――塚田さんのプロデュースしている『魔進戦隊キラメイジャー』について聞かせてください。2020年3月からスタートした好調のまま年を越し、いよいよ物語もクライマックスを迎えようとしています。最初の10話あたりのタイミングで"コロナ禍"となり、撮影スケジュールが大幅に変更されたことについてどう思われましたか。

コロナ前と後では撮影をとりまく状況やいろいろなことが変わり、大変なことも多かったですね。でも、こんな風に社会全体が暗く沈んでしまうような状況だったからこそ、"キラキラ輝く"という『キラメイジャー』ならではのモチーフを物語にしっかりと活かすという番組の姿勢がハッキリしたと思っています。毎回テレビを観たあとはポジティブになるというような、エピソードごとの面白さを意識して、作り上げることができました。"緊急事態宣言"で撮影がストップしたときでも、トーク番組風の総集編「キラトーーク!」を作るなど、工夫によっていろいろなことができましたし、新しい発見もありました。

――エピソード25から、敵のヨドン軍に新幹部ヨドンナが登場します。スーパー戦隊シリーズの中でもひさびさとなる、素面の女優が演じる悪の大幹部・ヨドンナは、演じる桃月なしこさんの熱演もあって人気キャラクターとなりました。ヨドンナの登場は当初から意図されていたのですか。

1年は長いので、敵側にもある程度の変化を与えなければいけないなと、当初からなんとなく構想はしていました。なしこさんはオーディションで決めたのですが、とても魅力的なキャラになってくれました。敵幹部として出てくることは予告では伏せて、ゲストに可愛い巫女さん登場としか紹介していなかったため、オンエアを観た人の驚きが大きかったようです。事前情報で脚本のサプライズを損ねたりすることがなく、よかったと思いました。

――『キラメイジャー』はメインの荒川稔久さんをはじめ、下亜友美さん、三条陸さん、井上テテさん、金子香緒里さん、横手美智子さんと多くの脚本家が参加されていて、ストーリーもキャラクターの個性を活かしたバラエティ感のあるものが多かったですね。

『キラメイジャー』の場合、プロデューサーが全体の脚本コントロールをする部分は大きかったと思います。新ロボとかパワーアップとかの部分はこちらで調整しながら、それぞれの脚本家さんたちにふっていきました。あとは、基本1話完結のストーリーの中で、いかに面白い脚本が出来るか、妥協なく打ち合わせを重ねました。

今年放送のエピソード40では、『特捜9』や『相棒』などで活躍されている徳永富彦さんに脚本を書いていただきました。徳永さんが特撮ヒーロー作品を書くのは初めてでしたが、ダメ元でお願いしていて、このタイミングで実現しました。圧倒的に「こういうものを書きたい」というヴィジョンが明確で、そのプロットに対し、僕たちスタッフが『キラメイジャー』ワールドに"落とし込む"作業をしました。おそらく『キラメイジャー』屈指の異色作として話題になると思います。ぜひ期待していてください。

――塚田さんにとって久々となる特撮ヒーロー作品『キラメイジャー』の1年間をふりかえって、ひとことご感想をお願いします。

主演の6人には、1年間ずっと"キラキラ"した状態でいてくださいと言わば強要してきたわけで、みんな大変だったと思います(笑)。でも、キラメイグリーン/速見瀬奈役の新條由芽さんが「自分自身はもともとインドア派だったけれど、前のめりに行動する瀬奈を演じ続けるうちに、そのキャラに引っ張られて、どんどん明るく行動的に変わっていった」と話していて、うれしく思ったんです。キラキラを演じ続けてきたことが、現実の俳優であるみんな自身をキラキラさせることになったんだな、って。そういうことって確かにあるんですよね。感激しました。だから僕自身も、コロナ禍や様々な変化で大変な1年間だったけど、すごくキラキラした印象の1年でありました。

――最後に、今回の東映芸術職(脚本家職)に応募しようと意欲を燃やす、若きクリエイターのみなさんにひとことエールをお願いします。

僕は最初の頃、京都撮影所のテレビ部で、時代劇作品にプロデューサー補としてついていたんですが、そこで脚本家としてご一緒したのが、『トラック野郎』シリーズなど東映娯楽映画で監督として有名な鈴木則文さんでした。則文さんが京都の宿にこもって書いた原稿を、僕が受け取りに行ったりしていたので、「塚田、どうだ。この脚本、面白いか」みたいな感じで、新人スタッフとしてとても可愛がってもらいました。そんな中、僕も見よう見まねで脚本を書いたのが、松方弘樹さん主演の『遠山の金さんVS女ねずみ』の1エピソードです。先輩の亀岡正人プロデューサーに見てもらったら「面白いんじゃないの」と言われ、則文さんに直してもらって「共同脚本」という形で世に出してもらいました。このときの「自分の書いた脚本が映像化された」喜びは、今でも忘れられません。もう、こんな精神的快感があるのか!と興奮しました。まだ実現に至っていない脚本家志望の方々には、この快感をぜひ味わって欲しいです。応援します。我こそはと思う方はぜひ、今回の脚本家採用に応募してみてください!