昨年2020年はコロナ禍によって社会全体が大きく変わったが、以前からも景気回復の実感がわかない中、あれほど走っていた中型ミニバンが減って「コンパクト」と「SUV」が伸びていた。コンパクトカーが売れる理由はコストが安いためだが、これにSUVの要素が加われば少し得をしたような気分にもなれる。「ライズ」が大ヒットした原因は、この2つの要素を兼ね備えていたためだろう。
2021年に入るとコロナ感染者数の増加以外にも、半導体不足による自動車メーカーの減産というニュースも飛び交ったが、このような中で売れた車は何だったのか?一般社団法人 日本自動車販売協会連合会が発表したデータをもとに、2021年1月の人気車ブランドを紹介しよう。
2021年人気車種、1月トップ10
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | トヨタ | ヤリス | 18,516 |
2 | トヨタ | ルーミー | 10,939 |
3 | トヨタ | アルファード | 10,011 |
4 | トヨタ | ハリアー | 9,177 |
5 | トヨタ | カローラ | 7,773 |
6 | ノート | 日産 | 7,532 |
7 | トヨタ | ライズ | 6,985 |
8 | トヨタ | ヴォクシー | 6,666 |
9 | トヨタ | シエンタ | 6,055 |
10 | ホンダ | フィット | 5,889 |
※軽自動車および海外ブランド車を除く
1位:トヨタ「ヤリス」
「ヤリス」は、もともと国内では「ヴィッツ」の名で親しまれた“トヨタの顔”とも言えるコンパクトカーで、2020年2月のフルモデルチェンジを機に世界名称に統一された。トヨタ自慢のTNGAプラットフォームをコンパクトカーに初採用してトータル性能を向上させたほか、SUVモデルの「ヤリスクロス」やモータースポーツを意識した「GRヤリス」という強力なバリエーションもラインナップされた。
エンジンは1.0Lのほか、ハイブリッド仕様を持つ新開発の1.5Lダイナミックフォースエンジンを揃えてパワーと省燃費燃を両立。また、衝突回避支援やレーントレーシングアシストといった最新の安全性能も装備している。
2位:トヨタ「ルーミー」
デビュー以来、気がつけばベストセラーとなっている「ルーミー」は、ダイハツが自社の「トール」をトヨタにOEM提供する小型ハイトワゴン。全長約3.7mの小さなボディは軽自動車並みの取り廻しの良さはもちろん、5人乗車でも余裕のある室内空間もしっかり確保。フルフラットにもできる多彩なシートアレンジによる積載性、様々な収納スペースなど、ダイハツの軽自動車開発で培われたで多くのノウハウが盛り込まれている。
1リッタークラスで150~200万円台のコンパクトカーとはいえ、衝突回避やペダル踏み間違え防止機能など、昨今の乗用車には必須の安全機能も充実。小さくても要所を押さえた堅実なパッケージが人気のようだ。
3位:トヨタ「アルファード」
元祖大型ミニバンの日産「エルグランド」やホンダ「オデッセイ」といったライバル達を尻目に、今やその頂点に君臨し続けるのがトヨタ「アルファード」。一目で分かる大型グリルを始めとしたダイナミックなエクステリアに、高い質感を持つインテリアが大きな特長だ。
車両タイプはミニバンに分類されるが、「アルファード」はかつての大型高級セダンのポジションにあるとも言えるだろう。ただ豪華なだけではなく、最新の安全性能はもちろん、専属のオペレーターによるコネクティッドサービスといったものまで用意されている。
4位:トヨタ「ハリアー」
それまでは泥臭く無骨なイメージだったSUVの世界に、流麗なクーペボディと質感の高いインテリアを組み合わせ、「高級クロスオーバーSUV」というジャンルを世界で初めて確立したのがトヨタ「ハリアー」だ。
2020年6月に4代目にモデルチェンジしたが、コロナ禍であっても発売早々にヒットを記録し、その人気が全く衰えていないことを証明。最新モデルでは独自のスタイリングやコンセプトに磨きをかけたほか、TNGA新プラットフォームによって走行性能も大幅に向上している。
5位:トヨタ「カローラ」
日本を代表するファミリーカーのブランドとして歴史のある「カローラ」。ミニバン人気の時代には消滅の噂まで流れたが、現行の12代目では3ナンバー化し、キーンルックと呼ばれるフロントグリルなど、大胆にデザインを刷新して見事に復活した。
セダン、ツーリングワゴン、スポーツハッチバックのボディや、ハイブリッドを含めた1.2Lと1.8Lのエンジン、2WD/4WDの駆動方式を組み合わせた多くのバリエーションを持つことで、幅広い年齢層やニーズに対応している。
「ライズ」失速は「ヤリスクロス」の影響か?日産やホンダも新型車で巻き返しを図る
2020年上半期はSUVとして異例のトップに輝いたトヨタ「ライズ」。昨年12月までは「ヤリス」に引き離されるもののトップ3以内を維持していたが、今年に入ると既存の人気車に飲み込まれ、一気に7位にまで後退してしまった。
あれほど売れた「ライズ」がここまで落ちたのは、やはり「ヤリス」ファミリーのSUVモデル「ヤリスクロス」の影響が大きいだろう。同じトヨタのコンパクトSUVだが、「ヤリスクロス」の方が価格が若干高く、車体サイズも大きいとはいえ、クロスオーバー系の洗練されたデザインやハイブリッドエンジンも用意されている。
また、「ライズ」がダイハツ「ロッキー」のOEM車なのに対して「ヤリス」は本家トヨタのオリジナル。世界戦略車としての役割を担っているだけに販売台数では負けられないはずだ。2位のベストセラー車「ルーミー」もダイハツのOEM車だが、こちらはトヨタ内では競合が不在の状態。しかし「ライズ」のように1位を独走するような存在になれば、ヤリスファミリーから強力な刺客が生まれるかもしれない。
トヨタ以外のトップ10ニュースとしては、12月に発売された新型「ノート」で久々に日産がランクイン。かつて独自の電動パワートレイン「e-POWER」で王者「プリウス」から首位を奪ったモデルがどこまで伸びるか注目だ。ホンダは「フリード」が圏外となり、辛うじて「フィット」が10位に踏みとどまっているが、人気のコンパクトSUVで大ヒットした「ヴェゼル」が待望のフルモデルチェンジ。「ヤリスクロス」の強力なライバルになるはずだ。
※ブランド通称名とは、国産メーカーの同一車名を合算したものであり、海外生産車を含む
※上位台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含む(例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含む)