――キカイノイドのジュラン、ガオーン、マジーヌ、ブルーンは外見も性格も非常に個性的で、先ほど言われていた"キャラクターの強烈さ"がはっきりしていますね。色分けされたメンバーが5人集まって悪と戦う姿は、これぞまさしく「スーパー戦隊」と呼べるものになっていると思います。

まったく新しいものを目指しつつ、"芯"はむちゃくちゃオーソドックスな「スーパー戦隊」、それがゼンカイジャーなんです。スタッフさんたちに今度の新しい戦隊はこうなんです、と説明するのはけっこう簡単で「(宇宙戦隊)キュウレンジャーの、人間がちょっと少ないやつ」という(笑)。

――『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017年)は12人ものヒーローのうち、ヒューマノイド(人間)タイプのヒーローが7人、機械生命体のバランス、アンドロイドのラプターなどヒューマノイド以外のヒーローが5人登場していましたから、その説明だとすんなりイメージができますね。

これまでの「スーパー戦隊」は、1作ごとにいろいろな試みを導入してやってきましたが、そのいずれもが"継続"していないんですね。「この戦隊はこういう新しいことをやっていた」というのはあるものの、それらの要素が次に受け継がれてはきませんでした。

『ゼンカイジャー』では「スーパー戦隊」がシリーズであることを見つめ直して、各作品で試みた特徴的な要素をもう一度拾いあげ、再構成してお見せすることができれば、と思って企画を立てました。歴代作品でやってきた魅力的な要素の"純度"を高めて、新たなものとしてお出しすれば、44作品も重ねてきたスーパー戦隊シリーズへの"恩返し"になるんじゃないか――。これが『ゼンカイジャー』の理念だといえます。

「スーパー戦隊」をさらなる未来へ向かって続けていくにあたり、『ゼンカイジャー』がひとつのターニングポイントになってほしいと考えています。

――香村純子さんにメインライターを依頼された狙いとは。

やはり歴代「スーパー戦隊」をよくご存じの方にお願いしたかったんです。企画を説明したとき、女性戦士がロボットのマジーヌしかいないと知って「(人間の)ヒロインがいないって、おかしいじゃないですか」と言われましたけど……(笑)。

香村さんにお願いしたおかげで『ゼンカイジャー』のストーリーはもう「スーパー戦隊」の本流を行く内容になりますよ。こんなに戦隊っぽい戦隊はないんじゃないか、というくらいの戦隊です。

――また、制作発表の際に話題を集めたのは、特撮・アニメ音楽のレジェンド・渡辺宙明先生が『ゼンカイジャー』のBGMを手がけることでした。ぜひ宙明先生にオファーされた経緯も聞かせてください。

「スーパー戦隊45作目のアニバーサリーにふさわしい音楽」そして「現代の子どもたちの耳にも残るキャッチーな音楽」、この両方を満たすことのできる方は、世界広しといえども宙明先生をおいて他にいないでしょう。唯一無二の存在として、宙明先生のところへお願いにうかがいました。宙明先生は現在95歳というご高齢にかかわらず、すごくお元気でした。創作への意欲もまんまんで、とてもありがたく思っています。

――テレビ放送に先行して公開される映画『機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』では、アカレンジャーの誠直也さんゲスト出演、歴代レッド戦士全員集合、そして歴代スーパー戦隊"悪役"大集結といった、お祭り的要素が盛り込まれた楽しい作品となりましたが、ゼンカイジャー結成に至るまでのプロセスなどは描かれていませんでしたね。時系列的には、テレビ放送の後に位置する作品なのでしょうか。

チーム結成の経緯は、テレビでちゃんと描くので大丈夫です(笑)。今回の映画は『ゼンカイジャー』としてスタッフ・キャストが初めて取り組む作品ではあるのですが、すでに世界観が完成された状態でストーリーを描こう、と最初から決めていました。

今回のチーム構成(人間1人+ロボット4人)は特殊な環境だといえますし、作るほうが戸惑いと不安を抱えながら入っていく危険がありました。だから、何もかも手探りで新しい作品を作っていくというよりも、最初から「これが完成像だ!」というものをきちんと作り上げ、映画を見られる方たちに「ゼンカイジャーとはこういう作品なんだ」というものをお出しできるようにしたかったんです。

――特撮ファンとして気になるのは、『ゼンカイジャー』テレビシリーズに歴代スーパー戦隊のヒーローの登場するエピソードが作られるかどうか?なのですが……。

何らかの形では、あると思います。でも、かつて『ゴーカイジャー』でやったような形をもう一度やるのではありません。44作品ある歴代スーパー戦隊ひとつひとつの魅力をいかに抽出して、新しい形で再提示できるのか、それがスーパー戦隊第45作のアニバーサリーにおける『ゼンカイジャー』の役割のひとつだと思っています。『ゼンカイジャー』を作るにあたって、果たさなければならない役割は10個ほどあるんです。

――お話をうかがっていますと、白倉さんの『ゼンカイジャー』にかける強い意気込みが伝わってきます。

「スーパー戦隊」に対し、マジメに取り組んでいるだけなんですけれど、マジメに取り組むとこんなに大変なのか……という思いですね。キャラクターの見せ方が変わったというのは表面的なものにすぎないんです。魅力的な「スーパー戦隊」を作るためには、もっと本質的な部分を見つめなければいけない。予算的、技術的な問題やいくつかの制約などをかかえながら、それらをクリアしつつ、私たちが考える"理想のスーパー戦隊"を目指すため、まさに全力全開で取り組んでいます。まずは映画館で『ゼンカイジャー』の世界の一部を楽しんでいただいて、3月7日から始まるテレビシリーズをぜひご覧ください。

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