「紡ぐ」と聞くと、糸を紡ぐ、というイメージが浮かぶ方が多いでしょう。しかし「紡ぐ」という言葉にはそれ以外の意味も含まれます。日常会話では使う機会が少ない言葉ですが、メールや文書で適切に使うと相手に文学的・知的な印象を与えます。

本記事では、「紡ぐ」という言葉の意味や使い方、参考にできる例文や類義語・英語表現について解説していきます。

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    「想いを紡ぐ」の「紡ぐ」ってどういう意味?

「紡ぐ」の意味をわかりやすくいうと?

「紡ぐ(つむぐ)」という言葉は本来、「綿や繭の繊維を引き出し、縒り(より)をかけて糸を作る」という意味ですが、そこから転じて現代では「言葉を紡ぐ」「歴史を紡ぐ」「未来を紡ぐ」のような比喩表現で多く用いられます。

「紡ぐ」は、「さまざまなものをより合わせ、1つのものを作り出す」という意味で使われることが多いです。

<例文>

  • 高校生達の想いを紡ぐ演奏は人々に感動を与えた
  • このスポットは縁を紡ぐ場所として有名だ
  • 年賀状は人と人との心を紡ぐ日本人にとって大切な習慣だ

「紡ぐ」という言葉の由来になっているのは、綿花や羊毛(ウール)、蚕糸などの繊維によって糸を作る際に用いる道具の「錘(つむ)」だと言われています。この「錘」を使って糸を作ることを動詞として「紡ぐ」と表現するようになりました。

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    「紡ぐ」の意味

「紡ぐ」の関連語

ここでは、「紡ぐ」を用いた表現とその意味をご紹介します。

想いを紡ぐ

「想いを紡ぐ」とは、「一つ一つの想いをより合わせる」というニュアンスで使用されます。

<例文>

  • この作品は、私たち一人ひとりの想いを紡いで創り上げたものです。

心を紡ぐ

「心を紡ぐ」とは、「心を通わせる」というニュアンスで使用されます。

<例文>

  • 協力し合い、助け合い、心を紡いでいくのが仲間だ

言葉を紡ぐ

「言葉を紡ぐ」とは、「言葉一つ一つを選んで文章などの作品を作る」という意味です。

<例文>

  • この手紙は、彼との思い出を振り返りながら言葉を紡いで書いたものだ。

人生を紡ぐ

「人生を紡ぐ」とは、「一つ一つの出来事が、人生を作っていく」というニュアンスで使用されます。

<例文>

  • 他人になろうとするのではなく、自分の人生を紡いでいくことが大切だ

「紡ぐ」の類義語

ここからは「紡ぐ」という言葉の類義語を、例文を交えていくつか紹介します。

結ぶ

「結ぶ」とは、ひもや糸などの細いものを組んでつなぐという意味の言葉です。そこから派生して、「手の指同士をからませる」「手のひらを合わせる」などの動作を表すほか、「お互いの関係を築く」「2つの地点をつなぐ」などといった意味でも用いられます。

<例文>

  • 食べる時に邪魔になるため、彼女は長い髪を結んだ
  • 日本はアメリカと親交を結んでいる

編む

「編む」とは、糸や竹、針金、髪などといった細長いものを互い違いに組み合わせ、1つの形に作り上げる動作を示します。そこから派生して、さまざまな文章を集め書籍にする、その編集をする等の意味も表しています。

<例文>

  • セーターを編むために毛糸を買ってきた
  • 彼は器用に竹を編んでざるを作る

織り出す

「織り出す」とは、糸やウールを使い、模様などを織って作り出すという意味です。それになぞらえて、いくつかの事柄が集まり、それが1つの情景、状況を作り出すという意味もあります。

<例文>

  • たくさんの糸が、鮮やかな模様を織り出している
  • 現場に残された数々の物証から、刑事は事件の真相を織り出した
  • ホワイトボードの資料を見ている人

    「紡ぐ」の類語表現

「紡ぐ」の対義語

紡ぐの意味が「さまざまなものをより合わせ、1つのものを作り出す」であるため、反対の意味を表す言葉は「作り上げたものを元の状態に戻す」または「より合わせたものを分解する」という言葉になります。

解く

「解く」には、結んである紐状のものをゆるめ、分けて離すという意味があります。また、もつれた状態を元に戻す意味があり、この意味になぞらえて、「筋道をたどり回答を導き出す」という言い回しにも使われる言葉です。

<例文>

  • 荷物の紐が固くしばってあったため、解くのに骨が折れた
  • 祖母は傷んだ着物を解き、仕立て直しをする名人だった
  • 解く謎が難しいほど、推理小説は読みごたえがある

ほどく

縫ったもの、結んだりもつれたりしたものや事象をときはなすという意味です。そこから派生して、疑いをはらす、正しく判断するという意味もあります。

<例文>

  • 彼女は編み上げていた髪をほどき、風になびかせた
  • 彼の無罪が証明されたため、警察官達は彼に対する警戒をほどいた
  • ソファーで何かを書く男性

    紡ぐの対義語を覚えましょう

「紡ぐ」の英語表現

紡ぐを英語で言うと「weave」(織る、編む、そこから派生して物語などを作る)または日本語の紡ぐに近い「spin」(糸などを紡ぐ)といった言葉があります。2つの単語について、例文を交えて紹介します。

weave

「weave」には織る、編む、作り上げるという意味があります。into~を使用すると、織り交ぜて1つのものを作り上げる、と言う意味になるため、より日本語の表現に近しいものになります。

<例文>

  • I always weave a basket out of osiers.
    私はいつも柳の枝で籠を編む。
  • The writer wove her story into his own.
    作家は彼女の話を自分の話に織り込んだ。

spin

「spin」には紡ぐ、かける、糸状に加工するという意味があります。

<例文>

  • She spins silk.
    彼女は絹糸を紡ぐ。
  • The old man spins a story.
    老人が物語を紡ぐ。
  • メモを取る人

    「紡ぐ」の英語表現

「紡ぐ」の意味をマスターしよう

「紡ぐ」という言葉は、糸を作り上げる様を表現するだけでなく、比喩表現として複数のものをつなげて作り上げる、という意味も持ちます。

普段の会話はもちろん、職場や取引先での会話や、メールの文章などで、紹介した例文などを参考に、「紡ぐ」という言葉を使ってみてはいかがでしょうか? 上手に使いこなせれば、相手に文学的・知的な印象を与えられることでしょう。