スポーツ関連や選挙の結果報道の場面などで使われることが多い「惜敗」。簡単そうな漢字に見えて、意外と読み方がわからない人も多いのではないでしょうか。

本記事では「惜敗」の詳しい意味や正しい読み方、スポーツや選挙における使い方と例文を紹介。類語との違いや英語表現もまとめました。

  • 「惜敗」について

    「惜敗」は簡単な漢字で意味も予測できそうなのに、意外と読めない人が多いので注意が必要です

「惜敗」とは? 意味や読み方をわかりやすく解説

「惜敗」の意味は、「競技や試合などの勝負事において、わずかの差で、惜しくも負けてしまうこと」を指しています。

1点差で負けてしまった場合や、大健闘をしたけれども惜しくも敗北に終わった場合のような勝負を表現したいときに使う言葉です。

「惜敗」の読み方は「せきはい」 - 「しゃくはい」「ざんぱい」は誤り

「惜敗」は簡単な漢字ではあるものの、読み方に悩んでしまう人も多いのはないでしょうか。「惜敗」の正しい読み方は「せきはい」です。

「しゃくはい」と読み間違える人も多いですが、これは間違いです。「惜」には「しゃく」という読み方が存在しますが、「惜敗」という熟語の場合にはその読み方は適しません。

また「ざんぱい」と読み間違えてしまうパターンが多いので注意しましょう。「惜」の字に「ざん」という読み方は存在しません。これはおそらく、後ほど詳しく解説する「惨敗(ざんぱい)」と混同して間違えている人が多いと考えられます。

一見簡単に読めそうですが、間違えやすい熟語なので、正しい読み方を把握しておきましょう。

「惜敗」は「辛勝」「惨敗」の対義語

野球やサッカーの試合結果、選挙結果などについて報じられるときなどに、よく見聞きする「惜敗」ですが、同じく勝負の結果について言う「辛勝」「惨敗」とは反対の言葉と言えます。

それぞれの意味を細かく見ていきましょう。

辛勝(しんしょう)

「惜敗」は前述のように「僅差で負けること」を意味します。

一方「辛勝」は「僅差で、やっとのことで勝つこと」を意味しており、「負け」ではなく「勝ち」という部分において反対の意味です。

惜敗した側の相手の立場で見ると、「辛勝」と表現することができます。

例えば「4対3で惜敗した」という表現は3点しか取れず負けてしまった側からの表現ですが、「4対3で辛勝した」と表現することにより4点を取って勝った側の表現になります。

惨敗(ざんぱい)

「惜敗」は前述のように「僅差で負けること」を意味します。

一方「惨敗」は、「ひどくみじめな負け方をする様子や、ぼろくそに負けた様子」を意味し、「僅差」ではなく「ひどく、大差で」という部分において反対の意味です。

なお読み方は「ざんぱい」です。前述のように「惜敗(しゃくはい)」を間違えて「ざんぱい」と読みがちですが、そうすると「惨敗」だと思われ、反対の意味で伝わってしまうので注意しましょう。

「惜敗を喫する」とは

「惜敗」は「惜敗を喫する」のように使われることが多いのですが、そもそも「喫する」とはどのような意味なのでしょうか。

「喫する」とは、「飲食物などを口からのどに入れる」「身に受ける・被る(こうむる)」といった意味があります。

「惜敗」と合わせて使われるときには「身に受ける・被る」の方の意味で使われます。「喫する」で被るものは、基本的に好ましくないことであり、プラスのイメージで使うことはありません。

よって「惜敗を喫する」とは、僅差で負けてしまったということのネガティブさが強調された表現だと言えるでしょう。

なお前述の「惨敗(ざんぱい)」もネガティブな意味合いなので、「惨敗を喫する」のように「喫する」と組み合わせることが可能です。

「惜敗」のシーン別の使い方と例文

「惜敗」がよく使われるのは勝負事の中でも、特にスポーツと選挙が挙げられます。日常生活というよりは、ニュースなどで使われることが多いでしょう。

スポーツの実況や結果を表現する : 「5対4の惜敗したレース」「2着惜敗した」

スポーツの場面ではニュースで使われることが非常に多い表現です。

「5対4の惜敗したレースで幕を閉じた」「注目の選手は2着で惜敗した」のように、僅差で惜しくも負けてしまったことを表現します。

主語となるのは負けた方のチームなので、注目を集めていた選手やチームが負けてしまったときに使われる頻度が高いでしょう。

選挙の用語 : 「惜敗率が低い」「惜敗率による決定」

「惜敗率」とは日本の選挙における用語であり、候補者の得票数を同一選挙区で最多得票選者の得票数で割った数字を意味しています。

この数字が高いほど、当選した人との得票数が少ないということになり、僅差で敗れた「惜敗」となります。ただ、この場合は「惜敗」という意味よりは、選挙における用語だという認識で間違いないでしょう。

