優れたご当地食品を認定する「食べるJAPAN 美味アワード」の審査会が、2月23日に服部栄養専門学校で開催された。料理評論家の服部幸應氏、イタリア料理ブームの火付け役として知られる片岡護シェフをはじめ、日本トップクラスのシェフや有識者が予備審査を勝ち抜いたご当地食品の数々を実食・審査した。

  • 「食べるJAPAN 美味アワード」審査会の様子

    「食べるJAPAN 美味アワード」審査会の様子

■商品開発への助言で地方に貢献

「食べるJAPAN」は国産品を食べることにより地域を応援し、日本の食料自給率向上への貢献を掲げて、2019年に発足。日本を代表する一流シェフや食関係の有識者たちとともに地域の食材を発掘し、育成するプロジェクトをこれまで展開してきた。「美味アワード」は味やものづくりに優れた国内の食品を発掘し、認知向上・ブランド化を支援する「食べるJAPAN」の新たな取り組みで、日本各地の企業からノミネートされた食材・商品をコンテスト形式で審査。各種基準を満たしたものを認定する。

日本全国の生産者・中小食品製造業者・流通業者・生活者をつなぎ、これまで知られていなかった魅力的な食材・商品をより多くの人々に広めることで、日本の食業界や地域活性化につなげるのがねらいだ。

そのため審査対象は安定した品質を提供できる食品が中心で、大手メーカーのナショナル・ブランド商品は対象外。美味しさや安心・安全はもちろん、「地域の特色を活かした商品であること」「次世代に残したい食文化を感じること」「食育に関連していること」「SDGs17の目標に合致している点が多いこと」など、環境への配慮や地域への取り組みも審査基準となっている。また、審査委員会の評価コメントを直接出品者へフィードバックし、より強い商品開発につなげていくフォロー体制を備えていることも「美味アワード」の大きな特徴だ。

  • 東京・西麻布の人気イタリア料理店「リストランテアルポルト」の片岡護シェフ

    東京・西麻布の人気イタリア料理店「リストランテアルポルト」の片岡護シェフ

審査員の片岡シェフは「生活者の方がいいものを作っている生産者をフォローすることも当然大切ですが、単にいいものを紹介するだけでなく、多くの生産者へ改善点などを積極的に助言していくことも今回のアワードの役割。産業全体のレベルを底上げし、世界に発信していくことが僕たちの大切な役割だと考えています」と語っていた。

■「全体のレベルが高い」と服部氏も太鼓判

審査会は午前と午後の二部制で一部と二部の審査員たちはそれぞれ70品ずつ、予備審査で絞り込まれた計140品目のご当地食品を実食した。一部の審査には2017年に「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」を公開した映画監督・滝田洋二郎氏も参加。審査で特に重視したポイントについて、次のように述べた。

  • 「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」(2017年公開)の映画監督・滝田洋二郎氏

    「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」(2017年公開)の映画監督・滝田洋二郎氏

「どれも地方の色が出ていてとても素晴らしかった。値段が数万円のものと数百円くらいのものを一緒に並べて審査するのは難しかったです。一流シェフたちも審査されている中で自分の中の目線を大切に、『昔懐かしいもの、心に残るもの、心が満たされるものは何か』という視点で僕は選びました」

  • 一つ星の割烹料理店「新宿割烹 中嶋」の中嶋貞治シェフ

    一つ星の割烹料理店「新宿割烹 中嶋」の中嶋貞治シェフ

一方、「こうした審査で僕が必ず大切にしているのは“元味”です」とは『新宿割烹 中嶋』の中嶋貞治シェフ。「魚、野菜、お肉、穀物も含めてその食材の味を逸脱しない、不自然にならないようなかたちでの商品開発が大切。生産者の方々には食材の持ち味を見極めた上で、時間や手間がかかっても自然に即した商品開発を期待しています」(中嶋シェフ)

  • 中国料理「Wakiya一笑美茶樓」の脇屋友詞シェフ

    中国料理「Wakiya一笑美茶樓」の脇屋友詞シェフ

また、「Wakiya一笑美茶樓」の脇屋友詞シェフはSDGs・地域活性化というアワードのテーマを踏まえ、「生産者から平時のように食材を仕入れることが我々も難しい状況で、特定の地域や国ではなく世界的に食品ロスも増えている。構造的な問題なども含め、生産者の方々と一緒になって考え直すべき機会だとも感じています」とコメント。コロナ禍での開催の意義を語った。

  • 料理評論家で審査員長を務める服部幸應氏

    料理評論家で審査員長を務める服部幸應氏

審査員長を務める服部氏は「審査員によって評価の違いは出てくるし、それはそれで構わないと思っています。それぞれの経験に基づき、価値観を全面に出したかたちで評価していただければ、大きな意味があるだろうと。今回はレベルが高く、私も残したいものがずいぶんありました」と総評。

「生産者の方には原材料の味わいを活かすことに注力してほしいですし、それぞれの生産者が向上心を持ってくれるように我々も応援していきたい。ジュースひとつとっても、オレンジでもリンゴでもいろんな品種を使ったものがありますが、清見オレンジは『清見ちゃん、かっこいいねぇ』って感じで、いい点入れちゃいましたね(笑)。紅玉を使った商品も酸味や甘味のバランスが良くて、生産者の方もずいぶん工夫して作られていました」と振り返っていた。

3月上旬には受賞商品を決定。シェフを交えた交流会・授賞式の開催を予定している。