ニチレイフーズは1月16日、ヤマダデンキとともに新生活応援キャンペーンを開始した。同社は近年、若年層や単身世帯に向けたプロモーションに意欲的に取り組んでいるが、その理由はなぜなのか? 家庭用商品のマーケティングチームを率いる渡辺千春氏に話を伺った。
ニチレイフーズとヤマダデンキの取り組みとは?
ニチレイグループで冷凍食品などの加工食品事業を担うニチレイフーズ。同社がヤマダデンキと実施する新生活応援キャンペーンは、ヤマダデンキ各店で対象となる小型冷蔵庫を購入し、ヤマダデンキのレシート保証書で応募すれば、「本格炒め炒飯」を含む「ニチレイ冷凍食品詰め合わせ」が抽選で7,000名にプレゼントされるというもの。
実は近年、ニチレイフーズは若年層・単身世帯に向けた取り組みを加速させている。ファミリー層がメインターゲットと思われる冷凍食品において、若年層・単身世帯向けのキャンペーンを展開するのはなぜなのか。
ニチレイフーズで家庭用商品のマーケティングチームリーダーを務める渡辺千春氏に伺ってみた。
若年層・単身世帯にアピールする理由とは?
──2020年は新型コロナウイルスの流行があり大変な一年でしたが、冷凍食品にはどんな影響がありましたか?
昨年は緊急事態宣言の発令によって外出自粛が求められました。みなさま「毎日の食をどうにかしなきゃ! 」と考えられたのか、冷凍食品に注目をいただき、おかげさまで需要は大きく伸びました。一部商品においては、一時的に品薄になったこともありました。
ありがたいことではあるのですけれども、量販店さまに滞りなく商品を供給するのがメーカーの責務ですし、ひいてはみなさまの食卓を支えるインフラとしての役割もございますので、品切れを起こさないよう苦慮した一年でした。
──近年、若年層・単身世帯に積極的にアピールされていますが、これにはどのような狙いがあるのでしょうか?
当社の主力商品である「本格炒め炒飯」は、食欲旺盛な若い方を中心として幅広い世代の方に召し上がっていただいておりますが、今後は、これからの食を支えていく若年層をしっかり取り込んでいきたいと考えています。
しかし商品認知度を調べると、若年層は他の世代と比べて低いという結果が出ていました。例えばパッケージのブランド名を隠して「この商品はどこのブランドかわかりますか? 」と質問する調査を行うと、20代では平均の約半分程度の正答率となったのです。
これはなぜかというと、「購入する方と召し上がる方が同一でない」パターンが多いためです。みなさまがお考えの通り、冷凍食品の購買層は30~50代の女性層がメインとなっています。冷凍食品は「お母さまが子供のために購入し、冷凍庫に入れておく」ことが多いため、若年層は自分が食べている商品についてあまり意識していないのです。
実際に召し上がられていても、自分が食べているのが「このブランド」の「この商品」であるとわかっていないと、次の購入に繋がりません。店頭で目立つ商品、安い商品を「これでいいか」と買ってしまうかもしれませんし、最悪の場合、別の商品を召し上がって「味が変わってしまった」と思われる場合もあります。この状況は非常にもったいないと思いまして、若年層の認知もしっかりと高めていく必要があると考えました。
──これまで、若年層・単身世帯に向けてどのようなプロモーションを行いましたか?
