3列シートの大型SUVが今、存在感を増しつつある。SUVという流行のボディスタイルである上、走りも楽しめて、いざとなれば大人数で乗ることも可能。そんな欲張りなクルマだ。

見た目はギア感があってカッコいいし、車高が高いので視界が良く、運転も楽しい。ある程度のオフロードであれば十分こなせるので、行動範囲が広がる。ミニバンではないので3列目は少し狭いが、まあ我慢できる範囲だ。そのスペースは広い荷室としても使える。これだけメリットがたくさんあれば、人気が出るのも納得できる。今回は日独の大型SUV5台をピックアップし、3列目の使い勝手を含めて比較してみた。

  • 3列シートSUVが勢ぞろい

    3列シートSUVは1990年代に大人気だったステーションワゴンに取って代わったといえるかもしれない。2000年代にブームだったミニバンも、大型で3列スライドドア仕様の本格派だけが残り、その他は3列SUVの波に飲み込まれてしまうほどの勢いだ(本稿の写真は撮影:原アキラ)

トヨタ自動車「ランドクルーザー」や三菱自動車「パジェロ」など、3列シートを採用した4WDモデルは昔から、あるにはあった。だが、当時のモデルは本格的なオフロード性能(つまりは4WDによる走破力)を持つことが第一に評価されるクロカン四駆で、CMやラリー競技への参戦実績などでその部分を強調していた。一方で、燃費や乗り心地といった乗用車的な要素はあまり重要視されていなかった。

しかし、近年の3列SUVは、最新設計のボディやシャシー、パワートレインを採用することで、冒頭に述べたような魅力をしっかりと発揮できるクルマに仕上がっている。実際、ここ数カ月の間に参加した試乗会でも、そうしたモデルに乗ることが多かった。今回は、それらをまとめた報告となる。まずは、日本国内で最も多くのSUVモデルをラインアップするメルセデスから2020年6月に登場したばかりの「GLB」だ。

  • メルセデス・ベンツ「GLB」

    3列シートSUVの新たな選択肢として登場したメルセデス・ベンツ「GLB」

メルセデス・ベンツの「GLB」と「GLS」

GLBのボディサイズは全長4,640mm、全幅1,835mm、全高1,695mm、ホイールベース2,830mmとコンパクト。3列シートを備えた7人乗りが標準となる。前後ピラーを垂直方向に立てた四角いデザイン(同社の「Gクラス」をイメージしたという)のキャビンとすることで、広い室内空間を稼ぎ出している。

2・3列目シートはどちらも手動。2列目は60:40の分割可倒式で、前後のスライド幅は140mmだ。3列目にアクセスする際には、2列目バックレストにあるロック解除レバーでシートを前に倒し、前端にスライドさせる。乗り込むためのスペースは十分といっていいだろう。

  • メルセデス・ベンツ「GLB」

    アクセスが容易な「GLB」の3列目シート

3列目シートには168cmというメーカー指定の身長制限があるものの、それ以下の身長であれば、比較的余裕をもって座ることができるはず。ISOFIX(アイソフィックス)のチャイルドシート固定用アンカーを備えているので、最大で4座のチャイルドシートが取り付けられる。荷室容量は3列目を立てたままであれば130Lだが、2~3列目を倒してフラットな床面にすれば1,680Lまで拡大する。

エンジンは2.0L4気筒のディーゼルターボとガソリンターボの2種類。最高出力150PS、最大トルク320Nmを発生するディーゼルターボはFFモデルのみの設定だが、SUVらしくゆったりとしていて過不足のない走りだ。224PS/350Nmのガソリンターボは、4WDで峠道を楽しめるほどの走りを披露してくれる。価格はそれぞれ512万円と696万円。GLBは筆者の中ではカーオブザイヤー級の出来栄えだと思う。

  • メルセデス・ベンツ「GLB」

    2~3列目を倒せば広大なラゲッジルームが出現

メルセデスからはもう1台、フルサイズSUVの「GLS」をご紹介したい。ボディは全長5,220mm、全幅2,030mm、全高1,825mm、車重2,590キロと巨大で、3,135mmの長いホイールベースをいかした室内空間には全く不満なし。40:20:40の分割可倒式2列目シートは電動のシートスライド機構をもち、最も後方の位置だとレッグルームがさらに87mmも拡大する。

  • メルセデス・ベンツ「GLS」

    メルセデス・ベンツ「GLS」は巨体をいかした広い室内空間が特徴

3列目は幅1,290mm、高さ990mm、座面長445mmの本格的な2座席で、身長194cmの乗員まで対応可能となっている。当然こちらもフル電動で、シートヒーターまで備わっている。ラゲッジは3列使用時で355L、2~3列目を倒せば2,400Lまで拡大するのでこちらもすごい。

シート関係で1つだけ気になったのは、3列シートに乗り込むために2列目を倒した際、はっきりと見えてしまうモーターと配線のコード類だ。これは、「SUVのSクラス」らしくない。

