「臥薪嘗胆」という四字熟語を受験勉強で覚えたという人も少なくないでしょう。本記事では「臥薪嘗胆」について読み方や意味、使い方、類語などをわかりやすく解説します。改めて確認して、ビジネスシーンにも生かしましょう。
臥薪嘗胆の意味・読み方とは
早速、臥薪嘗胆の意味などを見ていきましょう。
臥薪嘗胆の意味は、目的を達成するため苦労に耐えること
「臥薪嘗胆」とは、将来の成功のために苦労に耐えることという意味を持つ言葉です。「臥薪嘗胆の思いで~する」のように使われることが多く、目的のために努力を惜しまないという決意や、並々ならぬ強い思いを表現できます。
臥薪嘗胆の読み方
「臥薪嘗胆」の読み方は「がしんしょうたん」です。
臥薪嘗胆の由来・語源は、故事成語の復讐の話から
「臥薪嘗胆」は、中国の『十八史略』に書かれている故事に由来しており、戦死した父の仇(かたき)を討とうとする息子の、そして逆にその息子に降伏させられた他国の王の復讐(ふくしゅう)の話として記載されています。
「横たわる」という意味を持つ「臥」が用いられた「臥薪」は、「硬い薪の上で寝る」という意味です。そして「なめる、味わう」という意味を持つ「嘗」を使った「嘗胆」は、「苦い肝をなめること」という意味があります。
「仇を討つためには自身が過酷な状況にあろうとも、その時が来るまで苦労を重ねることをいとわない」という表現になります。
日本の歴史に出てくる臥薪嘗胆はスローガン
日本史でも、明治時代の三国干渉の際に「臥薪嘗胆」が登場します。
三国干渉とは、ロシア・ドイツ・フランスが、日清戦争で日本が獲得した遼東半島の返還を要求したことをいいます。当時の国力の差などもあり、日本はこの要求を受け入れましたが、国民は反発。この出来事を教訓に「臥薪嘗胆」をスローガンとし、日本は国力を増進していきました。
ビジネスにおける臥薪嘗胆の使い方と例文
「臥薪嘗胆」はビジネス上の苦労を伴う努力を表現する際にも使われています。経営者の言葉などで使われていることも多く、ビジネス上の使われ方を参照すれば、定型として活用しやすくなるでしょう。
ここでは、ビジネスシーンでよく使われている「臥薪嘗胆」を含む例文を紹介します。使い方のパターンを学びましょう。
臥薪嘗胆の末
「臥薪嘗胆の末」とは、苦労して努力した結果を述べるときに使われます。
<例文>
- 臥薪嘗胆の末、重要顧客からの受注に至った。
臥薪嘗胆の思いで
「臥薪嘗胆の思いで」は、取り組んできたことへの思いを述べる際に使われます。
<例文>
- 今回のプロジェクトには臥薪嘗胆の思いで取り組んできた。
- 臥薪嘗胆の思いでやっていたのはこの日のためだ。
成功者が事業への取り組み方を振り返るときや、政治家や経営者が苦境を乗り切った経験を述べるときなどにも使われています。
臥薪嘗胆する
「臥薪嘗胆する」という言い方は、目的に向かって苦心し、努力を重ねることという意味になります。
<例文>
- 長丁場になるが、プロジェクトの成功を信じて臥薪嘗胆する。
- 臥薪嘗胆し、成果を出せた。
臥薪嘗胆の類語・言い換え表現
「臥薪嘗胆」の類語の意味と使い方を、例文を交えて解説します。
辛酸をなめる
「辛酸をなめる」の「辛酸(しんさん)」には、つらく苦しい思いという意味があります。その「辛酸」をなめることから、つらく苦しい思いを味わう、経験するという意味になります。
「臥薪嘗胆の末、今の地位についた社長の言葉には重みが感じられる」は「辛酸をなめつくしてきた社長の言葉には、重みが感じられる」のように言い換えられます。
捲土重来を期す
「捲土重来(けんどちょうらい)」とは、一度失敗してもすごい勢いで盛り返すことを示す言葉です。「けんどじゅうらい」と読まれることもあります。「捲土重来を期す」は、再起を期待するときに使うのが一般的です。
「一度沈んでも捲土重来を期するカリスマ経営者」のように使います。「臥薪嘗胆」を使うと「沈んでも臥薪嘗胆するカリスマ経営者」のように言い換えられます。
漆身呑炭
「漆身呑炭(しっしんどんたん)」とは、仇を討つことや、復讐するためには苦しみや苦労をいとわないという意味を持つ言葉です。「臥薪嘗胆」と意味が重なるため、単純に置き換えて使うことも可能です。
「相手を見返すために、漆身呑炭して機を狙ってきた」という文章は、「臥薪嘗胆して機を狙ってきた」としても同義となります。
堅忍不抜
「堅忍不抜(けんにんふばつ)」とは、何があっても動じずじっと我慢し、堪え忍ぶことという意味の言葉です。
「堅忍不抜の精神でやり抜いた結果、成功するに至った」という文章は、「臥薪嘗胆の精神でやり抜いた結果」としても同じような意味で伝えられるでしょう。
臥薪嘗胆の対義語
「臥薪嘗胆」の対義語を覚えておくと、対比する文章を組み立てられます。ビジネスシーンでも対比する文章はよく使われるため、対義語を覚えておけば表現できる範囲が広がるでしょう。
ここでは、「臥薪嘗胆」の対義語の意味と使い方を、例文を交えながら解説します。使える状況も踏まえて正しく使えるようになりましょう。
再起不能
「再起不能(さいきふのう)」は、病気が治る見込みがないという意味の言葉です。転じて、失敗や挫折から立ち直れない状態の表現として使われることもあります。
<例文>
- 彼は事業に失敗して再起不能かと思われたが、臥薪嘗胆の思いでついに再起へとこぎつけた。
一蹶不振
「一蹶不振(いっけつふしん)」は、失敗や挫折をして再起できないという意味で使われる言葉です。「蹶」はつまずく、「不振」は勢いがなくなる様子を表します。
<例文>
- 一蹶不振、失敗を知らなかった彼にとっては、この失敗は耐えられなかったようです。
臥薪嘗胆の英語表現
「臥薪嘗胆」を英文で表現したいときには、「忍耐(力)」の意味を持つ「perseverance」が用いるとよいでしょう。
<例文>
- After persevering, I finally passed the National Examination for Medical Practitioners.
私は臥薪嘗胆の末に医師国家試験に合格した。
座右の銘にも使われる言葉「臥薪嘗胆」
「臥薪嘗胆」は、普段の生活ではあまりなじみのない言葉でしょう。しかし、座右の銘やビジネスシーンでは使われる機会もあるため、言葉の意味や使い方を把握していないと相手に良い印象を与えられない可能性があります。
難しい言葉ですがきちんと理解して、ビジネスシーンで正しく使いこなしましょう。