2020年は、テクノロジーにとって大きな変化をもたらした一年でした。新型コロナウイルスの世界的な流行で多くの人が在宅勤務を経験し、新しい働き方が急速に広まりました。多くの企業が従業員のモチベーションと生産性を維持するために新しいテクノロジーを迅速に導入し、Web会議ツールなど、テクノロジーがビジネスには欠かせないツールになりました。

多くの企業が議論をスタートしたDX(デジタルトランスフォーメーション)は目まぐるしいスピードで加速し、急速に導入フェーズに移行してビジネスをドライブしました。 そして、2021年は、仕事の進め方がより抜本的に変化していくことが期待されています。では、具体的にどのような変化が訪れるのでしょうか?

仕事がより落ち着いてできるようになる

私たちは消費者として、スマートフォンで買い物から銀行送金、人付き合いに至るまで、これまで以上にスピーディーかつ効率的に行うことができます。しかし、仕事となると、状況はこれまで以上に複雑になっています。1日の間に、従業員は平均10個以上のアプリを使い、1つのタスクを完了させるためだけに4つ以上のアプリを使用すると言われています。

この状況は2021年、デジタル・ワークスペース・テクノロジーを採用することで変化するでしょう。集中力を奪う複雑さから解放されたユーザー・エクスペリエンスにより、イノベーションとコラボレーションが促進し、働き方はよりシンプルになるでしょう。その結果、業績の向上につなげることが可能になります。

仮想デスクトップがVPNに代わる

コロナ禍で、多くの企業・組織はテレワークの要請に直面し、企業システムへの迅速な接続を可能にする仮想プライベートネットワークソリューション(VPN)への移行に急ぎました。しかし、VPNには限界があることに気づき始めています。

リモートワークをしている 2,000 人以上の米国の従業員を対象にした最近の調査では、VPNベースのソリューションは「パフォーマンスが遅い」「仕事をこなすのに必要なすべてのアプリにアクセスできない」という意見が明らかになっています。また、セキュリティとプライバシーに関する懸念も示されています。

2021年、企業はVPN技術から離れ、仮想デスクトップ (VDI)を活用するようになるでしょう。VDIは、より安全で信頼性の高い代替手段として、従業員がリモートワーク中に最高のパフォーマンスを発揮するために必要なすべてのアプリ、情報、リソースへ、使い慣れたデスクトップからのアクセスを可能にし、ハイクオリティな体験をもたらします。

人工知能と機械学習が仕事をスマートにする

ロボットは人間の代わりにはなりません。しかし人間をより賢く、効率的にしてくれます。Work 2035プロジェクトの一環として行った世論調査では、5カ国の500人の経営者層と1,000人の従業員の4分の3以上が、15年後には人工知能(AI)と機械学習(ML)が意思決定プロセスを大幅にスピードアップさせ、労働者の生産性を向上させると考えています。

そして、ITがその原動力となり、AIとMLを取り入れたデジタル・ワークスペースを活用して、インテリジェントで個人のニーズに合った方法で仕事を整理、ガイド、自動化し、従業員が自分のベストな状態で仕事に集中できるようになるでしょう。

  • 2035年までにできることが予想される部署。AIやロボットに関する回答が最も多い 資料:Work 2035プロジェクト

IoTとロボットが従業員の健康を守る

新型コロナウイルスによって、企業は従業員の安全を優先することを余儀なくされました。2021年は、人々の安全を守るためにIoT技術やロボットが登場することになります。

ロボットが危険な作業を引き継ぎ、リモートハンド技術が人間と機械の連携をさらに強化するでしょう。また、IoTはタッチレスオフィスやソーシャル・ディスタンスを効率的に実現するツールとして活用されるでしょう。従業員は自分のデバイスからビル内の地図や人の出入りの情報、共有スペースが消毒されたかどうかを確認でき、会議室や共有スペースを安全に予約することができるようになります。

テクノロジーは常に動き続ける

テクノロジーはビジネスの成果を左右する重要なカギとなっており、常に稼働していることが望まれます。このような期待を受けて、IT企業はさらに積極的にクラウドを導入しなければならなくなるでしょう。

安全で信頼性の高い作業環境を提供し、従業員の生産性を高めるのです。そういったビジネスを前進させる努力の継続が、より戦略的な体制を作り、組織から評価されることにつながります。

CIOはセキュリティを重視するようになる

2020年はサイバー攻撃が400%以上増加しており、2021年には従業員と会社の資産を保護することがさらに重要になるでしょう。セキュリティとエクスペリエンスは表裏一体の関係にあります。今後1年間は、従業員体験を妨げないようこの2つが密接に連携して、ゼロトラストモデルに従ったワークスペース・セキュリティへのアプローチを提供することになるでしょう。そして、セキュリティはITが行うすべての動作に組み込まれることになります。

パンデミックは、誰もが想像もしていなかったような変化をもたらしました。そして、私たちが学んだことは、予期せぬ事態を想定し、それに備えることの重要性です。未来を正確に予測することは不可能ですが、一つ確かなことは、世界は変化し続け、急速に変化していくということです。そしてテクノロジーの力を活用する企業は、それをより良い場所にすることができるのです。

著者プロフィール

國分俊宏 (こくぶん としひろ)

シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社 セールスエンジニアリング本部 エンタープライズSE部 部長
グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。