試乗した「400d」は330PS/700Nmを発生する3.0L直列6気筒ディーゼルターボを採用。ショックを全く伝えない9速ATが、1,200回転という低回転域からあふれるトルクを路面に伝えてくれる。アクセルを踏み込むと3,000回転あたりから5,000回転近くまでタコメーターの針はスムーズに上昇し、重いボディが豪快に加速していった。価格は1,263万円となっている。

  • メルセデス・ベンツ「GLS」

    3列目は多人数乗車が必要になった際に人が座る「エマージェンシーシート」的なものも多いが、「GLS」のものは快適に乗れる作りとなっていた

BMW「X7」

メルセデスの対抗馬としては、BMWのフルサイズSUV「X7」に乗った。

  • BMW「X7」

    BMW「X7 M50i」は広くて使いやすい3列シートを備え、動力性能も一級品だ

ボディサイズは全長5,165mm、全幅2,000mm、全高1,835mm、ホイールベース3,105mmとGLSよりわずかに小さい。シートは2列目が前方にスライドし、さらに後端が持ち上がる電動ウォークイン機構を採用。3列目へのアクセスは容易だが、モーターの動きが遅いのがちょっと気になるところだ。

  • BMW「X7」

    リアゲートは独特の上下分割式を採用

3列目のシート自体は上下左右に余裕があり、足元も含めて身長170cm弱の筆者であれば全く問題がなかった。座ったままで容易に手が届く位置に空調やシートヒーターのパネルを備えていて使いやすいし、頭上に3列専用のサンルーフがあるので明るいのもいい。ラゲッジはシートアレンジにより326L~750L~2,120Lまで拡大するけれども、フルフラットになるわけではない。

動力性能としては、試乗車が530PS/750Nmを発生する排気量4.4LのV8ターボエンジンを搭載する「M50i」だったので、スポーツモードを選択しての走りは豪快そのもの。それでいて乗り心地もいいのだからたまらない。1,603万円という価格にふさわしい出来栄えとなっている。

  • BMW「X7」

    「X7」の3列目シートも使いやすいという印象だった

アウディ「Q7」

ドイツ御三家の一角であるアウディでは、3列7人乗りの「Q7」に乗った。

  • アウディ「Q7」

    試乗したアウディ「Q7 55TFSIクワトロ」

ボディは全長5,065mm、全幅1,970mm、全高1,735mm、ホイールベース2,995mmと、X7よりさらに小さくなる。2列目、3列目が電動式なのはこのクラスでは当たり前で、35:30:35の分割可倒式2列目シートはラゲッジ面と同じ高さに倒れ、フルフラットになるのがいい。ラゲッジは295L~770L~1,955Lの範囲でアレンジ可能。気になったのは、3列目シートの足元にスペースが少なく、2列目下に足先を滑り込ませる余裕もないので、エマージェンシーシートとしての域を出ないところだ。

試乗車の「Q7 55TFSIクワトロ」が採用するパワートレーンは、340PS/500Nmを発生する排気量3.0LのV6ガソリンターボ+48Vマイルドハイブリッドシステムなので、大柄な車体にもかかわらず、走りはとてもスムーズで気持ちがいい。3列目をあまり重視しないユーザーであれば、947万円というライバルより少しリーズナブルな価格も魅力となる1台だ。

  • アウディ「Q7」

    「Q7」の3列目シートは足元のサイズが不足気味

マツダ「CX-8」

では、日本車でこれらに対抗できるのは? そんな気持ちで乗ったのは、マツダの3列シートSUV「CX-8」だ。デビューは2017年と少し前になるが、2018年から2020年上半期までは、このクラスで国内の販売台数トップを維持し続けてきたクルマである。先ごろ登場したマイナーチェンジモデルでは、売れ筋である上級モデルの上質感がさらに増した。

  • マツダ「CX-8」

    マイナーチェンジ後のモデルが2020年12月17日に発売となったマツダ「CX-8」

ボディは全長4,900mm、全幅1,840mm、全高1,730mm、ホイールベース2,930mmとドイツ勢に比べれば小さいが、ミニバン開発で得たノウハウがいきているようで、3列目へのアクセスや使い勝手はとてもいい。3列目シートのサイズも、前出のフルサイズモデルに引けを取らない。ラゲッジも230L~572L~奥行き2,320mm(最大容積は不明)と十分に広い。

  • マツダ「CX-8」

    3列目へのアクセスはシンプルで容易。サイズやスペースに不満が出ないよう、よく工夫されている。写真はマニュアル式シートのものだが、上級モデルでは電動シートを採用している

今回のマイナーチェンジでは、2.2L直列4気筒ディーゼルエンジンの最高出力が10PSアップして200PS/450Nmとなった。このサイズのボディに対し、過不足のないパワーを発揮するパワートレインだ。美しいスタイルに加え、日本の道路事情に合わせて車幅を抑えたというサイズ感も評価できる。価格は最上級モデルでも500万円をわずかに切る499万9,500円なので、こちらも大変魅力的だ。