ニコニコ動画でダンス動画を制作・配信したという取り組みがありまして、動画の中でもパッケージなどを出させていただきました。とはいっても「これを買ってね! 」みたいなプロモーションはしていなくて、あくまでも「ダンスを通じて冷凍食品の楽しさを伝えていく」というスタンスです。普段の生活の中で、冷凍食品のブランドや商品名を意識していただくことを目指しています。
2020年には「DCC(DANCE CLUB CHAMPIONSHIP) 第8回 全国高等学校ダンス部選手権」にメインスポンサーとして参加しまして、ニチレイフーズ賞として記念映像制作や「本格炒め炒飯」1年分を提供いたしました。
コロナ禍ということもあり、オンラインでの開催となりましたが、ハーフタイムショーでDJ KOOさんが「本格炒め炒飯」のパッケージを手に取って紹介し、事前に送った「本格炒め炒飯」をみんなで同時に食べるという演出もしてくださり、大変反響がありました。
コラボ商品に小型冷蔵庫を選んだ理由
──ヤマダデンキで販売される小型冷蔵庫とコラボした経緯についてお聞かせください
認知を高める機会は増えてきましたが、高校生の場合、実際に購入するのはまだまだ親御さんで、プロモーションとしてはちょっと遠回りです。メーカーとしては最終的に買っていただかなくてはなりません。では、20代の方に「購入する」というアクションを起こしていただくにはどうしたらいいのか。この課題が、今回の取り組みのきっかけといえるかもしれません。
実際に自分で冷凍食品を買うようになるのはいつか? と考えたら、「自分で自分の食を賄わねばならなくなったとき」でしょう。振り返るとそれは、ライフスタイルが変わる一人暮らしのタイミングだと思ったのです。
親元を離れるとき、親御さんが一番心配されるのは"食"です。進学・就職で実家を出たばかりで、料理経験が少ない、慣れない環境で調理にまで気を配れない、そんな一人暮らしの"食"を冷凍食品がお手伝いできるのではないかと考えました。そこで、ヤマダデンキさまに「一緒に若年層・単身世帯の新生活を応援する取り組みができないか」とご相談させていただいたのです。
キャンペーン対象として小型冷蔵庫の他にもさまざまな家電製品を検討しましたが、若年層は炊飯器をあまり買わなくなってきていると聞きますし、電子レンジだとプレゼントした冷凍食品をすぐに食べきらないといけないかもしれません。ですので、プレゼントの冷凍食品詰め合わせをそのまま保管できる小型冷蔵庫をを対象として提案したところ、ご快諾をいただくことができました。
──キャンペーンで「本格炒め炒飯」を前面に打ち出している理由とは?
やはりご飯ものは、日本人にとって食事のベースとなるものです。時を選ばないという冷凍食品のメリットを一番感じられる商品だと考えました。もちろん「本格炒め炒飯」が今年20周年であり、発売以来連続で売上No.1を達成している、本当においしい商品だということを知ってもらいたいという思いもあります。
現在では各社様が発売されていますが、実は20年前までの冷凍炒飯は"中華風まぜごはん"のような商品ばかりで、本格的に炒めた冷凍炒飯はありませんでした。そのような中で3年の開発期間を経て、2001年に発表したのが「本格炒め炒飯」です。
発売後も、これまで改良しなかった年はほとんどなかったというほど改良を繰り返しています。焼豚も自社で作るようにし、その煮汁も活用して味わいを向上させました。2015年には大改良を行い、約30億円をかけて生産ラインを改良しています。プロの調理工程を研究し、中華鍋を煽る温度や具材の量、投入タイミングなども再現しました。
その他、8月8日を"パラパラ"にちなんで「チャーハンの日」として日本記念日協会に申請、登録しました。以降「チャーハンの日」にあわせて、量販店の店頭や、本社ビル入り口で炒飯を無料で振る舞ったりしています。昨年は残念ながら新型コロナウイルスの影響で実施できませんでしたが、早くまた実施できる日が来れば良いなと思っています。
ユーザーの調理の手間を代行するニチレイフーズ
──渡辺様がお仕事を行う上で心掛けていることや、読者の皆様に向けたメッセージなどありましたらお願いします
当社の従業員のモットーに「ハミダス」という言葉がありますが、私はこれを大事にしています。「自分の殻をハミダス」「部署の壁をハミダス」など、人によって解釈は異なりますが、私は「仕事を受け渡すときに、自分からみた川上・川下のことを考えて配慮すること」だと思っています。どんな仕事も自分だけでは完結できませんから、前後を思いやって少し「ハミダス」ことで、業務がよりスムーズになると感じています。
ニチレイフーズでは、みなさんが毎日お忙しい中でなかなか料理を作れないという部分をサポートできるよう、我々が「厨房代行」という形で事前に調理して、急速冷凍ですぐに召し上がれるよう商品を作っています。みなさんの生活のお役に立てるよう、こだわりをもって丁寧に商品を作っていますので、一度チャレンジしていただけるとありがたいなと思います。