  •  「惜敗」が使われるシーン・例文

    「惜敗」はニュースや実況などの決まったシーンで使われることの多い言葉で、「惜敗率」に関しては選挙の専門用語と言えます

「惜敗」の由来について

「惜」は残念に思うことや、悲しむこと、もったいないという意味を指しています。心+昔からできており、それぞれ心臓の象形と、積み重ねた肉片と太陽の象形を表現しています。その意味から心を突き刺す痛みを表しており、意味が転じて「おしい」「おしむ」といった今の意味を指す「惜」が成り立ちました。

一方、「敗」は負ける、やりそこなう、失敗するという意味があります。貝の象徴と敝と同じような意味を持つようになり、「やぶれる」という意味と「たたく」の意味を持つようになりました。その意味が転じて、今の負けるという意味を持つ「敗」が成り立ちました。

この2つの漢字を組み合わせてできた「惜敗」は、漢字そのままの意味を示しています。

  • 「惜敗」について

    それぞれの漢字が持つ意味を掛け合わせたのが「惜敗」の意味に当たります。漢字に着目してみましょう

「惜敗」の類語・言い換え表現と、使われ方の違い

「惜敗」は「僅差で負けてしまうこと」なので、それと似た表現が類語として扱われています。それぞれの意味と、「惜敗」とのニュアンスの違いを見ていきましょう。

やりこめられる

「やりこめられる」は、「やりこめる」という動詞に受け身の助動詞がついた形の表現です。

「やりこめる」という言葉は、相手を言いかまし黙らせるといった意味を持つので、「やりこめられる」になると言いかまされる・黙らせられるといった意味になります。

スポーツなどの勝負事というよりは、議論や言い合いにおいて負けたというニュアンスで使われています。言い換えの際にはどのような場面なのかを考える必要があるでしょう。

負け越し

「負け越し」は、負けの数が勝ちの数よりも多くなることを意味しています。主にスポーツにおける勝負に関して使う言葉なので、場面としては「惜敗」に通じるものがあるでしょう。

しかし、僅差での負けを表現しているという意味合いは弱いので、ただ単に負けという意味での類義語になります。僅差でない場合は「惜敗」と言い換えることは難しいかもしれません。

ぐうの音も出ない

「ぐうの音も出ない」は、まったく反論や弁解ができない様子を示しています。

「ぐう」というのは息が詰まったときの声を再現しており、何も言えない様子につながります。

ただ、これもスポーツというよりは口論や口げんかに関する表現である意味合いが強いので、言い換えの際には注意が必要です。「彼女の言った正論に対して彼はぐうの音も出なかった」のように使われることが多いです。

  • 「惜敗」の類義語

    「惜敗」はスポーツにおけるシーンで使われることが多いですが、類義語はそうでない場合もあります

「惜敗」を英語で表現するなら

「惜敗」という単語を表現する場合と、「惜敗する」と動詞のように使う場合で表現方法が異なります。

「惜敗」という単語の表現方法ですが「regrettable defeat」と表すことができます。

「regrettable」は形容詞で「残念な・悲しむべき」といった意味を持ち、「defeat」は「破る・挫折させる・くつがえす」といった意味を持っています。この2つの英単語を組み合わせると、「惜敗」を表現することができます。

また、「defeat by a narrow margin」とも表現することができます。「defeat」は「破る・挫折させる」といった意味で、「narrow margin」は「僅差」を意味します。「by」でつなぐことによって「僅差によって破る」という意味になり、「惜敗」を表現することができます。

ただ、この表現だと破った側が主語になってしまうので、負けた側から表現したい場合には受け身の形にして表現します。「narrow」の部分は、「small」「little」などと言い換えても「惜敗」を意味します。

「惜敗する」と動詞のように使いたい場合には、「lose a close game」と表現するのが望ましいです。「僅差のゲームに負ける」といった表現なので、負けた側を主語にして文章を組み立てることができます。

惜敗とは「惜しくも負けること」を意味する言葉

簡単な漢字であり、ニュースなどでも目にする機会も多い「惜敗」ですが、読み方を間違えやすい単語でもあります。読み方を間違えると全く違う意味になってしまう可能性があるので、正しい読み方を把握しておきましょう。

特にスポーツなどの勝負事に関しての表現なので、言い換える際には注意してください。英語での表現方法も幅広くあるので、場面や状況に合わせた使い分けを身に付けましょう。