています。

ストレスを軽減できるツールや取り組みを推進する

気が散ったり、ストレスを感じたりすると、組織の健全性にも影響が出てきます。実際、Citrixが委託した調査によると、回答者の67%が「常にオンになっている」ことが健康と福祉に大きなマイナスの影響を与えていると答えています。

マークマン氏は、ストレスがワーキングメモリへのアクセスを妨げ、それは創造性が低下することを意味すると主張しています。ブレーンストーミングでは根深いストレスを解決できません。しかし、リーダーシップはどのようにしてストレスを減らし、会社全体の創造的な帯域幅を増やすことができるでしょうか?

世界でイノベーティブな組織の1つであるGoogleは「20% Timeプログラム」という取り組みを行っています。この取り組みにより、Googleの全従業員は、実際の仕事とは関係のないプロジェクトに20%の時間を費やすことができるようになりました。Googleには、この20%のプログラムから生まれた画期的な製品の数々があります。

IT部門と人事部門が協力して、従業員のスケジュールを整理したり、ルーチンワークを自動化したり、企業にとって最も重要であるさまざまなアイデアを発案できる従業員を解放したりするためにソフトウェアソリューションを導入し最高のワークプレイスを提供することは可能です。ストレスの軽減や、余白時間作りなど、従業員の創造的な問題解決能力を評価する組織は、テクノロジーの導入に積極的になっていくでしょう。そして、そのような取り組みを積極的に取り入れる企業がより創造的なソリューションを生み出すのかもしれません。

著者プロフィール

國分俊宏 (こくぶん としひろ)

シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社 セールス・エンジニアリング本部 エンタープライズSE部 本部長
グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。