占いや性格診断などで「自分のことを言い当てられた」と感じた経験がある人もいるかもしれません。私たちは自分のことを言い当てられたことで、その占いや性格診断などの結果を信じてしまう傾向があります。
ただし、それは本当に自分のことをわかっているのではなく、心理的効果の一つである「バーナム効果」を利用しているのかもしれません。本記事では、バーナム効果の活用方法などを身近な事例とともに紹介していきます。
バーナム効果の意味
バーナム効果とは占いなどにおいて、誰にでも当てはまるような曖昧な記述や発言を見聞きした際に「自分のことをずばりと言い当てている」と思ってしまう心理、あるいはその現象を指します。
例えば占いをしてもらった際、「悩みがありますね」のような曖昧な問いかけをされたとしましょう。このとき、「当たっている」と思った人は、つい自分から悩みや自身の性格などについて詳しく話してしまいます。
ただ、人間は「歯が痛い」といったものから「職場の人間関係がうまくいっていない」といったものまで、大なり小なり何かしらの悩みを抱えているものです。そう考えれば、「悩みがありますね」といった問いかけは誰にでも当てはまると言えるでしょう。
バーナム効果により信用が得られる理由
バーナム効果を経験した人は「この人は私のことを理解してくれている」と認識してしまい、その人との心的距離を縮めたり、好意を抱いたりするようになると考えられています。このメカニズムには「確証バイアス」が関係していると言われています。
確証バイアスとは
確証バイアスとは「認知バイアス」の一種です。バイアスとは、日本語では「偏り」という表現がふさわしいかもしれません。確証バイアスとは、自分にとって都合の良い情報だけを無意識的に集める一方で、不都合な情報を無視したり集めようとしなかったりする傾向のことを指します。
この確証バイアスのわかりやすい事例として、血液型があります。
例えば、A型はさまざまなサイトや書籍で「まじめで几帳面」などが特徴としてあげられています。そのため、A型の人(Xさん)がミスなくきれいにまとめた書類やレポートをその上司が見た際、「やはりXさんはA型だから几帳面だよな」などと思ってしまうことでしょう。
そしてこのとき、Xさんの仕事用デスクが物であふれかえって雑然としていること、すなわちこの「几帳面なXさん」という「事実」にとって不都合な情報を、この上司は見落としがちです。これが確証バイアスです。
バーナム効果では、この確証バイアスが引き起こされることで、相手のことを信用しやすくなってしまいます。
バーナム効果を営業に活用した具体例
バーナム効果を営業で活かすのであれば、誰にでも当てはまることを理由にして、自社の商品やサービスの利用に結びつけるようにするとよいでしょう。
もし、セキュリティ関係の商品やサービスを販売したいならば、「パスワードの管理の面倒さ」「パスワードの流出への不安」など、多くの企業に当てはまる問題点や課題を質問してみましょう。そうすることで、「自社の問題や課題を理解してくれている」と担当者から信用を得られやすくなる可能性が高まります。
商品やサービスなどの説明をいきなり始めるよりも、先に信用を得ておいたり、商品やサービスへの興味を強めておいたりすることで、いろいろな提案がしやすくなるのです。
バーナム効果を活用する際のポイント
バーナム効果は、誰にでも当てはまることをただ相手に伝えるだけでは、その効果を十分に得られません。バーナム効果を活用するのであれば、相手やシーンに合わせて、いくつかの点に注意が必要となります。バーナム効果を使う際のポイントを押さえておきましょう。
■個人へ向けられた内容だと思わせる
相手が「誰にでも当てはまるようなことを言われている」と気づいてしまうと、自分だけに当てはまっているものではないと判断して、バーナム効果が得られなくなってしまう可能性があります。
そのためにも、相手に「自分にだけ当てはまることを伝えられている」と思わせる必要があります。占いで星座や生年月日などの情報を確認するのは、その人だけに向けられた情報と思わせることが目的の場合があります。
■情報発信者の信頼度を高める
誰にでも当てはまることを、うまく個人に向けた情報と思わせられても、それを伝えている人のことを信用できなければ、何を伝えても信用してもらえません。つまり、相手からの信用が得られなければ、バーナム効果は発現しないのです。
逆に、人気占い師や有名企業の社員などの言葉であれば、相手からの信用は得やすくなるので、バーナム効果も得やすくなります。
■マイナス要素は少なくする
人は自分にとって都合の良い情報は信用しやすかったり、記憶に残りやすかったりします。バーナム効果を得たいのであれば、できる限り相手にとってマイナスとなる要素は伝えないようにしましょう。
