■コンセントとフリーWi-Fiを追加したグリーン車、内装に高級感も
帰りは千葉駅から久里浜行の列車に乗り、横浜駅へ戻る。グリーン車の4号車に乗車し、2階席を利用した。乗ったのが17時すぎで帰宅時間帯にさしかかっていることもあってか、筆者が乗車した時点で4号車の2階席は半分ほど埋まっていた。本やスマートフォンを手にした人、軽食を取る人など、車内での過ごし方はさまざま。それでも感染症対策のため、飲食を除いて全員がマスクの着用を忘れていない。
E235系1000番台の最大の特徴は、やはりグリーン車にあるだろう。普通列車のグリーン車では初というコンセント(AC100V)やデジタルサイネージが備わり、車内でフリーWi-Fiも使用可能。とくにデジタルサイネージは、他の車両と同様、次の駅と同時に乗換案内や構内図などが表示されるため、わかりやすい。車内も一部箇所を除いて壁が黒くなり、高級感のある雰囲気になった。
座席は、背もたれの上半分がグレーで、背もたれの下半分と座面が紫のモケットとなっている。正直なところ、座った感触は従来の普通列車グリーン車とあまり変わらなかったが、コンセントやフリーWi-Fiが備わったことで、利用する機会が多くなるかもしれない。リクライニングシートも顕在で、使いこなせば快適に移動できそうだ。電源のコンセントとリクライニングのボタンは両方とも、通路側の席は通路側、窓側の席は窓側の肘掛に設置されていた。
■グリーン車でゆったり、町の夜景を眺めながら移動
久里浜行の列車は各駅停車(中央・総武線)を追い抜きながら走り、幕張~幕張本郷間では幕張車両センターの横を通過。日が落ちてしまったので外はあまり見えないが、日中は車両センター内に停泊中の車両をいくつも眺めることができる。昼間に立ち寄った際は、津田沼駅からの折返し準備をしているE235系1000番台や、3月のダイヤ改正でデビュー予定の新型車両E131系も見ることができた。
幕張駅から幕張本郷駅まで、JR線の隣を京成千葉線が並んで走っている。京成電鉄の車両だけでなく、白色・ピンク色のカラーリングが個性的な新京成電鉄の車両も千葉中央駅まで乗り入れ、鉄道好きには注目のポイントといえる。各駅停車に乗り換えて幕張本郷駅で降り、近隣の跨線橋に移動しても、じっくり電車を眺められる。筆者が跨線橋を訪れた際、電車を見に来た親子の姿もあった。
引き続き、E235系1000番台は進行方向左手の各駅停車を追い抜きながら総武快速線を進む。各駅停車が両国駅に到着するところで総武快速線は地下区間に入り、馬喰町駅、新日本橋駅を経て東京駅へ。ここから横須賀線となり、さらに横浜・逗子方面へ向かう。
夜になったとはいえ、2階席は普通車やグリーン車の平屋席と比べて眺望性に優れている。窓の外に目を向ければ、沿線の住宅が明かりを灯す光景を見ることができる。他の乗客で窓の外に目を向ける人は少なかったが、リクライニングシートにゆったり腰掛け、車窓をぼんやり眺めながら電車に揺られ、帰路につくのも良い選択だと思う。
多摩川を渡ると、再び東海道新幹線を眺めつつ、武蔵小杉駅へ。新川崎駅を経て東海道線と合流し、18時26分に横浜駅に到着した。筆者はここで下車したが、電車は横浜駅から先も横須賀線の久里浜駅まで走る。15両編成のため、逗子駅で付属編成(4両編成)の切り離しが行われる。横須賀線で逗子~久里浜間に乗車する場合は、グリーン車が連結されている基本編成(11両編成)にあらかじめ乗っておくと、号車を移動する手間が省ける。
E235系1000番台の普通車とグリーン車、両方に乗った感想としては、両方の車内設備をアップデートしつつも、グリーン車の付加価値がより高まったように感じた。従来のリクライニングシートだけでも十分ありがたいが、コンセントやフリーWi-Fiのおかげで、グリーン車でできることがさらに幅広くなり、追加料金を払う分のリターンが見込めると思う。普通車も新型車両に見合うように改良されており、利用しやすく、そしてわかりやすくなった。
セミクロスシートの廃止は残念だが、東京近郊での乗降が多いという利用動向を踏まえると、素直に受け入れるしかないだろう。結論としては、単に乗るだけなら普通車、快適性や充電・作業などの時間が必要ならグリーン車というような使い分けができるのではないか。乗車時の状況に合わせ、適切なほうを選択してほしい。