あなたの会社の「経営計画」をチェック
前回は、「人事評価制度」に対する会社の考え方や運用プロセスを通じて、長期的に成長することができる会社なのか、見極める方法をお伝えしました。
一方、経営手法やその推進方法で、将来の発展が期待できる会社かどうかを見極めることもできます。とくに不安定な経営環境が続いているこのご時世、経営層の判断や会社の戦略が大きく企業の将来を左右することはいうまでもありません。
現在の勤務先はもちろん、これから転職を考えている読者も、ここをしっかり見極めて、どこに身を置くかを選択しなければ、人生設計に甚大な影響を及ぼしかねません。これから、その見極めポイントを具体的にご紹介しますので、しっかり確認し、これからの人生をハッピーなものとしてください。
会社の将来性を判断する5つのポイント
経営手法について、その会社の将来性を判断できる視点は5つあります。
まずは、「経営計画」があり、社員に公開されているかどうかです。さらに、その経営計画の内容は、組織が成長するために必要な要素が盛り込まれている点も重要です。
経営計画に基づいて会社を発展させるためには、作成後、社員全員と共有、推進していきながら、そこで掲げる方向に組織を導いていかなければなりません。そのためには、「経営計画発表会」を毎年行うことが必要です。
その場には全社員が出席するか、社員数が多い会社であれば、後日映像などで全員が視聴できるような工夫がなされているかを確認しましょう。
次に、「経営計画」に必要な要素ですが、7つの要素が盛り込まれていることが重要です。それは「経営理念」、「基本方針」、「行動理念」、「ビジョン」、「事業計画」、「戦略」、「人材育成計画」の7項目になります。
「経営計画」が存在するかだけでなく、この7つが盛り込まれたものになっているかを検証してみましょう。
会社の「理念」を持ち歩いていますか?
2つ目は、理念を浸透、実践するための仕組みや共有する場があるかどうかです。いうまでもありませんが、経営計画の中で一番重要なのは「経営理念」です。
自社はなんのために存在するのか、最終的にどこを目指しているのかを示したもので、この経営理念を、どんな考え方、方向性で実現するのかを示したのが「基本方針」、そのために社員はどう行動すればよいのかが「行動理念」です。
成長している組織は、必ずこれら理念をテーマに会議やミーティングを行っています。そこで、理念を定めた背景や、具体的に仕事の中でどう実践したらよいのか、また顧客や関係先に対してどう打ち出していけばよいのかなどを伝え、検討し、事例を報告しあったりするのです。
また、理念を明記したいつも持ち歩けるカードサイズのもの(クレド)を作成し、全社員に携帯させているということを行うなど意識付けの仕組みがあるかどうかもチェックポイントです。
事業計画の年数や社員への情報公開も重要
3つ目は、経営計画の中の「事業計画」は5年以上先まで作成されているかです。私が関与しているクライアントでは、すべて「10カ年事業計画」として10年先までの数値計画とビジョンを経営計画には盛り込んでいます。できるだけ遠い将来まで見据えて経営をしている会社の方が、社長の経営能力が高いからです。
また、あなた自身、今年度の計画しかない会社と10年先まで成長計画が見えている会社があるとしたら、どちらの会社で勤めたいですか? どちらの方がやりがいや安心感を持って仕事に取り組めますか? 10年先まで見えている方が、あなたのキャリア計画や生活設計もやりやすく、「この会社でがんばってみよう」となるはずです。
4つ目は、戦略推進会議が毎月定期的に行われ、共有され、部門メンバーに役割が落とし込まれているかどうかです。
全社目標を達成するための戦略ですから、全社員と共有しながら推進していくのは当たり前ですが、こうしたことも役員や管理職のみで推進していたり、その情報も公開されていなかったりする会社が多いものです。
これでは、全社一丸となって目標に向かって邁進している組織とはいえません。結果として目標の達成度も低いものになってしまうでしょう。
幹部や管理職から戦略の推進状況や課題について伝える場があるかどうか、議事録が共有されているかどうか。また、会社の戦略からあなたに落とし込まれた目標や役割が示され、取り組んでいるかどうかで判断しましょう。
会社の将来性は社外の人にも確認できる
最後に確認してほしいポイントは、理念の実践を通じて顧客や社会に貢献しているといえるかどうかです。
これを確認する方法は、直接聞いてみることです。顧客や仕入れ先、銀行などの関係先、業界で交流のある人、家族や地域の人など、会社の理念に掲げる内容がどのくらいの範囲の人に認知され、本当に貢献できているのかどうかを聞いてみるのです。
もし、顧客にも理念に掲げる自社の価値やこだわりが届いておらず、実感できない、という回答ならば、その会社は見切ってしまった方がよいかもしれません。
特に、このウィズコロナ、アフターコロナの時代、顧客や社会から支持され、世の中で必要とされる企業しか成長できるはずはないのですから。