「免疫力を上げる」という言葉をよく耳にしますが、そもそも免疫って何でしょう? 私たちの身体をウィルスなどから守る機能ということはなんとなく知っていますが、実はよくわかっていない……。

ということで、今回は運動免疫学の鈴井先生に免疫のメカニズムとともに運動との関係を教えていただきました。強い運動よりも適度な強さの運動のほうが免疫機能を下げない!? というお話は必見です!

後編では、「 強い運動をした後ほど免疫細胞が減少」「有酸素運動を習慣にしている人は風邪に強い?!」「適度な強さの運動が新旧の免疫細胞の入れ替えを促す」「ニコニコペースの自転車運動で戦えるカラダに」といった内容について伺います。

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▼教えていただく先生
明治大学 経営学部 鈴井 正敏 教授,博士(医学)

1982年明治大学経営学部経営学科卒業後、筑波大学体育研究科コーチ学(スポーツ生化学)修了。1998年4月より現職。主な研究テーマは健康科学、運動とNK細胞。明治大学体育会自転車部の副部長も務めている。

――アスリートはよく風邪をひくということですがそれは運動強度にも関係しているのでしょうか?

運動強度との関係は大いにあると考えられます。強い運動では血液中のリンパ球が大幅に増加し、運動後一時的に減少するというアップダウンの激しい傾向にあります。一方、有酸素運動のような強度がさほど強くない運動では運動中の増加が見られるものの運動後の急激な低下はほとんどありません。つまり有酸素運動レベルの方が免疫機能は安定的な状態を保っています。

――強い運動の後に一時的にでも免疫細胞が減少するとウィルスなどに感染しやすい状態になるのでしょうか?

はい。強い運動後の免疫機能が抑えられた状態になると感染リスクが高まるとする「オープンウィンドウ仮説」という考え方があります。しかし、NK細胞の場合、強度の高い運動後に全体の活性が落ちるものの細胞一つひとつの活性は落ちていないことがわかっています。これが、強い運動後に誰もがすぐに風邪をひくわけではない理由だと考えられます。

――なるほど。では有酸素運動と免疫機能との関係はどうでしょうか?

習慣的にウォーキングなどの軽めの有酸素運動を行っている人は風邪をひきにくいというデータがあります。これはまだメカニズムが解明されているわけではありませんが、適度な運動によって新旧の免疫細胞が入れ替わるターンオーバーが促進され、成熟した機能の高い細胞が存在する状態をキープできている、結果ウィルスやがん細胞に対して戦える力になっているのではないかと考えられます。

――ということは、免疫機能を維持し、戦える身体になるためには有酸素運動が合っていると感じます。

運動習慣や体力レベルにもよりますが、免疫学的には普段運動していない人が頑張ってハードな運動をする必要はなく、有酸素運動で充分です。週に数日程度、自分にとってちょうどいいと感じるニコニコペースで気持ちよく運動する方が免疫機能の維持向上につながると考えられます。

――ということは、もちろん自転車運動も免疫機能の向上につながると考えられますね?

もちろんです。自転車によるニコニコペースの運動を続ければ、有酸素運動として動脈硬化を防ぐなどのさまざまな作用があり、変速することで強度のコントロールが容易なことも特徴です。また風を切って気持ちよく走れる快感が免疫細胞の活性化にもつながっていきます。特に自転車は運動習慣のない中高年世代にとってベストなツールだと思いますね。

――先生、そのニコニコペースで運動する際の目安はありますか?

心拍数などで測る方法もありますが、私はまず自分の感覚を信じ、身体の内なる声を聞くということでいいと思います。自分にとって疲れすぎない程度の運動をまずは楽しみ、それを継続しながら徐々にニコニコのレベルを上げていくといいでしょう。

――わかりました。では最後に、免疫細胞に良い働きをもたらす運動以外の生活習慣は何でしょうか?

食事については身体にいいとされる何かを偏って食べることよりも、普通にバランスの良い食事を心がけることが一番です。アスリートであれば栄養学的なケアが必要になりますが、運動量が少ない一般の方が気をつけるべきことはまずバランス。免疫細胞のエネルギー源は唯一筋肉で生成されるアミノ酸です。筋肉が少なくなると免疫細胞もバテてしまいますから、筋肉を維持し鍛えるための適度な運動と偏りのない食事を心がけていただきたいですね。

――風邪をひきにくく、ウィルスなどと「戦えるカラダ」作りには有酸素運動が適しており、頑張りすぎなくていいというお話はとても意外でした。鈴井先生ありがとうございました!

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※この記事はCyclingood掲載「免疫を強くする運動との関係とは?」より転載しています。