■どのようにでも解釈できる内容を選ぶ
誰にでも当てはまるようなことを相手に伝えるためのコツは、できるだけ解釈が幅広い言葉を選ぶようにすることです。
もし、「悩みを持っていますね」と伝えてしまうと、悩みは多くの人が持っていますが、稀に悩み事がないという人もいます。
しかし、「小さな悩みを抱えていますね」と伝えれば、人によって悩みの大きさはそれぞれなので、相手は特に悩みを持っていなくても解釈の幅を広げて、「あのことかもしれない」と勝手に悩みを探してくれるでしょう。
バーナム効果を活用する際の注意点
バーナム効果はいろいろな場面で活用できますが、便利であるからこそ、扱う際には注意すべきことがいくつかあります。
よく観察して言うべきことを見極める
もし、結婚指輪をしていない相手に子どものことについて伝えようものならば、「私は結婚をしていません」などと突っ込まれてしまう可能性があります。間違ったことを伝えてしまうと、その後は信用を得ることが難しくなってしまうので注意しましょう。
バーナム効果を使いたいならば、相手のことをよく分析して、相手の情報を集めたうえで言うべきことを見極める必要があります。
使いすぎない
同じ相手から何度もバーナム効果を得ようとする場合、相手には何度も誰にでも当てはまるようなことを伝えることになります。そうなれば、最初はうまく個人に向けた情報のように見せかけても、どこかのタイミングで「誰にでも当てはまることばかり言われている」と気づかれてしまう可能性があります。
そのことに気づかれてしまうと、バーナム効果が得られなくなってしまいます。バーナム効果を得ようとしていることに気づかれないためにも、使う頻度やタイミングなどには注意しましょう。
悪用しない
バーナム効果の活用に慣れると、相手からの信用を得ることで相手の思考や行動を誘導できることもありえます。バーナム効果を悪用することで、誰かの言いなりになってしまったり、悪質業者に騙されたりするといった事態にも発展しかねません。
バーナム効果は悪用するためのものではないので、使い方を間違えないようにしましょう。
バーナム効果の具体例
バーナム効果はさまざまな場面で活用できるため、日常生活の中でも注意して観察してみると、バーナム効果が活用されているものがいろいろとあります。バーナム効果の理解をより深めるためにも、どのような場面でどのような活用をされているのか知っておきましょう。
占い
バーナム効果を活用している定番の例と言えます。占いの結果は誰にでも当てはまるものが多く、他人と自分の結果を入れ替えたとしても、自分に当てはまっていると感じることが多々あります。
占い師に見てもらったり、星座や生年月日などから占ってもらったりすることで、自分にだけ向けられた情報と思ってしまいやすくなっています。
血液型診断
雑談で血液型から性格を診断することはよくあります。しかし、血液型で性格が決まるという科学的根拠はなく、占いと同様に、他人の診断結果と入れ替えても本人は自分に当てはまっていると感じるでしょう。
また、血液型診断で結果が自分に当てはまらないという人もいます。そのような人がいても、血液型診断を信じている人には確証バイアスが働き、「他の多くの人は当てはまっているから正しい」と、自分にとって都合の良い解釈をします。
おみくじ
おみくじの結果も誰にでも当てはまるような内容となっているので、占いの場合と同様です。しかし、占いやおみくじなどでは、偶然のように思える結果にも運命が含まれているという考え方があります。そのため、おみくじや占いでは番号を引く、占いでタロットを引くなどの行為から偶然に得られる結果に意味があるということになるのです。
おみくじや占いの結果自体は自分と他人の結果と入れ替えても当てはまりますが、おみくじや占いでは他人が得た結果では意味はありません。
バーナム効果の英語表現
バーナム効果は英語表現をすると、「Barnum effect」となります。また、Forer effect(フォアラー効果)と表現されることもあります。フォアラーはバーナム効果を発見した心理学者のバートラム・フォアのことを指します。
日常生活の中で使うことは少ないかもしれませんが、バーナム効果を英語で使う場合の例文としては「Try the Barnum effect(バーナム効果を試す)」のように使います。
バーナム効果を営業に活用しよう
バーナム効果を営業などのビジネスでうまく活かせれば、成果アップに期待できます。営業でバーナム効果を活用するためにも、バーナム効果のことやその活用方法などについて知っておくようにしましょう。