再びステージが暗転し、インスト曲「Another」が流れるとともに徐々にライトアップされていくと、ステージ上には緑が戻っていた。“冬”が終わり、“春”が訪れようとしているなか、コートを脱いだ上田は「歌う」というよりは「喋る」要素の強いロックナンバー「いつか、また。」をエモーショナルに演じてみせた。

「aquarium」からこの「いつか、また。」まで、緊張感のあるシリアスな楽曲が続いたが、次のポップなR&Bナンバー「アイオライト」でその緊張がふわりとほどける。「晴れ渡るこの空 雲ひとつなくって」という歌詞に、ライブ当日の朝の空を重ねた人も多かっただろう。上田もリラックスした笑顔でワンピースの裾をひらひらさせるなどしつつステージ上を自由に動き回り、サビの「色づけ世界」の言葉通り、ライティングもよりカラフルに。そのまま「あまい夢」「ワタシ*ドリ」と、“冬”のステージとは対照的に、特にポップな3曲を生き生きと、弾むように歌った。

ここで、上田が「ありがとうございます」と再び一礼すると、客席から割れんばかりの拍手が送られた。そう、「sleepland」から「ワタシ*ドリ」までの15曲(インスト曲も含めれば17曲)、約70分を、上田はMCなしで歌いきったのだ。特筆すべきは、その曲間で拍手が一切なかったこと。それは上田のライブが、拍手を差し挟む余地がないほど完成されたシームレスな物語になっていたためだろう。その意味では、上田は約70分にわたるひとり芝居を演じきったと言ってもいい。

「『sleepland』から始まった夢の世界は、いかがでしたでしょうか? みなさんには、私の楽曲はそれぞれ何色に見えたんでしょうね。今回のタイトル『Imagination Colors』は、色を想像するという意味があります。みなさんが感じて、想像して、そしてそれぞれの世界を創造していただけるように、歌えたらいいなあと思っています」

であれば、上田の衣装が白=無色であることにも合点がいく。そして各楽曲の色を各々が想像するうえで、拍手なしという観賞スタイルは正解だったように思う。なかには単に拍手するのも忘れて観入ってしまった人もいたかもしれないが。

鳴り止まない拍手は、そのままアンコールを求める手拍子に。その手拍子に導かれ、再び上田がステージへ現れると2ndシングル表題曲「リテラチュア」のイントロが流れる。リメイクされた刺繍Tシャツと淡いピンクのティアードスカートに衣装チェンジした上田は、1曲を通して感情の波が大きくうねるこの曲を軽やかに、しかし地に足のついた歌声で巧みに表現した。アンコール2曲目は春のように暖かいバラード「Campanula」で、「『ごめんね』じゃなくて『ありがとう』と伝えたい」というメッセージを情感たっぷりに観客へ伝えていた。

「アンコールありがとうございます。7月に開催予定だった1stライブ、今回無事に、安全に開催することができたんじゃないでしょうか。アーティストデビューして、5年……かな? 経ちました。たくさんのことが本当にありました。最初は歌うことが苦手で、『歌いたくない』ってずっと言っていたんですけど、まさかライブをすることになるなんて……私ひとりじゃ無理でしたね。……なっ、泣かないって決めたの私は!」 堪えきれない涙を指先で拭いつつ、上田は続ける。

「チーム上田麗奈が作られてから、いろんな人が協力してくれて、いろんな人が『こういうの素敵だよ』『ああいうの素敵だよ』って、いろいろ形をね、作っていってくれて。本当に、ありがとうございます」

会場中から上田を祝福するような拍手が送られるなか、さらに続けた。

「チーム上田麗奈って、みんなのことも言うんだからね。今日のこのライブも、みなさんが空気を作ってくれたから、最後まで、こうやって素敵な世界観でお届けすることができたんです。本当にありがとうございます。ああー、泣かないって決めたのに……悔しい」

笑顔でそう語ると、上田は夏に2ndアルバムをリリース予定であることをアナウンス。それに対し、観客はやはり大きな拍手で喜びを伝えた。

「『RefRain』という1枚目のミニアルバムを出して『次、出すのかなあ?』っていう状態から始まったアーティスト活動だったんですけど、これからも続いていくように、がんばろうというところです。まだまだチーム上田麗奈で活動していけるように、これからもみんなと一緒に、隣で歩いていけるように、最後にこの曲を歌ってお別れしたいなと思います」

届けられたのは、「Walk on your side」。ライブ本編が夢の世界であるなら、アンコールは現実ということになるだろうか。その現実は親密かつ和やかな空気で満たされていた。満面の笑みを浮かべる上田の「どんな瞬間もきっと笑顔に変える ほんの小さいきっかけを届けたいんだ」という歌声とともに、初めてのライブは幕を閉じた。